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「……すみません、まさか僕みたいな宇宙人が依頼してくるなんて、びっくりしますよね」
「あ、やっぱり宇宙人なんですね!?」
「おい。カンマ、失礼だろ」
「いや、一瞬、目の錯覚かと思ったよ! でも、ガチ宇宙人だった!」
「ガチ宇宙人とかいう初めて聞く単語やめろ」
銀色の皮膚に、大きな頭。細い手足に、吊り上がった目。背の低い彼は、創作物上に登場する────宇宙人そのものだ。
初めて出会うタイプの依頼主に、カンマとカゴは困惑する。
「宇宙人って本当にいるんですね」
「えぇ、います」
「まぁ、目の前にいますしね。いや、すごいですね。頭、ちょっと触っていいですか?」
ワクワクとした気持ちを抑えきれないのか、目を輝かせたカンマが前のめりで宇宙人へ問うた。
「失礼だろ、カンマ」
「いいですよ、どうぞ」
「いいんかい」
カンマが人差し指で宇宙人の頭を突いた。「うわっ、ブニブニしてる!」と興奮気味のカンマを見て、カゴがそわそわし始める。
「え、どんな感じ?」「タコだよ、タコ。」「マジかよ」「カゴも触ってみなよ!」「失礼だろ、俺にはできない」「いいじゃん、こんな機会ないし!」「マジでそれだよな。宇宙人に会う機会とかもう二度とないし」「だから、触りなって!」「えっ、でもさ……」。
二人は宇宙人そっちのけできゃらきゃらと声を上げた。
「……あの、本題に入っていいですか?」
宇宙人の呆れた声にカゴがハッと我に返る。ごほんと咳払いをし、謝罪をした。その頬は染まり、焦ったようにも見える。
「……すみません、取り乱しました」
「大丈夫ですよ。むしろ、異星人を目の前にしてこの取り乱し方で済んでいるあなた方のほうがすごい」
「まぁ、この仕事をやってたら、いろんなものと遭遇するので……」
いまだに宇宙人の頭部を突いてるカンマをカゴが叩いた。「仕事をするぞ」と姿勢を正す。
「どのようなご依頼で?」
「実は、僕はこの地球を侵略しに来たんです」
「ぎゃあ! お前、侵略者かよ! カゴ、包丁持ってきて!」
「落ち着け、カンマ」
「切り刻んでやる、このタコ野郎!」
宇宙人に触れていた手をバッと離したカンマは顔色を悪くし、悲鳴を上げる。カゴはそんな彼の服の裾を引っ張り、首を横に振った。
「カゴ。なにうかうかしてるんだよ! 僕らで、この侵略者を鍋にしよう!」
「宇宙人の鍋とか絶対に不味いだろ、嫌だよ」
「臭みを取るために、下処理はしっかりするから!」
「本人の前で調理法とか話さないでもらえますか……」。困ったように笑う宇宙人に、カンマはまだ威嚇の目を向けている。
そんなカンマの耳元で、カゴがそっと囁いた。
「彼は悪い人じゃない」
「人じゃないよ、地球外生命体だ」
「……彼は悪い地球外生命体じゃない。だから、落ち着け」
「あ、もしかして、いつもの勘ってやつ?」とカンマが首を傾げる。カゴは静かに頷いた。
────いつもの雑音が聞こえないから、大丈夫だろ。
カゴは十歳の誕生日を境に、ある特異体質が身についた。自分の身に危険が迫ると、雑音が聞こえるようになったのだ。
彼にとってこの雑音は、邪魔なものでしかない。だが、この仕事に就いてからというもの、助けられることもしばしばある。
────彼に、敵意は感じない。
カンマは、そんなカゴの判断を信じている。目の前の宇宙人に視線を向け、ようやく警戒を緩めた。




