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カンカゴなんでも屋にご相談を!  作者: 中頭
宇宙人、タカシくん

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14/19

4


「この角を曲がったら、僕が住んでいるアパートです」


 カンマとカゴはタカシに導かれ、アパートへ向かっていた。道中、近所の人々が何人も声をかけてくる。


「あら、タカシくん。お友達と一緒なんて珍しいわね」

「あはは、今から僕の家に来るんです」


 タカシは頭をかきながら笑い、さらりと応える。

 どうやら彼は、このあたりでかなり人望があるらしい。


 「皆さん、すごく優しいんです」と嬉しそうに語るタカシが、指を差した。


「あれが僕が住んでいるアパートです」


 古びているが、どこか味のある佇まいをしたアパートがそこにはあった。建った当初は白かったであろう壁はくすんでおり、階段や手すりには錆が浮いている。


「あら、タカシくん?」


 後ろから声がし、三人は振り返った。そこには腰を曲げた老婦人が杖をついて立っていた。手には買い物袋を下げている。プルプルと震える手を見て、タカシは慌てて荷物を抱えた。


「大家さん、それ僕が運びます」

「あぁ、いつもありがとうね……」


 タカシは大家の背中に手を回し、労りながらアパートへ向かった。カンマとカゴもその手伝いをする。「あらやだ、お姫様になった気分だわ」と、彼女は頬を緩ませた。


「助かったわ、ありがとう」


 無事に家に到着した大家は、タカシたちを見遣り微笑んだ。「どういたしまして」と頭を下げたカンマが、タカシへ耳打ちする。


「────今が、チャンスでは?」

「ッ……」


 タカシは何か言いたげに言葉を詰まらせ、胸元で手のひらをぎゅうと握りしめた。しかし、言葉が出てこないのか、固まったままだ。

 そんな様子を見ていた大家が、思い出したように家の中へ入っていく。しばらくして、ビニール袋いっぱいのみかんを持って戻ってきた。


「これ、いとこから送られてきたのよ。一人じゃ食べきれなくて。お友達と分けて食べてちょうだい」


 朗らかに笑んだ大家に、タカシは静かに頷く。「ありがとうございます」と言ったきり、俯いてしまった。



「なかなか、言い出すのって難しいですね」


 タカシの部屋でみかんを食べながら、カゴが呟いた。タカシは長い指先で丁寧にミカンの白い筋を取りながら「そうですね」と力なく賛同する。


「あ、タカシさん、スジ取る派なんですね」

「僕も取る派。でも、面倒臭いからそのまま食べちゃう派でもある」


 カンマはみかんを丸ごと口に頬張り、咀嚼しながら言った。「お前の場合はもう、次元が違うだろ。俺たちと同じ土俵に立つなよ、こえーよ」とカゴは顔を引き攣らせる。


「……言えるでしょうか、僕」


 タカシは身を縮こませ、消え入りそうな声で呟いた。


「……俺たちの口から、言いましょうか?」

「いえ、それは────ダメです。自分で、言いたいんです」


 タカシはカゴの言葉を遮り、キッパリと言い放つ。だが、その表情はすぐに曇っていく。


「……でも、幻滅されるのが怖い」


 タカシの声が、さらに小さくなる。

 しゅんと肩を落とす彼の背中を、カンマがポンと叩いた。


「大丈夫ですよ。短い間ですが、あなたがいろんな人に好かれていると言うことは、痛いほど分かりました。そんなあなたが本当の姿を表したところで、周りの人は怖がったり拒絶したりしません」


 カンマの言葉に、タカシは表情を明るくした。


「じゃ、このみかんを食べたら、言いにいきましょ」


 カンマが再びみかんを丸ごと頬張る。「それやめてください、怖いです」と悲鳴をあげたタカシを見て「多分、お前が人類で初めて宇宙人をビビらせた男だよ……」とカゴがひとりごちた。

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