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「斉藤くん、すまない、まさか古河たちがあんな形で松田くんを・・・脅す程度だと思っていたんだ、まさか偶然に見せかけて殺すなんて思ってもいなかった」
「それで俺に協力する気になったのか?」
「君から貰ったメールに私の名前が無かったから、もし君が古河たちを始末してくれれば俺のことはわからなくなる、そうすればあと数年で定年を迎えて余生を暮らせる、そう思った」
「く、腐ってやがる」
雄治の顔は怒りに満ちた、そしてその目に多くのパトカーの赤色灯が迫ってきたのが見えた。
「あんたを尊敬していたし信頼していた、あの日、俺たちは結婚式場の予約をしたんだ、仲人はあんたにお願いしようって話していた」
山本は話を聞いて大きく肩を落とし、地面に額を押し付けて泣き崩れた。
「それなのに、結局はあんたも自分の保身のためか」
「すまない・・・本当に申し訳ない」
「謝ってももう遅い、それに、俺はあんたを許すことはできない」
雄治は山形の頭を目掛けて銃を構えて躊躇することなく引き金を引いた。
多くのパトカーや消防車のサイレンで銃声はかき消されたが、至近距離で撃たれた山形の頭は形を変えて地面に叩きつけられ、雄治はすぐに飯田も同じように撃って山本に銃口を向けた。
「最後はあんただ、これで全て終わる、仕事ではたくさん世話になったな、本当にあんただけは信用していた、残念だ」
雄治は、一瞬だけ数百メートルに接近したパトカーに目をやると、山本に向けて引き金を引いた、 心の中に達成感は無かったが全てやり終えたという思いで力が抜け、銃を持った右手をダラリと下げてパトカーや大型車両から出てくる警官隊を見た。
雄二は銃や防護用の盾を構えた多くの警官隊に囲まれ、上空に留まっているヘリコプターからの照明に照らし出された。
「抵抗はやめろ、大人しく銃を捨てるんだ」
拡声器を使って呼びかける警官に向かって雄治は大声で叫んだ。
「もう終わったんだ、何もかも終わった、抵抗する気は無い」
雄治は銃を捨てずにゆっくりと両手を挙げながらつぶやいた。
「恭子、全部終わったよ、でも俺があの世に行っても天国にいるお前には会えないな、だって俺は地獄に行くからさ、傍に行ってやれなくて、ごめんな」
雄治は大粒の涙を流すと、左手を胸のポケットに添え、右手の銃をこめかみに突きつけて最後に大声で恭子の名を叫んで引き金を引いた。
雄治の体は衝撃で斜めに崩れ落ち、その硬直した右手に握りしめられたままのトカレフは流れ出した狂鬼と化した男の血を纏い、パトカーとヘリコプターのライトに照らされて赤黒く輝いた。
― 終わり ―




