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第十話 証明終了!

「お、降ろしてください!」


 シャーロット達から離れられたのは良かったけど、さすがにお姫様抱っこをされるのは恥ずかしすぎる。まだ周りに人がいないうちに、早く降ろしてもらわないと。


「どうして? 俺のアメリアだって他の人にもわからせられるじゃないか。そうしないと、さっきみたいな連中に絡まれてしまう」

「そうかもしれませんけど、恥ずかしいです!」

「……アメリアがそこまで言うなら」


 レオ様はやや不満げではあったけれど、教室のある本校舎に着く前に、ゆっくりと私を降ろしてくれた。


 いくら恥ずかしかったとはいえ、さすがに強く言いすぎたかしら……?


「そうだ、どこかケがをしてたりしないかい? あいつらに何か酷いことをされたとかは?」

「特にありませんから、大丈夫です」


 今回に関しては本当に大丈夫だけど、前にもこうやって連れ出されて、難癖をつけられて酷いことをされた経験は、何度もある。


 でも、それをわざわざレオ様に言って心配をかける必要はないだろう。


「それならよかった!」

「助けに来てくれてありがとうございました。でも……どうしてあそこにいるとわかったのですか?」

「教室に行ったら、アメリアがまだ来てなかったことに気が付いてね。いつも俺より早いのにおかしいと思ってクラスメイトに聞いたら、教室に着く前に彼女達に連れていかれたと聞いてね」


 なるほど、確かに私はいつもレオ様より先に来ている。それが気になったということね。


 ……ちょっと待って? 仮に私が連れていかれたとわかっても、私がここにいたのがわかったのって、ちょっと不自然じゃ?


「それで、探そうと思ったんだけど、生憎俺はこの学園の地理にはまだ疎い。だから、ここ数日の間で知った、人気のない場所を総当たりしたってわけさ」

「では、偶然の産物だったと?」

「そうだね。とはいっても、俺の足なら余裕で間に合ってたと思うよ」


 レオ様は自信たっぷりに言うと、私の前から一瞬で消えてみせた。


「え、レオ様?」

「ここだよ、ここ」

「ふにゅ」


 後ろから声が聞こえてきたから振り返ると、私の頬レオ様の人差し指が、むにゅんと押し込まれた。


「俺の数少ない得意な魔法だよ。足を速くするだけなんだけどね!」

「そ、そうらんれふね」


 レオ様の指のせいで、上手く喋れなくて間抜けな声が出てしまった。周りに人がいなくて、本当に良かった。


「ははっ、いつも真面目な顔をしているから、たまにはそういう顔をするのもいいんじゃないかな?」

「からかっているんですか?」

「いや、力を抜いてあげようと思ってね」

「はあ……それはご親切に。どうもありがとうございます」


 レオ様の考えてることって、たまによくわからない時があるわね。別に悪気があるわけじゃないのはわかってるけど、ちょっと戸惑ってしまう。


「それよりも、アメリアはどうして彼女達に連れていかれたんだ? それに、随分と酷いことを言われていたけど」

「連れていかれた理由は、妹とフローラ様が、私とレオ様が仲良くしているのが気に入らなかったみたいです」

「……? よくわからないな。誰と仲良くしようと、俺の勝手だろう」


 レオ様の言うことはもっともだ。でも、そんな考え方が通じるような相手じゃないのよね。


「それと妹のことですけど……ちょっと色々あって、一方的に嫌われているんです。だから、妹の言うことは気にしないでください」

「あれは嫌っているというのだろうか? 完全に見下しているように感じたけど……」

「さあ、その辺りはわからないです」


 本当はわかっているけど、私達姉妹のことでレオ様を巻き込む必要は無いだろう。


 せっかく私のような人間のことを心配してくれて、心苦しいけど……レオ様のためを思うなら、適当に誤魔化しておくのが一番よね。


「本当は話を聞いて、君の力になりたいんだ。でも、無理に聞いて君の負担になりたくない。だから、聞かないでおくよ」

「……申し訳ございません」

「謝らないで。俺は君の友達だからね。困った時はすぐに頼ってくれ。さあ、早く教室に行かないと遅刻しちゃうよ!」


 暗い雰囲気の私とは対照的に、レオ様は明るい表情で私の手を掴むと、そのまま教室に向かって走り出した。


 さっきのお姫様抱っこに比べればまだいいけど、それでも手を取ったまま教室に行くなんて、恥ずかしすぎて頭が沸騰しそうだ。


「レオ様は、やっぱり優しいですね」

「この前も言ってたね。そんなに優しいのかな? 自分だとよくわからないなぁ……あははっ!」


 もう、お気楽なんだから……でも、そういうお気楽な方が良い時って多いわよね。私も頭空っぽになれてたら、人生は全く別の形になったでしょうね。


「そういうアメリアも優しいじゃないか」

「私が? ご冗談を」

「家のためにずっと勉強をして、妹に罵声を浴びせられても寛大な心で聞き流し、俺の変な絡みにも優しく対応してくれる。結論、アメリアは優しい! はい証明終了! って、どこにいくんだい?」

「教室です。早く行きますよ」


 レオ様には申し訳ないですけど、あのテンションについていくのはさすがに体力が持たない。授業の後なら疲れてもいいけど、さすがに今は勘弁してほしい。そう思った私は、急いで教室へと向かった。


ここまで読んでいただきありがとうございました。


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