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光と闇の戦い


 ――神々と剣と魔法の世界。


 神、邪神、天使、悪魔、古代人の戦いは凄まじいモノだった。その力を前にただのヒト族は蹂躙された。


 神は従属させ。

 邪神は贄とし。

 天使は罰して。

 悪魔は弄んだ。


 すべてを破壊つくす為に、うみだされた暗黒竜。

 神々はその力で聖剣を創り上げた。

 

 この世界のモノにはあつかえない聖剣。

 異世界からその魂を召喚した。



 


「やっぱりな」


 聖剣の勇者が光の中、つぶやいた。


 スッ


 暗黒竜を前に、天へと掲げた聖剣を下ろした。


『何をしている勇者よ? 狂ったか?』


 暗黒竜は混乱していた。

 今期の勇者がナニかがオカシイ。



 ◆



 ラストダンジョン最深部である玉座の間。

 暗黒竜の眠る最終決戦の地。

 勇者がついに現れた。


 幾度となく行われている《光と闇の戦い》

 勇者とその仲間たちが戦慄した。



「暗黒竜が……復活している!?」


「何て力だ……!?」


「皆んな、油断するなよ」


「オッケー! 負けないンだから!」


「神々よ、祝福を〜♪」



 戦いは熾烈を極めた。


 勇者が剣を掲げ、聖剣がかがやいた。

 吹き抜けの王の玉座に天からの光が到達する。

 暗黒竜にトドメをさそうとした瞬間。


 勇者とその一行は突然、立ち去った。


『……何故トドメをささない……?』


 訳が分からぬ状況に、傷だらけの暗黒竜は闇の中で意識を手放し眠りについた。




 3日後、また再び勇者御一行がやってきた。


 勇者とその仲間たちが再び戦慄した。

 何かがおかしかった。



「暗黒竜が……回復している!?」


「何て力だ……!?」


「よっしゃぁ! 皆んな、油断するなよ」


「オッケー、負けないンだから!」


「神々よ、再び祝福を〜♪♪」



 何だか3日前に聞いたような台詞を吐き。

 勇者たちと再び決戦となった。


 戦いは熾烈を極めた。めちゃくちゃだ。


 お互いに一度は戦った相手だ。

 勇者達は、前回の経験を活かす。

 

 暗黒竜の攻撃に連携プレーを見せ手強かった。


 私も奴等の……勇者共の力や技を把握してる!

 やすやすとヤラれているわけではない。



「勇者、今よっ!!」



 聖剣をかかげた勇者、上空から光が舞い降りる。


 天からの光が、闇の玉座に到達、輝いた。

 暗黒竜にトドメをさそうとした瞬間。


『……?』


 いつまでもおとずれないトドメの衝撃。

 暗黒竜――私はチラリと目を開けた。


「……。」


 勇者がジッとこちらを見ている。

 お互いに目が合う。

 勇者はまた聖剣を下げて、そのまま背を向けた。


 勇者とその一行はまた、立ち去った。


『何故、何故トドメをささない……?』


 ワケが分からぬ状況に、私はうめき声をあげふたたび意識を手放し、眠りについた。




 今日も今日とて、勇者御一行が現れた。

 

 戦いは熾烈を極めた。勇者達の連携プレーは凄まじい勢いで形勢されていた。まるで速さを求めているようだ。


 聖剣が光が舞い降りる。

 私は目を閉じる。だが、やはり衝撃がこない。



「……やっぱりな」


 ジゼルと呼ばれる男、勇者が呟いた。


 スッ


 暗黒竜を前に、天へと掲げた聖剣を下げた。


『何をしている勇者よ?狂ったか?』


 私は混乱していた。

 今期の勇者がナニかがオカシイ。


『何故トドメをささない……!』


 勇者はため息をついて暗黒竜を見た。


「お前、本気だしてないだろ?」


『……っ!?』


「ああ、まるで封印してください、と云わんばかりの攻撃だなー? お前の力はこんなもんじゃねぇ、もっと全力だせよ?」


『ナニヲイッテルンダオマエハ……?』


「まぁ、明日も来てやるよ」


 勇者が振り向きザマにニヤリと笑う。

 私は呻き声を上げながら、意識は闇へと閉ざされた。


 訳がわからぬ勇者とその御一行。

 今日も今日とて暗黒竜の私と勇者は戦った。



 ◆




 ――ラストダンジョン最深部、玉座の間。

 暗黒竜の眠る最終決戦の地。

 勇者が、二度、三度、……何度も現れた。



 幾度となく行われている《光と闇の戦い》


 何度目かの戦慄した勇者の仲間。

 こいつらも何かがおかしかった。



「暗黒竜が……疲弊している!?」


「何て力のなさだ……!?」


「う〜ん? 一応油断するなよ」


「オッケー! 今日も負けないンだから!」


「神々よ! ありったけの祝福を〜♪♪♪」



 ドゴォっ!!



『いい加減にしろ!!』


 尻尾を叩きつけて咆哮をあげた。


「うわっなんかめちゃめちゃ怒ってる!?」


「こいつ、突っ込みかよ!」


「かなりキレてますねぇ〜、コレは」



 私は怒りの咆哮を上げブレスを吐いた。

 ありったけの最大級出力で、だ。



「おおっと、危ねぇっ」

 

 勇者がアチアチ言いながら笑って回避した。



「ちょっとぉ! 今のはヤバかったよ!」

 

 エルフの魔法使いが杖を構え魔法を唱える。



「フンッどうやらやれば出来る子みたいだなぁ」

 

 ドワーフの戦士が大斧を振り回し薙ぎ払う。



「やはり連続討伐で苛立っているのでは?」

 

 ヒト族の神官が杖を掲げ祈りを捧げる。



「暗黒竜の怒りが凄まじい……おおっ神よ〜♪」

 

 魔族の吟遊詩人が竪琴をかき鳴らし歌う。




『いい加減にしろ!! オマエ達は何なんだ!!』


 激しくブレスを叩きつける。

 勇者は踊るようにアクロバットで回避する。


「ども、勇者ですケド」


『……っ!?』


 私は絶句した。

 確かにそうだ、コレは……勇者だ。

 でも、こんな勇者見たことない!



『何故トドメをささない!!?』


「まだ俺達の戦いは始まったばかりだっつーの。何言ってんだこの暗黒竜?」


 ガァキィィン! ガァキィィン!


 お互いに攻撃を繰り出し合いながら戦う。

 聖剣がぶつかり合う度に、光の雫を放ちキラキラと燦めく。



「今日は調子悪いンじゃないの〜? 地上は曇り空みたいだしー、気持ち的に弱気なんじゃないの?」


 ブゥゥゥン、ゴァッ!!


 浅黒い肌のダークエルフの魔法使いが、巨大魔法陣をいくつも展開して描き、大魔法を撃ちながら心配そうな顔をした。



「まぁ、暗黒竜だって気落ちする日もあるわな」


 ブンブンブンッドガン!


 褐色肌のダークドワーフの戦士が、真っ黒に血で染まった大斧を振りまわしやれやれと頭を振るう。



「もうトドメをさしてくれと、懇願しているあたり暗黒竜のSAN値(正気度)は大丈夫でしょうか?」


 ギョォァオェオォ……!


 人族だがまるで悪魔のような神官が、黒いローブで禍々しい衣装をまとい、禍々しく泣き叫ぶ杖で悪霊とゾンビを呼び出し支援する。



 ポロン…ポロン…ポロロン♪


「哀しみに明け暮れる日々に愛の歌を〜♪ 暗黒竜へと届けたまえ〜♪」


 人外離れした美しい魔族の吟遊詩人が、古代語で歌い加護と癒やしの旋律を奏でた。




『貴様ラ! 貴様ラ! 貴様等ァァ!!』


 ズズッドガガガガ……!


 雄叫びを上げ世界が震動した。


『滅びよ!!!』


 ゴアアアアァァァァァァッ!!


 最大出力で放たれるブレス。


「あははっ本気攻撃きたー」


 勇者が笑いながら、回避し、時に受け止めた。


 ガァキィィン! ガァキィィン!



『黙れ、黙レ黙れェ……!!』


 ブワッゴォォォォオオオッ!!


 大翼による吹き荒れる大嵐、爆風が巻き上がり勇者とその仲間を攻撃する。


「いくよっバリア!!」


「―――結界陣、全方位展開……!!」


「神々よ精霊よ、護りよ力をあたえ給え〜♪」


 大嵐の爆風の中、大爪によるやまぬ連続の切り裂き。大地を破壊せぬばかりの振るう超重量による尻尾の連打。狂ったかのようにブレスを吐き出し捲くる。


 ドゴォッドゴォッドゴォォン!!


「きたきたきたきたきたー!!」


「どわああぇぇい!」


 ガァキィィン! ガァキィィン!


 迷宮の巨大な岩が容赦無く降り注ぐ。暗黒龍の間は地獄と化した。


 ゴアアアアァァァァァァッ!!



 戦いは今までの中で最強の苛烈さだった。

 やがて、暴風の嵐や地鳴りがやんだ。


 天から一筋の光が到達し、ゆらめき輝いた。

 吹き抜けの玉座の間に光があふれて満たされる。


「どーした? おわりか?」


 グルルルル……。


 瀕死で唸り声を上げた。

 神々と古代人による古代兵器。

 世界の破壊神として創られた−−。


 暗黒竜として、歴代勇者との戦いでここまで熱く自我を失うほど本気で戦ったことはなかった。

 何故かありもしない、心が……満たされた気がした。



『………早くトドメをさせ』



 ――連日連戦、勇者と繰り広げる《光と闇の戦い》

 世界の命運を賭け、まるでバカげた遊びのようだ。

 朦朧とした意識の中で勇者と目があう。



 聖剣を掲げた男が、光の中で笑った。



「お前はいつもそればっかりだな」


『……。それ以外に…何がある……?』



 フハッ


 勇者がやさしい目で、私を見ていた。


「…………何があると思う?」



 巨大迷宮、光りも届かぬ底の果て。

 暗黒竜の玉座の間。古代兵器……。



 暗黒竜は友を得た。



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