空のむこう
「行ってきます」
玄関を出て私はまず、空のご機嫌をうかがう。
今日の空は青く澄んで、少し楽しそうだ。
白い尻尾を引きずりながら、飛行機も飛んでいってる。
もしかしてこの空をいま、見上げていたりしないかな。
この空の下で、犬に挨拶していたりしないかな。
坂を下りるとそこにはもう、いつもの毎日の始まりだ。
「おはよう」「おはよう」「おはよう」
空が青いか灰色かなんて、それどころではなくなってしまう。
けれど一瞬見上げると、私は思い出す。
空の向こうにほのかに残る月を。
月は思いと共に満ち欠けを繰り返しながら少しずつ離れていっているけれど、
私が生きている間に消えることはないだろう。




