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第四十四話 情報収集

■レオ視点■


 アメリアに大変なことをさせてしまった日の夜、俺は星空の下を、とある場所を目指して走っていた。


 行き先は……アメリアが住んでいた、スフォルツィ家の屋敷だ。


 俺の作戦がうまくいっていれば、今日はシャーロットが、ストレスで誰かに今回の件を話すに違いない。そこの光景と音声を手に入れるつもりだ。


 それを得るために、俺は隠密行動をして屋敷に近づいているというわけだ。


「お、見えてきたな。この魔法を使うと速いのはいいけど、疲れるのが厄介だな」


 もしこれをアメリアに見られてたら、喋ってないで手を動かせと注意されてそうだ。実際にその通りだしね。


「よし、やるか」


 俺は屋敷の敷地内に入ると、透明化の魔法を使って見えなくした後、やっと習得した偵察魔法で作った虫を、屋敷の中に飛ばした。


 本当は、敷地の外からの方が安全だが、生憎俺の魔法はまだ不完全で、距離が離れると機能しないんだ。今でも、かなりギリギリを攻めてるのさ。


「この魔法陣から、虫が見た光景と音が……おっ」


 さっそくお目当ての光景を見つけた俺は、魔法陣に釘付けになる。


 ふむ、どうやら家族団欒で話をしているところのようだな。初めて見るけど、この人がアメリアの母上で、こっちが父上だろうか。顔はどっちとも似てないけど、髪色は父親似……って、今はそんなのどうでもいいか。


『お父様、お母様、聞いてよ! あたし、今日学園で凄く嫌な目にあったの!』

『まあ、私の可愛いシャーロット、一体どうしたというの?』

『お姉様がね、男性とお付き合いを始めたのよ! しかも、あたしの友達がその人に想いを寄せてるのに、それを踏みにじったのよ!』

『なんて最低な子なのかしら! 出来損ないの癖に、人様に迷惑をかけて……出て行ってまで、スフォルツィ家の名に傷をつけるつもりなのかしら!』


 ……なるほどね。アメリアの話からなんとなくこんな感じかなと想像はしていたけど、実際に聞くと中々に凄いな。


「最低すぎて反吐が出そうだ……っと、ちゃんと情報を集めないと」


 今にも怒りに身を任せて、中に殴り込みに行きそうになったけど、なんとか耐えて情報収集に勤しむ。


 こんなことを、あと何回しなければいけないんだろうな。いつか我慢できなくて突撃してしまいそうだけど、何とか耐えないといけない。


 ……このストレスは、アメリアと一緒に過ごして解消するとしよう。



 ****



 初めてスフォルツィ家に侵入して情報収集を行った俺は、その次の日もスフォルツィ家に侵入して話を聞きだしたり、フローラの家であるノビアーチェ家に侵入して、同じ様に情報を集めた。


 それ以外にも、アドミラル学園でアメリアに絡むシャーロット達を記録したり、それを見てみぬふりをする教師達も記録したり、朝早くに登校して魔法を仕込み、アメリアの席に悪さをする所の記録も取った。


 これが思った以上に大変だった。学園にいる時は、見つからないように情報収集をしつつ、適度なタイミングでアメリアの助けに入るのが、思った以上に難しい。朝も早ければ、夜はかなり遅くまで情報収集をしなければならない。


 それに、保存の薬を持ち歩けないから、情報を手に入れたら、虫が消える前に逐一シャフト先生の所に行き、薬を使って保存をしないといけない。


 そのせいで、俺はかなりの寝不足になってしまったが、これもアメリアをいじめた連中へ、そしてそれを見て見ぬふりをした連中への復讐のためと思うと、何とか耐えられた。


「ふぅ、これは思ったよりも大変だな」


 記録を取り始めてから数週間後、俺はシャフト先生の所に来て、例の薬を使っていた。


 保存をするのも大変だが、偵察魔法で得た景色や音を、記録として一部を抽出するのも、思ったよりも大変だ。なにせ、合計で何時間もある記録から選ばないといけないんだからね。


 本当は、これを使う時にそのまま使えば、こんなことをしなくてもいいんだけど、さすがに何時間もあるのは使いにくい。


「よくそんな面倒なことをやるもんだな」

「ええ。それくらい、怒りで腸が煮えくり返ってるので。ところで、この記録を複製するのって可能ですか?」

「出来なくはねえが、薬を複数作らないとならねえな」

「……シャフト先生」

「断る」

「まだ何も言ってませんが!?」

「いや、今のは完全にもっと作れって、クソだるいこと言う流れだったろ……」


 くっ……完全に読まれている! さすがシャフト先生……いや、さすがに今のはわかりやすすぎだったか……?


「まあ、そう言うだろうと思って、既に何セットかは作っておいたが」

「仕事が早い!?」

「あたりめーだろ。ワシは天才だぞ」

「ありがとうございます! って……その手は何ですか?」


 ありがたく薬を分けてもらおうかと思っていると、シャフト先生は薬ではなく、俺に手を差し出していた。


「タダなわけねえだろ。ワシに見返りを寄こせ」

「……お金ですか?」

「いるかそんなもの。最近研究続きで手が凝っててな。お前の無駄にありそうな力でほぐしてくれや」

「そ、そんなことで良いんですか?」

「そんなことだと? これだから青二才は。研究をしていると、結構手が凝るものだぞ。それに、マッサージを自分でしていたら、両手が使えなくて研究が出来んだろうが」


 シャフト先生なりの気遣いなのか、それとも本当に実験のためなのか。いまいち判断に困るが、これでシャフト先生が満足するなら、お安い御用だ。


「せっかくですし、全身をマッサージしましょうか?」

「……おい青二才、人の話を聞いていたか?」

「冗談ですよ」


 この学園に転校してきてから、それなりに時間が経ったおかげで、シャフト先生にこんな冗談を言えるような関係になれた。


 教師を相手に冗談を言うのはおかしいかもしれないけど、シャフト先生はなんというか……良い意味で教師という感じがしないんだよね。


「そういえば、シャフト先生の弟さんって、今は何をしてるんですか?」

「さあな。もう何十年も互いに忙しくて、連絡を取っていない。風の噂で聞いた話だと、結婚して婿入りしたのはいいものの、研究者だけでは食っていけなくて、家庭教師をしてるとは聞いた。その話も相当昔の話だから、今は何をしているのやら」


 連絡を取ってないのは、ちょっと予想外だったな。未だに亡くなった妹のことを気にしてるくらいだから、家族のことは人一倍気にしてると思ってた。


「連絡を取りたいとは思わないんですか?」

「ワシは研究で忙しい。それに、便りが無いということは、向こうも元気にしているということだ。向こうだって大人なんだから、変に干渉する必要もなかろう」


 淡々と話すその姿勢は、聞く人によっては薄情に聞こえるだろう。妹のことを今も忘れられないのに、弟は放っておくのかと言う人もいるだろう。


 でも俺には、シャフト先生が彼を信じているからこそ、何もせずに研究に没頭しているんじゃないかと思うんだ。


「いつか、その人に会ってみたいですね」

「会っても良いことはないぞ。ただのクソ真面目でつまらん男だからな」

「でも、大切な家族なんでしょう?」

「あ? んなわけあるか」

「いやいや、さすがにあの過去の話を聞いてからそれは、無理がありますよ」

「……ふんっ」


 やっぱりこの人は、ただ不器用なだけで、本質はとても優しい人だ。きっと心の中では、心配しているんだろう。


 せっかくこんな素晴らしい人が味方になってくれているんだから、絶対にこの作戦を成功させてみせる。


「おい、お前どうするつもりだ」

「何がですか?」

「色々準備をするのはいいが、どうやって連中を呼び出すつもりだ?」

「それについては考えがあります」


 シャフト先生が気にするのもわかる。せっかく準備しても、肝心な部分が疎かでは、全てが無意味になってしまうからね。


 でも、その辺りについてはしっかりと作戦は練っている。必ずあいつらに復讐をするために、最初から最後まで、ぬかりなくやらないと……!

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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