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翌日、少し早めに新宿に着いてクラブ蘭の場所を確認すると、言われたとおり夜9時に訪れた。
店内は5人が座れるだけの小さなカウンターの他にテーブル席が2席あるだけで、バーテンダーは暇そうにしている。
雄治はまだ復讐まで考えているわけではなかった、しかし、あの声の男が言うように恭子が殺されたことが偶然で無いなら、それを証明して早川たちのやっていることを明るみにしなければ恭子がうかばれないとは思った。
「ジントニックください」
雄治はカウンターに腰を下ろして、バーテンダーを見た。
「かしこまりました」
店には雄治以外に、サラリーマン風の男たちがテーブル席に1組座っていて、猥談で盛り上がっているようで接客しているママらしき女性は話を聞きながら苦笑いしている。
バーテンダーはジントニックを作り終えて雄治の前に置くと、愛想笑いを浮かべながら丁寧な口調で話しかけてきた。
「はじめてのお客さまですね、よろしければお名前を聞かせていただけませんか?」
「あ、佐藤と言います」
「やはり佐藤様でしたか、お待ちしておりました」
バーテンダーは微笑むと、カウンターの下から紙袋を取り出した。
「これをお預かりしておりました。9時に佐藤様がお見えになったら、お渡しするようにと」
「誰なのですか?その人は?」
「申し訳ありません、その方のことをお話しすることはできません。ただこれを佐藤様にお渡しするように言われただけですし、中身はご自宅で確認するように伝えてくれと言われました」
そう言って軽く頭を下げて雄治から離れていくと、グラスを磨きながら店内に流れるブルースに合わせて鼻歌を歌い始めた。
雄治はその紙袋を手に取るとジントニックをいっきに飲み干して代金を置いて店を出た。




