第八話
放課後、晴とは海辺で待ち合わせをすることにした。父に手紙を出す為に私は一度家に帰り水着に着替える必要があったし、晴には海鳥たちの話は晴のおばあちゃんから聴いて欲しいと事前に聞かされてたので一緒に晴の家に向かうことを決めていたからだ。
海辺に辿り着いた時には晴は既に防波堤に背を預け、ぼんやりと空を見上げていた。夕暮れ時の、橙色の空が頭上には広がっていて、その空を数羽の海鳥たちが円を描くように飛んでいた。
「晴ー!」
呼びかけると、晴は私に気付き手をあげた。二人横並びになって岩礁地帯をあるいていく。あのポストのある辺りで私は足を止め、身に纏っていたワンピースをそさくさと脱ぎ捨てた。晴には何度も水着姿を見られているし、なんの抵抗もなかった。静かに寄せてくる波に足先から入る。ひやりとつめたい水を感じてから、後ろを振り向き「じゃあ行ってくるよ」と笑みを向けた。
「おう。待ってるよ」
晴の声を受け止め、海の中へと潜っていった。腰をくねらせながら足を動かし、深く深く潜っていく。ポストの投函口から吐き出された手紙を手に取り、晴のいる砂浜へと戻った。
『俺はお前たち二人のことは何も心配してないよ。母さんと莉乃なら、二人で力を合わせればきっと幸せになれる。だから母さんのことを宜しく頼むな。あいつは頑固だし、人にあまり弱いところを見せたがらなくて無理をするところがあるからな。そこは莉乃がうまい具合にサポートしてやってくれ』
手紙にはそう書かれていた。
「なんて返事しよう」
晴に問い掛けると、「任せといてって言って親父さんを安心させてやれよ。実際に莉乃は今もそうしようとしてるんだし。あと、俺のことな。元気に馬鹿やってますって書いて」とにっと笑った。私は鏡を映すように笑みを返し、すぐに返事を書き入れた。
『大丈夫だよ。私がお父さんの分までしっかりサポートするからね。だから、安心して。 P.S 晴が今も元気に馬鹿やってますだって』
再び海に潜り、手紙を投函した。晴の家に着いた時には、日が暮れ始めていた。