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家へ帰る途中、近所のスーパーに寄って惣菜とビールを買って帰宅した。
アパートの前に借りている駐車場に車を停めると、数人のカメラマンが雄治を撮っているがリポーターと思える人影は無いため取り囲まれることなく部屋に入った。
恭子は何をパスワードにしたのだろうかと考えながら買ってきた荷物をテーブルに置くと、Tシャツと短パンに着替えてテレビを点けた。
昼間警察に行ったときの雄治の映像や昨晩と同じ映像と内容が語られているだけで、これと言った目新しい情報は何も無い。
簡単な食事をビールで流し込むと、パソコンには手をつけず、机の上に置いてあった写真たてを手に取り、そのまま畳まれている蒲団の上に横になった。
「恭子、教えてくれ。お前は何を調べ、山本さんに何を報告しようとしていたんだ。刑事さんが言っていたが、まさかお前が狙われたなんてことは無いよな」
写真が答えをくれるはずは無く、昼間の事情聴取やマスコミの取材攻勢などで疲れたのか、写真を胸の上においたまま眠ってしまった。
「恭子・・・恭子・・・」
恭子の名を叫びながら血まみれになった恭子を抱いている自分の姿を見て目が覚めた、汗をタオルで拭ってテレビを消した、時間は午前3時を回っている。
雄治はタバコに火を点けた、恭子にはやめて欲しいと言われていて結婚を機にやめようと思っていたが、おそらく実現することはない。
タバコを吸い終えると、蛇口に直接口を付けて水を飲んで乾いた喉を潤してから蒲団を敷き直して横になった。
雄治は昼近くまで寝ていた、ゆっくり起き上がって洗面台で顔を洗うと、湯を沸かしてコーヒーを淹れる準備をしながらテレビを点けた、ワイドショーは芸能ネタが無いのか、どこの局もあいかわらず恭子の事件が話題の中心だ。
テレビを見ながら、トーストとコーヒーの簡単な昼食を済ませて溜まっていた洗濯物を洗った。
夕方に恭子の荷物が届き急いで箱を開けた。一番上に川上からのメッセージが入っている。
斉藤さんへ
机の中やロッカーの中に入っていた荷物は、これで全てです。
恭子の荷物を整理していても、いまだに彼女がいななくなったことが嘘のようで、
これを見ているだけでも涙が出てしまいます。
でも、斉藤さんは私よりも辛いですよね、
どうか1日も早く元気になり、会社へ戻ってきてください。
川上 遥
雄治は、手紙を読んで辛いのは自分だけではないと元気づけられたような気がした、しかし、今は恭子が何を調べ、何を報告しようとしていたのか、その報告書には自分宛にも何かメッセージがあるような気がして、それを見つけることが何よりも大切なことのように思えた。
荷物を1つ1つ箱から取り出していく、更衣室のロッカーに入れてあったと思われるカーディガンを見て涙が溢れそうになった。
「俺が誕生日に買ったやつだ。最近着ているのを見ないと思ったら、会社に置いてあったのか」
他にも、席で使っていたと思われる可愛い絵の描かれたマグカップや、歯ブラシ、それほど多くない私物の中に、卓上カレンダーと愛用していた筆箱が入っていた。筆箱を開けてみると消しゴムが2つ入っているのを見て思い出した。
「この消しゴムは確か・・・」




