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退社時間になると雄治はすぐに銀座へ向かった、行きつけだった店に電話を入れて無理を言って個室を用意してもらってから待ち合わせ場所で待っていると、10分ほど遅れて川上が現れた。
「遅れてすみません。課長に食事に行こうと強引に誘われて、予定があると言って逃げてきました」
「そうか、それじゃあ行こうか」
予約しておいた店に川上を案内した、店長に飲み物と適当につまみを頼んでから個室へ入る。
「おしゃれなお店ですね、恭子と来ていたのですか?」
「うん」
「すいません、変なこと言って」
「気にしなくていいよ、とりあえず腹減っているだろ、詳しい話しは少し食べてからにしよう」
運ばれてきた料理を食べて少しアルコールを入れてから、雄治が話しを切り出した。
「大山・・・いや、課長はいつ頃から君を頻繁に誘うようになった?」
「そうですね、1週間前ぐらいでしょうか」
恭子の事件の後すぐのようだが彼女が上手く誘いを断っていたから、代わりに清水さんが犠牲になったのかもしれないと思った。
「この前、斉藤さんは課長のことを大山って呼び捨てにしていましたけど、何かあったんですか?」
「えっ?そんなこと言ったかな?あのときは他のことで苛々していたから、そう言っちゃったのかもしれないな、気にしないで」
「そうですか・・・でも、私もたまに大山、って怒鳴りたくなる日ありますけどね」
川上はペロっと舌を出して微笑んだ、雄治はそれを見て笑った。
「でも、残業はしないようにしろとか、課長の誘いに乗るなって言いましたけど、なぜですか?本当は何かあるんですよね?」
この子を巻き込んではいけない、そして何よりも、大山たちの犠牲者にすることだけは絶対に避けなければならないと思った。
「いや、別になんでもないよ」
雄治は下を向いて、左手の人差し指で鼻の頭を触った。
「嘘!斉藤さん嘘ついています」
「なんで?」
「恭子から聞いたことがあります。斉藤さんが嘘つくときは、必ず1回下を向いて、鼻の頭を人差し指でこするからすぐわかるって」
恭子のやつ、余計なことを教えていたなと思ったが、もはやしかたないと思った、隠しておくよりもきちんと話しておけば彼女自身で身を守ることが出来るかもしれないと考えた。




