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雄治は警察で事情聴取を受けていた。
「あなたたち2人が店を出てきたとき、車や人影を見ませんでしたか?」
「覚えていません、というかあまり記憶が定かではありません。店を出てきてすぐのことでしたし、雨が降っていたので駐車場まで傘をさそうとしていたところでしたから」
「逃げていく車などは見ませんでしたか?」
「恭子があんな状態でしたから、それどころではありませんでした」
刑事も雄治の言葉に嘘はないと思っていた。
確かに婚約者が目の前で死にそうになっているときに冷静でいられるはずはない、現場周辺で聞き込みをした際にも雄治は恭子を抱きかかえて大声で叫んでいたと聞いており、その状況で逃げる車を見ているとは思えなかった。
「あなた方が狙われたということは無いと思いますが、何か思い当たることなどはありませんか?」
「仕事上のトラブルが全く無いとは言いませんが、拳銃で襲われるようなことは無いと思います」
「そうですか」
それから1時間ほどの事情聴取が終って解放された。
「斉藤さん、マスコミの連中が張っていますから表からは出ない方が良いですよ」
「そうですね、でも何も話すことはありませんし、私は悪いことをしたわけではないので正々堂々と表から出ますよ」
刑事に向かって悲しい目をして笑ってみせると、刑事も納得したように苦笑いして見送った。
正面の玄関から出ていくと想像していたようにマイクやカメラが向けられ、うるさいほどのシャッター音が響き渡り、フラッシュの光で眩暈がしそうだ。
「斉藤さん、婚約者を殺した犯人に一言」
「何も話すことはありません。ただ一日でも早く捕まってほしいと思っているだけです。急いでいますので道をあけてください」
そう言ってインタビューアやカメラマンを押しのけて通りに出てタクシーを拾った、レストランの駐車場に車を置いたままにしていたのでレストランへ行き、店長や店員に礼を言って少し話をしてから自分の車に乗って会社へ向かった。




