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「私は・・・」
山本が口を開いた。
「確かに最初に君から菱営商事の話しを聞いたとき、社内資料や調査会社を使って調べた、早川と大山が彼らと結託して会社の金を横領している証拠を掴んだ、そしてその情報を早川に突きつけて会社を辞めて退職金で着服した金を会社に返すように説得しようとしたが、早川に裏にいる成川組の存在と家族に対する脅迫をされた、その上で俺に仲間にならないかと誘ってきたんだ」
「しかし、でもなぜそんな話に乗ったんだ、会社の顧問弁護士に相談して警察に相談する手もあったはずだ、あんたほどの人がそんなことに気付かないはずはないだろ」
「斉藤くん、私は本部長と言っても名前だけだ、うちの会社には私よりも実力とコネを持った者がたくさんいる、給料だって本部長と言っても社長の縁戚の営業部長よりもすっと安いんだよ、私だって高級車に乗り、贅沢な暮らしをしてみたいという気持ちもあった、だから横領を見逃す代わりに定期的に金を入れさせて社内で問題になりそうな事象は全てもみ消すということを繰り返したんだ」
「社内での暴行もか?」
「あれには私は一切関わっていない、これは本当だ」
「川上のことは?」
「君も彼女を利用したじゃないか囮として、それに、あれ以上君に関わって余計なことを知られては困るからな、成川組に頼んで交通事故に見せかけた」
「そうか、囮に使ったことで彼女に悪いことをしてしまったと思っていたが、そこまで手を回していたとはな」
多くのサイレンの音がさらに近づいている。
「それじゃあ、なぜ俺に協力した?」
「社内で他に問題になりそうなことが無いかを調べて貰おうと思って松田くんに調査を頼んだ、彼女がなんらかの報告書を持ってきたとしても私のところでもみ消せば良いと思っていたが、彼女は早川や大山が会社の金を横領し成川組と繋がっていることまで知ってしまった、恐らく私の正体も知っていただろう」
「恭子は、あんたの正体は知らなかったよ」
山本は驚いた顔をした。
「俺は、あんたにメールした時点で、画像データも恭子から俺へのメッセージも、恭子が持っている情報の全てを確認していた、しかし、あんたの名前はどこにも書かれていなかった」
山本は顔を伏せ、声を上げて泣き出した。




