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成川組との接触だけでなく警察の検問も警戒しながら都内に入り赤坂へ向かった。
赤坂見附の交差点を虎ノ門方面に向かい、左手に大きな神社を見た信号を右に曲がって坂を登ってからやや細い路地に入ると、菱営商事の事務所の入っている建物が見える場所に車を停めて古河の携帯電話の電源を入れて飯田に電話をかけた。
「こ、古河さんか?あんた無事なのか?」
怯えたような声で飯田が出た。
「残念だな、俺は古河じゃない」
「だ、誰だ、おまえは?」
「別に誰でも良いさ、まあお前たちにとっては疫病神かもしれないな」
「ふざけるな!貴様はいったい何者だ!」
「そう大声を出すなよ、そのうち古河や早川、大山たちに会えるかもしれないからさ」
「・・・」
「もちろん、あの世で、だけどな」
「・・・」
「奴らも、お前と山形を待っているだろうから」
声を変えるようにわざと低くドスの聞いた声で話す。
「古河たちと組んで成川組長と松田恭子を殺したことはわかっている、証拠も持っている、これからこれを警察へ送ろうと思っているんだけど、どうする?直接取りに来るか?」
「ふ、ふざけるな、なにが証拠だ、そんなことわしは知らん」
普段の飯田の傲慢で偉そうな口調を知っている雄治には、電話の飯田の声は明らかに動揺していることはわかっていた。
「そっか、それなら警察に渡しても問題なさそうだな、じゃあな」
電話を切って1分もしないうちに飯田から折り返しの電話がかかってきた。
「どうした、気が変わったのか?」
「俺にどうしろと言うんだ、金か、そうか金が欲しいんだな、わかった、それなら引き換えに1億払う、1億でその証拠を買うぞ、どうだ?1億円だ」
「そうか、でもその金もどうせ綺麗な金じゃないんだろ、そんな金なんかいらねえな、俺はお前と山形から話しを聞きたいだけだ、今夜0時に東京港フェリーターミナルへ来い、そこで正直に俺の質問に答えたら証拠は渡してやる、わかったな」
飯田の返事も聞かずに電話を切るとすぐに成川組の事務所へ電話した、数回呼び出し音を鳴らしてみたが誰も出ないため電話を切るとすぐさま折り返しの電話がかかってきた、携帯の画面には泉と名前が出ている。
「もしもし」
「成川組の泉って者だが、組長の携帯を持っているお前は山小屋にいた男だな?」
こいつはどうやら、山小屋で襲ってきた者の一人のようだ、しかもそれなりの立場にいる男。
「ああ、そうだ」
「名前は?」
「今は名乗ることはできない」
「こっちが名乗っているのに、名乗れないだと!ふざけんな」
「そう焦るなよ、こっちも腹くくって組事務所にわざわざ電話をかけているんだ、俺もお前たちに連絡を取りたいと思っていた、だからこの携帯で電話をした」
「なんだと?」
「今夜0時に東京港フェリーターミナルへ来い、そこにはお前らもよく知っている男たちも呼んでおいた、そこでお前らとの全てのケリをつける」
「ケリをつけるだと?」
「そうだ、今夜0時だ、待っているからな」
またも返事も聞かずに電話を切ると、すぐ携帯電話の電源を切って上野へと車を走らせた。




