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復讐の狂鬼  作者: 赤岩実
最後の闘い
69/73

5

 目的の場所へ向かう静かな海沿いの道を歩きながら古河の携帯電話の電源を入れた、発信履歴からあの番号に電話をかけた、呼出し音が鳴っている間も自分が最も信頼していた人が黒幕だということは、まだどこかで間違いであって欲しいと思う気持ちも残っていた。

 山本が電話に出た、その声は変声機を通した声だ。

「もしもし、お前は誰だ」

 その声はあの情報提供者と同じだとすぐに気付いた、それから山本の顔と声を想像すると、間違いなく本人だと思った。

「山本さん、俺だよ、斉藤だよ、古河たちを操っていた黒幕も、そして情報提供者として俺を操っていたのもあんただったんだな」

「斉藤・・・お前、やはりまだ生きていたのか」

 山本は変声機をはずすことを忘れたまま答えた。

「今夜、飯田や山形、そして成川組の連中とケリをつける、その後であんたの所に行くよ」

「その必要はない、飯田たちを呼び出しただろ、今私も一緒に向かっている」

「そうか、それなら話が早いな、あんたには色々と聞きたいことや話したいがあるからな、それはあとでじっくり聞かせてもらう、それじゃあ、また後で」

 最も信頼し尊敬してきた上司に対して敬語も丁寧語も使わずに言い放って電話を切ると、古河の携帯電話を海へ投げ入れた。

「絶対に許さねえ、恭子、お前の仇を討つから力を貸してくれよ」

 左胸のポケットに右手を当ててつぶやいた。


 23時を回った頃、雄治が双眼鏡を使って奴らがまだ来ていないことを改めて確認すると、フェリーターミナルの事務所と思われる建物から少し離れた場所に停められている数台のトレーラーのコンテナの陰に身を潜め、時間と周辺の道を気にしながらタバコに火を点けた。

 箱に残っていたタバコは偶然にも最後の1本だった、そしてこれが最後に吸えるタバコだと思った、これからここで派手に撃ち合えば生き残れるかわからない、仇を討って逃げたとしても指名手配、いや囲まれたら逃げ場なんて無い、それに全て終わったなら警察の手から逃げるつもりも無かった。

 最後のタバコを惜しむようにゆっくりとフィルター近くの根元まで吸い終えてから双眼鏡を使って有明埠頭橋方向を見た、こちらに向ってくる数台の車、途中でライトを消してスモールだけ点けた5台の黒塗りの車がゆっくりと近づいてくるのが見えた、雄治は大きく深呼吸をすると取り出してスライドを引いてコンテナの陰に身を潜めた。

 雄治のいる場所から40メートルほど離れた場所に5台の車が停まると、見覚えのある組の男たちが車から降りて周囲を見回している、最後尾の車からは飯田と山形、そして山本が降りてきた。

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