４ 下界へ向かう王女
ーアイルがスホルトを発つ二日前ー
砦の城壁には、晩夏にも関わらず粉雪が薄く降り積もっていた。
ウルゴーン山脈の急峻な谷間に隠されて、その砦は立っていた。しかし、ひとたび山腹に顔を出せば、ローラントを悠々と流れる大河ラインベルクの豊穣な流れを眼下に眺めることが出来た。
その砦には名前はなかった。砦が守る王国にも名前はなかった。
この砦には、およそ千年前からエルフの集団が住み着いていた。エルフ達は、遥か昔に起きた戦争により東にあった故郷を追われ、この地に移り住んできたのだ。
エルフ達はまず、外界との接触を絶った。彼らは街にも砦にも名前をつけなかった。それは呪いまじないに似た効果を発揮し、地上における彼らの存在をますます希薄なものにした。
エルフ達は階級の低いエルフの子供を選んで、下界との連絡役とし、山裾に住まわせた。エルフたちは、連絡役に対しても、城のありかを教えなかった。そしてこの連絡係を通じてのみ、外界と接触した。
この方法でエルフたちはその住処を完全に秘匿した。こうして彼らは千年もの間戦乱を避けた。
しかし、今、エルフ達が城門の前に集まって目の前に見ているものは、その千年の秘匿が暴かれたことを示していた。
甲冑を貫かれた血まみれの兵士が、城門に倒れていた。彼から流れ出た赤い血が、薄く積もった雪をシャーベットのように赤く染めていた。
兵の名はトーンと言った。彼は、僅か三日前に成人したばかりの若いエルフの兵士だった。
彼のうつろなグレーの瞳は微動だにせず地面を見つめていた。
年嵩のエルフが彼の瞼に手を当て、その目を閉じてやった。
雪には二対の足跡が残っていた。
一つは人間の足跡だった。
もう一つは、人間の物ではない、巨大な魔物の足跡だった。足跡は山脈の方角からやってきていた。
魔物はトーンをここで殺した後、山に帰っていったのだろう。
エルフたちが足跡を検分していると、王が城門から出て来てこれに加わった。
【王】「とうとうこの場所も、良からぬものに見つかってしまったのか……」
【アベル】「どういたしましょう」
エルフの兵士が訊いた。
【王】「まずこの足跡を追い攻撃者を見つける。アベル、貴様が偵察にでろ。残りのものは、戦の準備にかかるのだ」
【老エルフ】「戦の準備、ですか……」
エルフ達が、驚いて言った。
【王】「左様だ」
【老エルフ】「少々気が早いのでは」
【王】「急げ」
王は一言そう言い、城に引き返した。
ーー
アベルは馬にまたがり出立した。雪が太陽の熱で消え去る前に、急いで足跡を追わねばならない。彼は先を急いだ。
足跡は２つの峠の間にある、谷の方角へ続いていた。
やがて彼は、谷の入り口に立っている大岩にたどり着いた。その岩は、とぐろを巻いた蛇のように奇怪なねじくれ方をしているので、蛇岩と呼ばれていた。その岩の下で、それまで一つしかなかった足跡が、他の二つの足跡に合流していた。
三つに合流した足跡は、谷の隘路へと消えていった。
アベルは馬を降りた。そして足跡を追い、谷間の隘路へ入った。
隘路はしんとして暗く、湿っていた。谷は深く、常に日が陰っているため、地面にはまだたくさんの雪が残っていた。アベルが歩くと、霜を踏む足音が鳴り、それが崖に挟まれた細い道に反響した。
彼は歩を進めた。
隘路の入り口は道幅が狭かったが、先へ進むに連れてその幅は広がっていった。やがて、天辺からは日が差し込むほど道は広くなり、辺りは明るくなった。
彼が空を見ると、道の向こうから細い煙が空に立ち上っているのが見えた。彼は忍び足で歩を進め、岩陰から煙の火元を覗き込んだ。
隘路の先は、大きく開けた空間になっていた。その空間には、三百を超えるオーク達が潜んでいた。
彼らは車座になり火を囲って座っていた。その床にはいくつものテントが張られ、大量の荷車の上にはたくさんの糧秣や火砲が積まれていた。
アベルは敵の戦力をつぶさに検分した後、急ぎ足で砦へと戻った。
彼が道を帰る途中、再び雪が降り出した。アベルは、その雪の上に自らの足跡をはっきりと残してしまった。
斥候としてはありえないほどの失態だ。これでは侵入者がいると自ら喧伝して回っているようなものだ。千年の平和のうちに、エルフ達の間では基礎的な戦闘教養さえ失われていた。彼は雪が積もり、彼の足跡を消してくれることを願った。
アベルは砦に戻ると、王に事態を報告した。
【王】「事態はよくわかった。アリアをここに呼べ」
王は言った。
しばらく後、兵に連れられて、アリアと呼ばれた娘と、彼女の護衛の若い娘がやってきた。
アリアは橙色の長い髪を垂らした美しいエルフだった。彼女は王とは年の離れた娘であった。護衛の娘は、アリアの幼なじみだった。二人はエルフとしては珍しく、年が離れていなかった。王は護衛の娘に向かって話しかけた。
【王】「テオよ。よく聞け。貴様はアリアを連れて今すぐにこの砦から脱出するのだ。まず第一に、ここからラインベルクまで山を降り、スホルトへ向かえ。そこでは我が兄弟子が村長を務めているがゆえ、快く歓待されるだろう。もしスホルトへ行けぬようならば、川を上りブリスコーへ向かうのだ。」
【アリア】「お父様はどうなさるのですか？」
【王】「儂はここに残り戦う。さあ、はやく出発するのだ！」
二人はすぐに馬小屋へ向かった。
アリアは弓を肩に掛け、馬にまたがった。彼女が馬の首を優しく撫でると、馬は喜んで首を振った。準備が整うと、二人は城門から出て馬を走らせた。
ーー
アリア達は山を駆けた。雪に覆われた高原の台地は、晩夏の太陽の熱放射を浴びて、ぬかるんだ茶色い土へ変わっていた。
馬の蹄は柔らかい土を高く蹴り上げた。そして深い蹄の跡を残した。
この様子では、敵は容易に彼女たちを追跡できるだろう。二人は道を急いだ。
道行く途中で、アリアが来た道を振り返ると、言った。
【アリア】「ねえ、城が燃えてるわ……」
テオがその言葉を聞き振り返ると、王城から立ち上る煙が空の先に見えた
その灰色の煙は、青い空を背景にして、まっすぐと天高く昇っていた。
【アリア】「お父さん……」
【テオ】「……先を急ぎましょう」
テオは促した。アリアは頷き、再び馬を駆けた。
彼女たちは道を進み、氷河谷へたどり着いた。氷河谷は、その左岸から右岸まで、夏の日差しに溶解したクレバスだらけの氷河に埋まっていた。
この氷河谷以外の他は、急峻な斜面になっており、馬では昇ることも降りることも出来なかった。砦へ向かうには、必ずこの氷河を渡る必要があった。本来砦はこの氷河を防衛地点として建設されたはずであった。
彼女たちは馬から降り、雪の斜面を馬を引いて進んだ。氷河の両岸には、その浸食によって砕かれた大きなモレーンが散らばり、茶色いシミのように純白の氷河を汚していた。
彼女たちは氷河の上流を進んだ。氷河の上流域はあまり融解が始まっておらず、表面もなめらかなため苦もなしに渡ることが出来た。
彼女たちは、やがて凹凸の激しい氷河の中流域に差し掛かった。
この中流域には夏場になると必ず大量のクレバスが口を開けた。この裂け目の形は毎年変化し、ところどころ雪で上部が覆い隠され危険であった。
二人は慎重に歩を進めた。そして幅二十フィートはある巨大なクレバスに突き当たった。このクレバスは、およそ五年前から存在していた。彼女たちは、記憶を頼りに氷河の右岸まで渡ったが、 氷河の裂け目は崖の際まで広がっていた。彼女たちは引き換えし、今度は左岸の際まで歩いた。そしてようやく馬一頭が通れる崖下の細い道を見出した。
二人は慎重にその細い道を渡った。気づけば太陽は正中しており、彼女たちは氷河の照り返しを受けて熱さを感じた。アリアの額に玉の汗が浮き出た。
アリアは、なんとなく後ろを振りむいた。
すると、氷河の上流に、すでにたくさんの魔物たちがやって来ていた。
あれは、雪男だ。その体長は１５フィートはくだらない。白い毛に覆われたもっさりした体躯の下には、魔物にしか持ち得ない異常に発達した筋肉があった。
雪男は雪原に残されたアリアたちの足跡たどり、最短経路で氷河を下るだろう。彼らの巨大な体躯ならば、細いクレバスなどはいくつも飛び越えてしまうに違いない。
二人は先を急いだ。
アリアは、段々と焦り出した。彼女の歩幅は段々と早くなり、気づけばテオよりだいぶ前を進んでいた。
【テオ】「アリア、急がないで！」テオは上から声をかけた。「わたしより先に進まないでください！」
その時、アリアの手綱に急かされて、馬が足を滑らせた。
それは何度か踏ん張りを効かせようと足をバタつかせた後、ついにバランスを崩して雪原の上に横倒しになった。馬は最初はゆっくりと、そしてだんだんと早く、雪の斜面を滑り出した。茶色い栗毛の滑らかな肌は氷雪の上を抵抗なく滑り、馬は為す術もなく下降していった。
アリアは足を踏ん張り、手綱を引っ張って馬を止めようとした。しかし、馬の体重はアリアと比べてあまりにも大きかった。アリアの足は雪の表面をわずかに削るだけで、なすすべはなかった。
【アリア】「テオ、助けて！」
アリアは叫んだ。
アリアの目の前に、クレバスの裂け目が目の前に迫ってきた。アリア手はもう一度全力で足を踏ん張ったが、もはや馬を止める術はなかった。
【テオ】「アリア、手綱を放しなさい！」
テオは叫んだ。しかしアリアは、手綱を手放せなかった。
馬とアリアとは、共にクレバスの裂け目に落下した。
馬は、裂け目を二十フィート落下し、氷と氷の間につっかえte止まった。アリアは馬の上から一緒に落下したあと、落下を止めた馬の上に激突した。そして、クレバスの裂け目を、馬よりさらに二十フィート深くまで落下していった。
アリアは、幅の狭いクレバスの下層の隙間に挟まり、ようやく落下を止めた。彼女のすぐ下から、氷河の最下層を流れる水の音が聞こえてきた。冷気が崖の下から這い上がってきた。
馬が、彼女の頭上で暴れた。冷たい氷の破片が上から降ってきて、アリアの全身に被った。そのうちのいくつかの欠片が、アリアの襟元から体のなかに入り、彼女は冷たさに思わず身をすくませた。
彼女はパニックに陥った。
【アリア】「テオ！助けて！助けて！」
彼女は叫びだした。およそ三十秒間、彼女は泣きながら叫び続けた。
【テオ】 「落ち着いてください！」
アリアが目を開くと、テオがいつの間にかアリアの隣りにいた。テオはどうやってか、クレバスの上から縄を垂らし、それを伝い降りてきたのだ。彼女はアリアの肩を抱き、目を真っ直ぐ覗き込んで言った。
【テオ】 「落ち着いた？」
テオが優しい声音で聞いた。アリアは、ようやくパニックから醒め、こくりとうなずいた。
【テオ】「今からこの縄を伝って上まで上ります。できますか？」
テオが聞いた。アリアはもう一度うなずいた。
テオがアリアの体を引っ張り上げると、彼女の体は氷の隙間からはずれた。
アリアは縄を掴み、一歩ずつ崖の上を登っていった。
やがて彼女は穴から這い出た。縄は、氷河に打ち込まれた一本の剣に結び付けられていた。テオが剣を氷河に打ち込み、その柄に縄を結んだのだ。
アリアは振り返り、テオがクレバスから這い出るのを手伝った。テオがクレバスを上り切ると、彼女はあらためてクレバスを覗き込んだ。彼女の愛馬は、先ほどよりもさらに深く溝にはまりこんでいた。馬は無為にも脚を動かし続けていた。
【アリア】「スレイ！」
アリアは馬の名を叫んだ
【アリア】「助けないと」
【テオ】「もう助けることはできません。先を急がないと」
【アリア】「そんな……！」
彼女は再び泣き出した。そして肩を震わせて言った。
【アリア】「ごめんなさい、私のせいで……」
テオは一瞬、優しい言葉をかけようとしたが、すぐに口を一文字に結んで厳しい言葉をかけた。
【テオ】「そのとおり、あなたが慎重さを失った結果です。これからは、決して私より先行しないでください。さあ、先へ進みましょう」
二人は、再び氷河を降り始めた。
やがて彼女たちは、小石の降り積もった氷河の最下流に差し掛かった。ここにはもはやクレバスはなく、また地面も平坦なので、彼女たちは歩みを早めた。
そのうちに氷河は終わった。二人は一つの馬に乗り、再び道を駆けた。
ーー
こうして二人は高原を駆けた。晩夏の山嶺には美しい花が一面に咲き誇っていた。彼女たちは草地を抜け、峠を駆けた。
二人は、また別の氷河に出た。彼女たちは、再び馬を降り、歩き出した。
低地では雨が降っていたのだろうか、この氷河の表面には、プールのような大きな水たまりがたくさんできていた。それらを何度も迂回するたび、山裾は遠くなった。
二人の歩みは遅々として進まなかった。やがて辺りは暗くなった。
そして幾度目かの進路変更のあと、彼女たちは再び大きなクレバスに行く手を阻まれた。その裂け目の幅は３０フィートはあった。人間だけならば渡る手段はなくはなかったが、そうするためには馬を捨てなければならない。来た道を戻り、このクレバスを迂回するには、ゆうに二時間を超える時を無駄にすることになるだろう。
【テオ】「このままでは追いつかれます。馬を囮に使いましょう」
【アリア】「だめよ！」
アリアは懇願した。しかし、テオは反論した。
【テオ】「ではどうするのですか？」
【アリア】「……わからない……」
【テオ】「非情になりなさい。もう一刻の猶予も有りません」
テオは剣を抜き、馬の腹に傷を入れた。
その馬の名はフロロと言った。フロロは、痛みに悲しくうめいた。そして、潤んだ目で彼女達を見つめ返した。
それは、なぜこんなことをするのかと問いかける目だった。
【アリア】「ごめんね、ごめんね」
アリア泣きながら馬の首を撫で、何度も何度もそう言った。
二人馬から離れ、クレバスの淵に立つと、意を決して飛び降りた。
かなりの空中落下のあと、二人はクレバスの底に衝突した。が、裂け目の底には残雪があり、ふたりとも怪我はなかった。
【テオ】「｜雪の精よ、我らを氷の家で守っておくれ《Oüm el türe äriannda》……」
テオは呪文を唱えた。すると、彼女を中心にドーム状の氷が形成された。それは二人を覆い、頭上から二人の姿を覆い隠した。
しかしクレバスの底は、あまりにも冷えた。二人は互いに身を寄せ合い、温めあった。
しばらく時間が経過した。やがて彼女たちの頭上から、馬のいななきが響いてきた。
おそらくそこには、スノウマンがいるのだろう。フロロは恐怖に猛り狂い、悲鳴を上げ暴れ回っていた。
そのうちに、石斧が振り下ろされる衝撃音が聞こえてきた。小麦の袋を床に落としたときのようなグロテスクな衝撃音が響いた。石斧は、何度も何度も振り下ろされた。
やがて頭上は静かになった。
そのうちに、頭上から、湿ったぴちゃぴちゃという音が聞こえてきた。それは雪男が、馬を素手で引き裂き内蔵を咀嚼する音だった。
アリアは泣いていた。テオはアリアの肩に手をかけて、時が過ぎるのをひたすら待った。
二人はクレバスに隠れ一晩を過ごした。氷点下を下回る凍てつく洞穴の中で、テオたちは凍死をしないように何度も目を覚まさなければならなかった。
やがて朝になり、光がクレバスの中まで明るく照らした。
テオは頭上に耳を澄ませたが、何の音も聞こえなかった。
テオがクレバスから顔を出すと、そこには既にオーガたちの姿はなかった。雪の上には、血に染まった鞍と鐙が捨ててあるだけだった。
地面に残されたスノウマンの巨大な足跡は、反転して山上へと引き返していた。
二人は山裾の方向に向き直った。
そこから飛び込んできた景色に、二人は目を疑った。
山の斜面からは、悠々と流れる青いラインベルクがはっきりと見えた。それは、悠久の時の流れに変わらぬまま、残雪の雪解け水を集め、海へと注いでいた。
その河口にある首都ローゼンハイムでは、異常な事態が進行していた。
街が炎に包まれ、煙が上がっていたのだ。そして、ココッからは米粒ほどの大きさにしか見えないが、何隻もの帆船がローゼンハイムの沖に浮かんでいるのが見えた。
二人は先を急いだ。
ーー
テオたちは氷河を通過し、そこから流れ出る小川に沿って山裾を駆けた。
やがて氷河から流れ出る冷たい灌流は、谷間のいくつもの細い流れと合流し、太く暖かい小川となっていった。
テオたちは渓流の岩棚を軽やかに駆けた。
さすがにエルフなだけあって、普段野外に出ることなどしない王女といっても、森を駆けるのはお手の物だった。二人は川面に突き出た岩と岩の間を軽々と飛び越えた。
こうして彼女たちが川を下っていくと、やがて行く手の先に小屋が見えた
小屋は丸太づくりのロッジだった。その表面は、夏場の湿気に蒸された苔が屋根まで全面覆っていた。その湿気った藁葺きの屋根からは白いキノコがぽつりぽつりと生えていた。
彼女たちが家に近づくと、男が家の陰から現れた。
彼は長い金髪に切れ長の目をした男だった。
【テオ】「アベルね？」
テオは男に声をかけた。男は頭を下げた。
【テオ】「紹介するわ。こちらはアリア様よ」
【アベル】「お初にお目にかかります。アベルと申します」
彼は再び頭を下げた。
【アベル】 「魔物はすでにローゼンハイムに侵入したようです。お急ぎを」
三人はアベルの案内ですぐに出発した。三人は川に沿って進んだ。そのうちに陽は落ち、辺りは暗くなっていった。
やがて三人は小川の河口にたどり着いた。その流れは、幾万の水の流れを束ねるラインベルクの支流の一つとして、その大河に吸い込まれていった。
河口には巨大な帆船が停留していた。その横舷には黒く輝く鉄の火砲が並んでいた。帆船の大きな帆が月の光を受けて白
く輝き、闇の川面に灯火が輝いていた。船尾には一対の龍の羽が、マストに据え付けられ広がっていた。
【テオ】「あの船は、味方の船かしら」
テオが訊いた。
【アベル】「おそらく違うかと。舷側が黒く塗られているので、おそらくザクセンの船かと思われます」
【アリア】「ザクセンの船がここまで……じゃあ、ローラントは戦に負けているのかしら。」
【アベル】「私にはわかりかねます。まずは、今夜隠れる場所を見つけましょう。」
テオ達はアベルの案内で森のなかに入った。森をしばらく進むと、そこに小さな狩猟小屋を見つけた。
【アベル】「これは人間の猟師の小屋ですが、とりあえず借りることにしましょう」
アベルはそういい、扉の錠を剣の柄で叩き壊した。
三人は扉を締め、そのまま横になり眠った。
アベルは最初から
裂け目を、馬で飛び越える
