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復讐の狂鬼  作者: 赤岩実
ささやかな幸せ
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5

 土曜日、恭子と待ち合わせをして車で恭子の実家に向かう。

「昨日もお父さんから電話がかかってきて、本当に彼を連れてくるのか?って」

「ははは、先輩が言っていたけど、どんな父親でも初めて娘が彼氏を家に連れて来るときは機嫌が悪いらしいからな」

 雄治も緊張していたが、久しぶりの恭子とのドライブは楽しかった。

 恭子の実家に着くと雄治の緊張はさらに高まった、普段仕事をしているときでもこれほど緊張したことはないかもしれないと思った、ドアミラーを覗き込んでもう一度ネクタイをチェックすると、恭子に促されて玄関に入った。

「はじめまして、斉藤と申します」

 まずは玄関に顔を出した母親に丁寧に挨拶して居間に通されたが、恭子は母親に呼ばれてすぐに台所へと行ってしまい、ややムッとした顔つきの父親と向かい合うと、やはり空気が重い感じがする。

「斉藤君は恭子の会社の先輩らしいな」

 父親がやや不機嫌そうな口調で尋ねた。

「はい、部署は違いますが、恭子さんは私の3年後輩になります」

「知り合ったきっかけはなんだ?」

「社内のプロジェクトで一緒に仕事をしまして、その時に知り合いました」

「君から声をかけたのかね?」

「はい、仕事中の周りへの心配りや態度、責任感の強さなどが、とても気に入りましたので」

「私の娘だ、そんなことできるのは当たり前だ!」

 まだ不機嫌そうな顔で茶を飲んだ。

 娘の父親はムッとして話もしないパターンが多く、場の雰囲気も良くないから適当な世間話ぐらい考えておけと先輩からアドバイスされていたが、色々と聞いてくるぶん楽だと思ったものの、ムッとした硬い表情は変わらず、やはり居心地の良いものではない。

 10分ほど経ってようやく恭子と母親が昼食を居間へ運んできた、あらためてよく見ると恭子は母親似のようだ。

「お父さん、いつまでもそんなに怖い顔していないで、斉藤さんに失礼ですよ、ごめんなさいね、お口に合うかわかりませんが、どうぞ」

 そう言って明るい笑顔で雄治に昼食を勧めた。

「そうよ、この前までは早く結婚相手を連れてこい!みたいなこと言っていたくせに」

 父親は不機嫌そうな顔をしたままで食事をしているが、母親と恭子が一生懸命に場を和ませようとしてくれている。

 昼食の後片付けが済んで再び4人が居間に揃ったとき、食事中は崩すように促され胡坐をかいていた雄二は座布団を外して正座になり、背筋を伸ばして両親の顔を見た。

「お父さん、お母さん、今日お伺いしたのは他でもありません、まだ具体的なことは何も決めていませんが、恭子さん、お嬢さんとの結婚を許していただきたく、どうかよろしくお願いします」

 雄治の口からはっきりと結婚の二文字が飛び出すと、恭子と母親はにっこりと笑い、対照的に父親はさらにムッとした。

 その後は母親がうまく話しをしてくれたお陰で父親の表情も徐々に柔らかくなり、帰る頃には両親ともなんとか打ち解け、夕食の後で父親と2人きりになると娘を頼むと結婚を了承する言葉を貰って恭子の家を後にした。


 その数ヶ月後、仕事が一段落したところで雄治は預金を下ろして小さなダイヤモンドの婚約指輪を買ってプロポーズした、緊張しないと思っていたのにいざプロポーズの言葉を言おうとすると考えておいた言葉が頭の中が真っ白になってしまい、これからも一緒にいて欲しいとだけ言って指輪を差し出した。

 雄治は、幼い頃に父親を亡くし母子家庭で育った、専門学校の学費はバイトをして母親に少しでも負担をかけないように頑張ったが、それでも生活のために一生懸命働いてくれた母親には自分が会社に入って給料を貰えるようになったら少しでも母親に楽をさせてあげたいと思っていたが、それから3年も経たないうちに癌で他界してしまった。

 そんな悲しみと、孤独の寂しさの中で恭子と出会ってプロポーズした今、自分にも家族ができるという幸せを夢見た。

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