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人工授精妊娠出産が倫理的に正しい世界

作者: ぶんかなっとう

 明日に子供が生まれる。

 卵子と精子を採取されて300日で私たちの元に届けられる。

 受け取りは依頼をした病院で先ほど連絡がメールで届いた。

 都合が悪ければ延期も可能だが予定は入れていないので定刻で大丈夫だと返信をしておいた。

 10年ほど前から我が国では人口受精妊娠というべきかカプセル型の容器内で生命を生育をするようになった。

 それ以前から家畜や希少動物の繁殖では実用化されていたが、人間にも適用されている。

 メリットは妊娠を体外でするので身軽な生活や健康面で普段と変わらない生活が送れるということ。

 胎児の健康観察や遺伝病の有無なども容易になる。

 つまり母子ともに安全ということ。

 費用は従来の妊娠出産より何倍も高額だが保険で安く済んでいる。

 国としては妊婦の労働力を失うことがないので推進しているくらいだ。

 もちろん育児は親の務めだが、不妊の人のためにすみやかな養子縁組もできる。

 養子とはなるが戸籍上は実子になるし、提供カップルの容姿を参考に自分らと似たような子供を予約できる。

 このシステムが通常化してから社会的変化が現れた。

 生物としての生殖活動、つまり交尾というかセックスが倫理的でない卑しいことだとされる空気。

 生身の男女が性行為をすることは犯罪に匹敵するという。

 未婚や未成年ならわかるが、結婚後の夫婦なのにだ。

 もちろん法的には何ら問題も無いし、処罰される条例はどこにもない。

 おもに裕福な都市生活者の間では当たり前の考えになってきた。

 地方に住む昔ながらの生活や自然志向の人々は普通に妊娠出産子育てをしている。

 つまりある種の差別のようなヒエラルキーが形成された。

 この人口出産システムは同姓婚カップルや逆転カップルには追い風となり、以前とは比べようがないほど家庭を持っているようだ。

 逆に秘密に妊娠し出産遺棄する事案も目立ってきた。

 都会ではタブー視されているので、不倫などで妊娠した場合は中絶を選択しなければならないが、その際に相手の男が処罰されるという法がある。

 不倫とレイプで望まない妊娠は全て男性が逮捕起訴される。

 レイプでもDNA鑑定で速やかに特定できるので逃げられない。

 判例は懲役10年が相場のようだ。暴力レイプは無期で一生出て来られない。

 だから男が相手の妊娠を知ると秘密裏に処分しようとする。

 遺児が発見されれば鑑定ですぐに特定できることを知らないのだろうか

 おかげで最近ではそのたぐいの犯罪は減ってきているが、誰にも話せない女性は秘密裏に出産をしてしまう。

 彼女らのほとんどが地方に逃れているようなので、自治体の福祉政策は充実してきている。

 彼女らは都会で優秀な労働者として生活をしていたスキルを持っているので、むしろ地方からすれば歓迎される存在となっているのも理由の一つだが、人口減少にも歯止めがかかっている。

 今後科学が発展して、女性が生理直前に卵子を簡易に採取できるようになり生理痛も無くなるのでは。

 採取された成熟な卵子はあらゆる方面で利用されることになるだろうが、その頃には今とは異なる人間社会になって想像もできない倫理観が生まれていることだろう。

 もしかして人間の命の価値は他の何よりも低くなっているかもしれない。

 





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