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復讐の狂鬼  作者: 赤岩実
罠を仕掛けろ
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1

 2日後、久しぶりに出勤するため、わざと金曜日を選んで支度をした。

 いつもの電車に乗って会社へ向かう、恭子の事件でテレビに映っていた雄治の顔は覚えられてしまったようで周りの人が時折視線を向けてくる。

 会社の最寄り駅に着いてやや怠そうな足取りで改札へ歩いていくと、反対側のホームから川上が上がってきて改札で一緒になった、そのまま会社までゆっくりと話をしながら歩く。

「ご気分はいかがですか?」

「うん、もう大丈夫だよ、いつまでも家に篭っていてもしかたないし」

「少し顔色も良さそうなので安心しました」

 川上は笑顔を見せて、思い出したように続けた。

「ところで、この前電話で話した課長からの誘いの件ですが」

「その件については、別の場所で詳しい話しをしたいから今夜少し時間取れるか?」

「はい、大丈夫です」

「じゃあ、時間はまた後で決めよう」

 2人は事務所のあるオフィスビルに入っていった。

 久しぶりの出社だったが周りの人たちに暖かく迎えられた。

 とりあえず総務課に行って挨拶を済ませると、すでに退院して出社している山本本部長を訪ねた。

「そうか、今日から出社してきたか」

「はい、ご心配をおかけしました」

「いや、私の方こそ心配をかけてしまったな」

「もう大丈夫なのですか?」

「幸い当たり所が良かったみたいだ、一時的に気を失ったけど、もう大丈夫だ」

「それは良かった」

 雄治は返しそびれていた恭子のパソコンを山本に渡した。

「送ってもらったファイルは読ませてもらった。あの件のことは私に任せてくれ、続きは興信所を使って調査させることにしたから、君もあのファイルに書かれていたことは忘れてくれ」

「はい、わかりました」

 山本にはそう言って答えたが、興信所よりも先に調べなければ奴らは証拠の隠滅や、もしかすると早川たちはトカゲのしっぽ切りのように始末されてしまうのではないかと思いながら山本の部屋を出た、次に恭子が所属していた部署に顔を出して挨拶を済ませてから自分の席に戻った。

 会社のメールは自宅でチェックしていたので未読のものはほとんど無かったが、いつも雄治が使っていた机には回覧などが積まれていたが誰かが整理しておいてくれたようで綺麗にはなっている。

「気がつくと、いつも遥先輩が掃除していましたよ」

 いつも隣に座る竹田が言った。

「そうか、じゃあ後でお礼を言っておかないとな」

川上の座っている方を振り返った、そう言って明るく笑った雄治の顔を見て竹田が笑顔で答えた。

「思ったより元気そうで良かったです。またよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくな」

 雄治は後輩からは慕われていたから、一緒に仕事をしていた他のメンバーからも同じような声をかけられた。

 昼休み、外で食事を済ませてきた川上に声をかけた。

「机の上、いつも綺麗にしておいてくれたんだってね、ありがとう」

 わざと何気ない会話をした。

「いいえ、どういたしまして」

「ところで、今日は残業になりそう?」

 少し声を小さくして尋ねた。

「いいえ。斉藤さんに言われたように、できるだけ残業しないようにしていますので大丈夫です」

「そうか、帰りが反対方向になってしまって悪いのだけど、銀座数寄屋橋の交差点、あそこの交番の前で待ち合わせしよう、時間は6時半で大丈夫?」

「はい、大丈夫です、数寄屋橋の交番の前ですね」

「うん、俺は先に会社を出るから、現地で」

「はい、わかりました」

 川上は小さく頷いて、雄治から離れていった。

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