3
恭子がいったいどんなパスワードを設定したのか皆目見当が付かないが、なんとか解いてみせると思っていると川上がパソコンを持って部屋に入ってきた。
川上は指示されたようにテーブルの上にパソコンを置くと、すぐに部屋から出ていった。
「斉藤くん、もう良いぞ」
雄治はパーティションの裏から出てきて応接セットのテーブルに置かれたノートパソコンの電源ケーブルを繋ぎ、無線LANが使えるようになっていることを確認して電源を入れてソファに座りパソコンと向かいあった。
しばらくしてログイン画面が表示され『kyoko_m』とIDが表示されているが、当然パスワード欄は空欄になっている。
パスワードは社内のアカウント定義の設定上、個人番号や名前、誕生日といった単純なものは設定できない仕組みになっていて、思いついた物をむやみやたらと入力して何度もエラーになってしまうとロックがかかってしまい、そうなればシステム管理部の者以外にはどうすることもできなくなってしまう。
恭子もそんなことぐらいわかっているはずなので、法則性の無い複雑な文字の羅列にはしていないと思うが、やはり単純なものではないと思った。
「本部長、片端から入れていくわけにはいかないので少し時間をもらっても良いですか。すぐには思いつきそうもないので」
「そうだな。パスワード以外に何か方法は無いのか」
山本はかなり焦っているようすで雄治のようすを近くで見守っている。
雄治は自分のIDを使ってログインしてみたが、権限が設定されていないため恭子のディレクトリを見ることはできない。
「恭子、パスワードはなんだ?教えてくれ」
心の中で恭子に問いかける、誕生日や名前など想像できる範囲の数字や文字の組み合わせを書き出し、ロックが掛からない範囲でいくつかを試してみたが単純なものではないようだ。




