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目的の駅近くに着いて、そのまま路上に車を停めて階段を駆け下りた。
0時を回っていたため人影はなく、駅員が地下への階段の入口を閉めようと部屋から出てきた。
「お客さん、もう終電は出てしまいましたよ。階段のシャッターを閉めますので出てください」
「すみません、コインロッカーに荷物を預け忘れていたので、取ったらすぐに出ます」
そう言ってコインロッカーを見つけ、鍵の番号のロッカーにキーを差し込んで回すと鍵が開いた、中には大きな紙の手提げ袋が入っていたので、ロッカーから取り出すと中身を確かめず脇に抱えた。
「すみませんでした」
駅員に声をかけて急いで階段を駆け上がり、すぐに車を走らせた。
袋は半分ぐらいのところで折りたたまれているので大きな物ではないようだが、かなり重たい物が入っている。
信号待ちの際に袋の中を覗いてみたが何重にも袋に入っていてわからないので、部屋に戻ってすぐに中身を取り出し、厳重に梱包されている袋を破り捨てた。
「こ、これは・・・」
雄治は驚いた、さらに厳重に油紙に包まれた自動式拳銃と実弾が4箱、200発も入っている、初めて手にする本物と思われる拳銃に恐怖で身動きできなくなっていると携帯電話が鳴った。
番号非通知だが、こんな時間に電話がかかってくるのはおかしいと思って電話に出た。
「もしもし・・・」
雄治の声は少し怯えている。
「斉藤さん・・・」
あのCDの変声器を通した声だ。
「私からのプレゼントは気に入っていただけましたか?」
「あ、あなたはいったい誰なのです、こんな物をいきなり・・・」
「別に誰でも良いではありませんか、私は貴方に復讐のチャンスを与えると言いました。そのために必要な物ですよ」
「しかし・・・拳銃なんて・・・」
雄治は電話口で小声になった。
「その銃の名はトカレフと言います。改造銃でも中国製でもありません。旧ソ連時代に作られた精巧な代物ですし、前科もありませんから、どうぞご安心ください」
「そういうことではなくて、私にどうしろと?」
「あなたがそれを使って何をするかは、私が決めることではありません。あなたは松田恭子さんの仇を討ちたいと思っているのではないかと思いまして・・・何度も言うように、そのチャンスを与えただけです」
「しかし・・・」
「銃の使い方などは自分で調べてください。インターネットで調べればいくらでも出てくるでしょう。では健闘をお祈りしています」
「もしもし・・・」
電話は切れた、雄治は丁寧に油紙をはがしてトカレフを手にすると、興奮と恐怖で体が震えた。
雄治は急いでパソコンを立ち上げて、トカレフについて検索した。
『型式TokarevTT-33、旧ソ連製で7.62mm弾を使用する、撃ちだし初速が極めて速く、貫通力も高い、旧ソ連の軍用拳銃で・・・』
「トカレフの名は聞いたことがあったが、日本に密輸されているのは、ほとんど中国製か」
実際に手にした銃とインターネット上の写真を見比べてみる。
左側のボタンを押してみるとカチッという機械的な音と共に弾倉の下部が顔を出した、そのままゆっくりと弾倉を引き抜いて中が空であることを確かめると弾倉を戻して空撃ちしてみる、真夜中の静まり返った部屋の中に金属の鋭い音が響きわたり、雄治はその音にまた怯えた。
「こんな物で何しろって言うんだよ。拳銃なんて使ったことないし、初めて手にするのに」
不安になると同時に少しだけ興奮したが、この銃で何をすれば良いのか思いつかない、しかし、何もしないとしても、これをどうやって処分したら良いかを考えただけでも眠れなくなった。
外が明るくなってきたのでテレビを点けた。この数日は色々なことが起こり、ただでさえ頭の中が混乱していたのに、今度は拳銃を手にしてパニックになりそうだった、確かに大山や早川をこのまま許すつもりはない、だからと言って銃を使って何かをしようなんてことは想像できなかった。




