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復讐の狂鬼  作者: 赤岩実
雨の中で消えた幸せ
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 部屋に戻った雄治は、恭子と一緒に写っている写真と、部屋に遊びに来て料理をするのに使ったまま残されていたエプロンを見て、再び涙が溢れてきた。

 テレビを点けると、ワイドショー番組では恭子の顔こそ映してはいないが、暴力団同士の抗争で一般人女性が巻き添えに!という見出しで、コメンテーターがコメントしている。

「何を言っても恭子は帰ってこない。こうしてテレビで取り上げられていること自体、なんだかムカつくな・・・」

 何も出来ないでいる自分に苛立ち、ぶつぶつと独り言を言って八つ当たりする。

 冷蔵庫から缶コーヒーを取り出して一気に飲み干してバッグの中から携帯を取り出した。

 着信を知らせるランプが点灯していて数件の着信があり、留守電メッセージも入っている。

「斉藤くん、早川だ。しばらく自宅でゆっくり休んでくれ、仕事のことは心配しなくて良いからな」

 同じ部で仕事をしている恭子の同期の川上や、雄治の同期たちからもメッセージが入っていたが、とりあえず涙を拭って会社に電話を入れると、課長の大山が出た。

「斉藤くん、話は聞いた。仕事の事など気にしなくて良いから、とにかくゆっくり休め」

「ありがとうございます。まだ事情聴取も終わっていないので、しばらく休ませてください」

「わかった。君も怪我をしたそうだな、しっかり治して、また必ず出てこいよ」

「はい」

 雄治は力なく返事をして電話を切ると、仕事仲間たちにメールを送って横になった。

 部屋に戻ってきて落ち着いたという訳ではないが、疲れが出たのか睡魔に襲われ、テレビを点けたまま眠ってしまった。

 夜遅くになって目を覚ますと、点けたままのテレビからはニュースが流れていて、今度は恭子の笑顔が映し出された。

「なんでこの写真が・・・」

 雄治はその写真を見て驚いた、昨年の夏、会社の皆でキャンプに行ったときの写真で、恭子の横の顔にはモザイクがかけられているが、それが自分だということはすぐにわかった。

 司会者が、事件についてわかっている範囲のことを必要以上に誇張して話す。

『被害者の松田恭子さんです。写真は会社の同僚の方にお借りしてきましたが、横に写っている男性は恭子さんの婚約者で年内にも結婚する予定だったと聞いております。この男性も今回の事件で左腕に銃撃を受けたそうですが、幸いその怪我は軽症で済んだものの最愛の人を失った悲しみは計り知れません』

 そのコメントのすぐ後に報道陣に囲まれている恭子の上司の姿、恭子の同僚の女性たちが目を赤く腫らしてインタビューに答えている姿が映し出された。

『年内には結婚するんだって嬉しそうに話していました、まさかこんなことになるなんて』

 再び画面に恭子の写真が映り、ナレーションの女性の声が話を続ける。

『もう1人の被害者は、広域指定暴力団の星竜会系成川組組長、成川勝氏で、警察は事件解明に向け関係者への事情聴取などを行っています』

 成川組の事務所と思われる場所の映像が消えるとすぐに次の話題に変わったため、他局のニュース番組もチェックする。

『検死解剖の結果、成川さんは全身に3種類、計10発以上の銃弾を受けて即死状態で運ばれ、犠牲者となった松田さんは、そのうちの1種類と同一の弾丸が、ほぼ正面から心臓部を貫通したもようで、松田さんも病院に運ばれた時には、既に亡くなっていたものと思われます』

 ニュースで発表されていることが全て事実だとは思わなかったが、今はこれらの情報を信じて恭子の最後の状況を知る手がかりとするしかなかった。

 その後も遅くまでニュース番組をチェックしたが、どの局も朝から同じような情報を繰り返し流しているだけで、共通しているのは犯人が特定できていないこと、それと殺された組長は暴力団同士の抗争やトラブルなどはなく、狙われた原因がわからないということだった。

 暴力団同士、どんな理由があるかはわからないが恭子が巻き込まれたことは確かだ、雄治は事情聴取の時にでも他に何かわかっていないか聞いてみようと思った。

 恭子を奪われた悲しみからは当然立ち直っていないが、事件についてはもう少し詳しく知る権利はあると思っていた。

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