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昼間に寝てしまったため午前2時過ぎまで寝付けなかったが、病院で貰ってきた睡眠薬を飲んで眠りにつくと朝の9時近くまで眠ることができた。
すぐにテレビを点けると、今日もワイドショー番組では事件を取り上げていて昨日と何も変わらない内容が報じられているが、画面が切り替わり中継先の映像が映ると雄治は驚いた。
周囲はモザイクがかかっていてわからないが、自分のアパートが映し出されている。
確かに朝からなんとなく窓の外が騒がしいと思っていたのでカーテンの隙間から外を覗き見てみると、どこでどう嗅ぎつけたのかテレビ局のカメラマンやアナウンサーたちが雄治が部屋から出てくるのを待っているようだ。
「いったいなんなんだよ、こんなところまで来やがって」
そう思っていると携帯電話が鳴った、見たことも無い番号なので不振に思いながら出てみる。
「もしもし・・・」
「もしもし、山本だが」
電話の相手は、雄治が最も信用している上司、本部長の山本だ。
「事件の直後で、まだ気持ちの整理もついていないだろうが、すまない」
「いいえ、この番号、本部長の個人携帯ですか?」
「そうだ、君に大至急確認したいことがある。とても重要なことなので他の者には頼めない、今日中に一度会社へ来てくれないか?」
「わかりました。しかし、家の周りを報道陣に囲まれてしまっているので」
「そのようだな、テレビを見ているから状況はわかるが、なんとかして会社へ来てくれ、頼む」
「わかりました。これから警察に行って事情聴取を受けるので、夕方になるかもしれません」
「そうか、私も午後は外出予定が無いから、直接私の部屋へ来てくれ」
「わかりました」
電話を切ると出かける準備を整えて部屋を出た。
雄治を見た報道陣が一斉に階段の下に集まってきて、すぐに取り囲まれて質問攻めにされた。
「すみません、何もお話しすることはありません」
そう一言だけ言って振り払うように歩きだすと、後を追うようにしてテレビで見たことのあるキャスターらしき人たちが追ってきたが、雄治は黙ったまま通りに出てタクシーを拾った。




