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2週間ほどたったある日、大山が川上に何かを話している。
「川上くん、今日残業を頼みたいんだが、大丈夫かな?」
「ええ、今日でしたら大丈夫ですけど・・・」
とうとう来たなと思った。
「じゃあ申し訳ないけど、お願いするね」
大山は川上に見えないように含み笑いをして席から離れていくと、川上はすぐさま席を立ってトイレに駆け込み、雄治の携帯電話にメールを送った。
「残業しろと言われました。具体的な指示がないので怪しいと思います」
雄治はメールを見て喫煙ルームへ行くと、すぐに返した。
「了解。とりあえず俺も少し残って大山をじらすようにする、たぶん遅い時間になって誰もいなくなった頃を見計らって行動してくるに違いないから、あとは作戦どおりに!」
「了解しました、お願いします」
すぐに返信が来た、川上はあらかじめ雄治と打ち合わせしておいた通りにケーブルなどを束ねるための長めで太い結束バンドと、ビニール紐を総務に貰いに行ってから席に戻ると、雄治もそのままタバコを吸ってから席に戻った。
終業のチャイムが鳴って徐々に事務所から人が減っていく、21時をまわる頃には大山と雄治、そして川上の3人になった。
「斉藤くん、残業なんてめずらしいな、どうした?」
大山は少し苛立っているようすだ。
「休んでいる間に溜まっていた仕事もあるので・・・そろそろ帰ろうと思っています」
「そうか・・・」
大山は何やら携帯電話を気にしている。
雄治は机の上を片付けてから大山に気づかれないように川上に目で合図すると、パソコンの電源を落としてトイレに行った、しばらくして戻ってみると、まだ大山は携帯電話を気にしている。
雄治はその大山を横目に見てロッカーに書類ボックスとパソコンを戻してアタッシュケースを掴んだ。
「それじゃあ、お先に失礼します」
大山と川上に声をかけた。
「お疲れさまでした」
川上は少し不安そうな声を出した。
「ああ、お疲れさま・・・」
大山は対照的に少し嬉しそうに返事をした。
雄治は部屋を出て後ろを振り返ると、すぐに女子トイレに駆け込み、掃除用具入れに身を隠して気配をうかがっていると、しばらくして大山が事務所から出てきて電話で話しはじめた。
「そうですか、ではいつものように地下駐車場に車を入れてください。迎えに行きます」
そういうとエレベーターを呼んだ音がした、すぐにエレベーターが来たのかエレベーターホールに人の気配が無くなったのを確認して雄治はすぐにトイレから出ると、川上にも気づかれないように別のドアから事務所の中に戻った。
雄治には消した覚えは無かったが川上が座っている付近だけ電気が点けられていた。
雄治は入ってきたドアから離れた場所に身を隠すとアタッシュケースからホルスターを取り出し、音を立てないように弾倉を確認し、上着を脱いでホルスターを着けた、念のため予備の弾倉を1本だけ尻のポケットに忍ばせて用意しておいた目出し帽をかぶった。




