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「お、俺は、そのお方のことは何も知らない。早川は俺が仕組んだと言ったが、俺は早川とその本木の指示でやらされていただけだ」
大山は暴力団風の1人の男を顎で指し示した。
「ほう、どっちがその本木だ?」
「左側の緑色のシャツの方だ」
「そうか、お漏らし小僧が本木か、もう片方は?」
「大久保だ。本木の舎弟らしい、俺も今までに2回くらいしか会っていないから、よく知らない」
「それじゃあ、もうお前に聞くことは無いみたいだな」
雄治は大山の近くに立って見下ろした。
「てめえ、恭子が殺されたときに俺を気遣うような言葉を言いながら、どうせ腹の中では嘲笑ってやがったんだろ、ふざけやがって」
渾身の力を込めて腹に蹴りを入れた、大山は大声で唸った後で胃の中には吐き出す物が無かったのか胃液だけを吐き出して白目を剥いて気を失った、胃液の異臭が辺りに拡がり気を失った大山を見た早川が唸り声を上げる。
「早川、お前にはまだまだ聞くことがあるからさ、まだしばらくは起きていてもらうよ」
大久保の猿轡をはずすと雄治の靴に向かって唾を吐きかけた、雄治はニヤリと笑って靴についた唾を大久保のシャツに擦りつけた。
「たとえ下っ端といっても組関係の人間だな、でも今の状況ではどうすることも出来ないよ」
「てめえ、てめえのことは名前もわかっているからな、後で覚えていろよ、絶対許さねえからな」
それを聞いて雄治はニヤリと笑った。
「お前のようなチンピラが詳しいことを知っているとは最初から思ってねえよ。でもお前だけあの場に残しておくわけにはいかねえし、そんなことしたらこのお漏らし小僧が寂しがると思ってよ。でもお前も古河のことぐらいは知っているだろうから、そのあたりのことを聞こうかなぁ」
雄治はわざと馬鹿にしたような口調で言う。
「誰がしゃべるか、馬鹿野郎」
「おお、強がるね~、その強がりがいつまで続くか試してみるか?」
雄治は、事務所で蹴ったときに骨折したと思われる鼻を、軽く靴のつま先で突いてみる。
「ぎゃああああああ」
大久保は大声を上げてのたうちまわった、その大久保をそのままにして本木の猿轡と目隠しをはずすと、本木は早川を睨みつけた。
「早川、てめえよくもベラベラとしゃべりやがって、ただじゃ済まねえからな」
雄治は大笑いした。
「何がおかしい」
「お前らさ、もしかして生きて帰れると思っているのか?俺はそんな半端なことはしないぞ」
雄治は右手に持った銃を大久保の額に近づけた。
「や、やめろ・・・謝る、さっき言ったことは謝るから、う、撃つな、殺さないでくれ!」
雄治はとてつもなく冷たい目をして言い放った。
「恭子を殺しておいて、会社の金と女を食い物にしたくせに今度は命乞いか?お前らに犯された女たちも助けてくれって叫んだはずだよな、それでもお前たちはその声を聞かなかったはずだよなぁ」
左手でスライドを引いて弾が装填されると一瞬の躊躇もなく引き金を引いた、サイレンサーによって低い音に抑えられた銃声とともに、一瞬悲鳴が上がり、血飛沫と肉の塊が飛び散って大久保が絶命し、それを見ていた早川と本木は再び気を失った。
雄治は信じられないほど冷静だった、復讐心や怒りにまかせて引き金を引いた訳ではなく、まるで空き缶を撃って練習していたときのような感覚で引き金を引き、血まみれになった大久保の死体を見ても眉一つ動かすことは無かった。




