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雄治と恭子の両親は、看護師から鎮静剤を渡され、その夜は病院の家族部屋で過ごした。
翌朝、薬のおかげで少しだけ眠りについた恭子の両親と、それでもまったく眠れぬまま夜を明かした雄治の3人は恭子の父親が運転する車で警察署へ移動し、担当の刑事から報告を受けた。
「昨晩、あの場所でもう1人撃たれて命を落としました。暴力団の組長で、斉藤さんとお嬢さんの2人は、その組長を狙った弾、恐らく流れ弾に当たったものと思われます」
「犯人は?犯人は捕まったのですか?」
父親が焦っているような口調で聞いた。
「いいえ、現在も逃走中です。しかし、必ず捕まえます」
その答えに父親はがっくりと肩を落とし、母親は涙をハンカチで拭ったまま黙っている。
雄治は、どうしてこんな目に遭わなきゃならないのかと思いながら、膝の上で拳を握り締めて涙を堪えている。
説明を終えた刑事が部屋から出ていくと、今後の恭子の解剖やその後の遺体の引取りなどの説明を受けるため両親は残り、雄治は自宅へ送ってもらうために警察署を出た、地味な色のライトバンの後部座席に乗ると助手席には先ほどの刑事が乗った、パトカーではないため無線などは無いが、ラジオが流れる訳でもなく車内にはエンジンの音だけが小さく響いていたが、少し走ったところで刑事が口を開いた。
「斉藤さん、亡くなった松田さんは婚約者ということでしたが」
「はい、そうです。昨日、結婚式場を予約してきたばかりで」
雄治は力なく答えた。
「そうですか」
刑事は返す言葉が無かったのか、それだけ言うとまた黙ってしまい、雄治はまたぼんやりと窓の外を眺めていた。




