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会社の近くにあるコインパーキングに車を停めて歩いていくと、雄治が出社するとは思っていないため会社の入口付近に報道陣の姿はない。
同僚たちにも会いたくなかったので建物の裏口へ回り、守衛室でIDカードをガードマンに見せて建物の中に入り、すぐ近くにある荷物用のエレベーターに乗って11階にある山本本部長の部屋へ行きドアをノックした。
「はい」
「斉藤です」
「入りたまえ」
斉藤は一礼して後ろ手にドアを閉めてから、小さな応接セットの近くに立った。
「思ったより早かったな、座ってくれ、呼び出したりしてすまん」
「いいえ、ところで、どのようなお話しでしょうか?」
「実は例の件で困ったことになったのだ、松田くんにも関係があるのだが」
「例の件で恭子が何か?」
「賠償問題にならないために松田くんに調べてもらっていたのだが、調査結果を聞く前にあんなことになってしまって」
山本は困惑したようすでタバコに火を点けた。
「資料は彼女のパソコンにあると思うが、パスワードがかかっていて見ることができないのだ」
「調査結果ですか?」
「あの件については社内にも不振な動きがあって、彼女なら信用できるから内密に調べてもらっていたのだが、先週の金曜日にもうすぐ資料がまとまるので出来次第報告すると言われていたのに、あんなことになってしまって」
「そうだったのですか」
「システム管理部の者にパスワードを解除してもらうことも考えたが、もしもその者が不正に関わっていたらと思うと頼めなかったのだ。もしかしたら、斉藤くんならパスワードの手掛かりになりそうなことを知っているかもしれないと思って来て貰ったのだが」
「パスワードですか・・・わかりました、やってみます」
「いま君が彼女の席に行くのはまずいから、松田くんと同期の川上くんに、彼女の荷物をまとめてここへ持ってくるように頼んでおいた。そろそろ来ると思う」
山本は席を立って電話を取ると、川上のところへ電話を入れる。
「山本だが、松田くんの荷物はまとまったかね?そうか、とりあえず彼女のパソコンだけ私の部屋へ持ってきてくれないか、大至急だ、頼む」
そう言って電話を切って雄治を見た。
「君がここへ来たことを知っているのは?」
「裏口の守衛室の前は通りましたが、それ以外は誰にも見られていません」
「そうか、川上くんにも知られない方が良いかもしれん、少しの間隠れていてくれ」
雄治は入口からは見えないパーティションの影に隠れ、川上がパソコンを持ってくるのを待った。




