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CCB~11人の異端児が奏でる協奏曲~  作者: ニコニコ大元帥
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第1楽章 第3話~VS中策荒表~

 そして間もなく悲鳴の元に到着した。

 すでに先輩方や同年代はほぼ壊滅状態。死屍累々とはこういう事か……。痛みで気絶し床に倒れこんでいる両学科の生徒。まだ戦闘不能していない両学科の生徒も楽器は傷つき、肩で息をしなければならないほど疲弊している。そんな中、僕同様に無傷で疲弊もなく仁王立ちしている女の子が一人。


「あ? 援軍かいな?」


 関西弁……この子で間違いなさそうだ。容姿は女の子にしてはやや大きめの背だ。僕の身長が170㎝に対して少し小さいくらいだからおよそ165㎝くらいか……。細身、というよりはスレンダーといった方が正しい表現でモデルのような体系だ。髪は肩までかかるくらいの長さ。そして……


「かわいい……」

「あ? なんか言ったか?」

「あ、いや! なんでも……!」


 凄く可愛らしい顔立ちで、クラシック学科三大美女にも引けを取らないほどだ。これはジャズ学科三大美女の一人かとそう思わせるほどの顔立ちだ。


「えーっと……お名前は?」

「ワイの名前は中策荒表(なかさくこずえ)や! ジャズ学科のアルトサックスや!」


 スカートなのに腕組仁王立ちか。少々ガサツっぽい性格そうかな? それに声も大きい。黙っていると京美人のようだが話すと大阪の雰囲気全開だ。


「僕はクラシック学科でトランペット専攻の火鳥無技(ひどりむぎ)です」

「おお! お前が火鳥か! 噂は聞いとるで!」

「うわさ?」

「一年にしてクラシック学科第1位で全国大会3位の実力」

「あ、ありがとう」


 初対面のはずなのに僕の事をそこまで知っているなんて、ちょっとした有名人の気分で素直にうれしい。


「にも関わらず、誰もあんたからアドバイスを貰おうとせず、誰もあんたの演奏を聴きに行こうともしない珍しい奴。なんやったけ? あんた確か精密機械のような無機質な演奏しか出来へんのやろ?」

「うう……他の学科でもそんな評価を……」

「ワイと逆やな」

「逆?」

「ワイ、表現力はあるんやけど規則正しく丁寧な吹き方をしない破天荒演奏しか出来ないって評価をもらってるんや」


 僕とは逆、か。いうなれば僕は技術重視で、中策さんは表現重視ってことか。


「だから興味持っとんたんや」

「それはそれは……どうもありがとう。実は僕も興味が湧いていたんだよ」

「ほう? ワイに興味が? なんや? 告白は戦いが終わった後でな!」

「ち、違うよ!」

「じゃあなんや?」


 中策さんは右口角を上にあげて笑みを浮かべる。そう、僕は興味が湧いていたんだ。


「先輩方三人を一人で撃退する実力に僕とは真逆の演奏方法のジャズ学科のエース」

「おう」

「僕とどっちが上手い……いや強いかってね」

「……へっ! いいね! 燃えるやんか!」


 中策さんと僕は一歩前に出て楽器を構える。


「クラシック学科の皆さん! この子は僕が相手をします! 他の敵はよろしくお願いしますよ!」

「ジャズ学科の皆さんよ! こいつはワイの獲物や! 誰も手ぇ出さんといてや! 他の雑魚は任せたで!」

『すげえ。クラシック学科のエース対ジャズ学科のエースかよ』

『どっちの学科が上か決まるのね……』

『俺達も負けてられないぜ!』

『ええ! 彼女だけでジャズ学科が機能していると思われてたまるもんですか!』

『クラシック学科には俺がいるってこと思い知らせてやるぜ!』


 僕だけでなく周りの人達の士気も高い。これは……荒れるぞ。


「さあ! やろうや! 楽しい演奏会にしようや!」

「いざ勝負!」


 どちらが上か、どちらの学科が優れているかを決めるべくクラシック学科VSジャズ学科最後の戦いが始まった。






「いくで相棒!」

《暴れるでぇ!》


 中策さんが憑依を開始するべくチューニングの音を出す。お……?


「これはなかなか……」


 そのたった一音だけで彼女がどれほどの腕かわかる。これはなかなかお目にかかれない実力者だ。普通の人の音と違って音色の透き通り方、飛び方、たたずまい、顔つき、全てに至る要素が飛びぬけている。ジャズ学科のエースか……言うだけあるが正直想像以上だ。間違いなく全国トップクラス。そして憑依が終わりブラティーノの姿が……


「ぶっ!」

「あ? あんたも鼻血出すんかい。ワイと戦う男はみんなおんなじリアクションするな!」

「いやいやいや! それは中策さんのブラティーノに問題があるよ!?」


 中策さんのブラティーノの容姿は着物を着ているのだが大分着崩していおり、右肩は袖すら通しておらず完全にはだけており、胸にはサラシを巻いている。足元はチャイナドレスのように右足が露わになっていて大変露出の激しい格好となっている。さっき僕が受けた印象である京美人と大阪の雰囲気が合体したような容姿だ。ちなみに武器はよれた釘が大量に突き刺さった釘バットだ。


「うう……いきなりやられたよ……」


 少々出鼻をくじかれたが僕も憑依を開始するべくチューニングの音を出す。


「お! なかなかええ音出すやん!」


 僕の音を聴いて中策さんも僕と同じリアクションをする。どうやら僕が噂通りの実力を秘めていると感じ取ったのかな?


「ふーむ。噂通りの音色やな。音の通りは良いんやけど音質が無機質な音やな。なんか打ち込みソフトのトランペットみたいな印象や」

「…………」


 さすがというべきか。たった一音聴いただけでそこまで見抜くか。きっとジャズを専攻しているから僕らクラシック学科以上に色々なアドリブ、ソリストを聴いているだろうし、音色に敏感なのだろう。さてと……点数の方はどうだろうか? 技術力は僕並にあるとして問題は音楽知識の点数だ。僕ほど低いという事はないだろうから苦戦は免れないだろう。望みを言うならなるべく低く、点数差があまりない事だけど、そんなにうまい話が……



火鳥無技         VS 中策荒表       

音    42点        音    48点

技   510点        技   500点

状   100%        状   100%

楽 トランペット        楽 A・サックス

曲  ―――――        曲  ――――――



「………………」

「………………」


 お互いがお互いの点数を見て何とも言えない哀しいものを見るような目をする。良かった。この子も点数が低い子で……


「なんやそのゴミみたいな点数……」

「人の事言えた点数!?」


 技術力はほぼ同じだと思っていたけどやはりだった。でも僅かだが僕の方が上みたいだ。音楽知識は向こうが上だがこの点数差なら大丈夫だろう。


「テクニックでごり押させてもらうよ」


 曲は何にしようか……。速い指回しは当然の事だ。う~ん……ここは相手が手練れだし、僕が一番得意とする曲で行こうか。となると熊蜂の飛行か。


「テクニックでごり押す? いい度胸やな。ならワイもテクニックでごり押させてもらうで!」


 そう言い放つと中策さんはポケットから音楽プレイヤーを取り出しイヤホンを右耳に装着する。


「……僕との戦闘中に音楽を聴くなんて……余裕って事?」


 その行動を見て僕はムッとする。僕の力を見くびっているんだろうか? 舐められていると思い腹が立つ。


「いや、あんたが相当な手練れと見込んで本気を出そうとしとるんや」

「?? 本気を出すのに音楽を聴くの?」

「せや。厳密にいうと音楽やなくてバック伴奏や」

「!」

「聴かせたるわ! テイク・ファイブ中策バージョンを!」


 中策さんは足でリズムを取りながら演奏を開始する。その演奏は今まで聴いたことのない曲調と動きだ。それもそのはずだ。だって中策さんのこの演奏は……


「アドリブか……! まずい!」



火鳥無技        VS  中策荒表       

音    42点        音    48点

技   510点        技   500点

状   100%        状   100%

楽 トランペット        楽  A・サックス

曲     運命        曲  テイク・ファイブ



 僕は曲選を熊蜂の飛行から運命に変える。そして手にしたマチェットナイフを構え、中策さんのブラティーノに突っ込ませた。

 強引かもしれないがそれでいい! アドリブって事は予測不能な動きをされる可能性が高いし、そうなる前に一気に終わらせる!


「はっはぁ! 突進攻撃とはワイも舐められたもんやな!」


 しかしすでに遅かった。中策さんはなめらかなに僕の動きに合わせるように動き、手にした釘バットでファイアバードの顔面を殴打する。


《痛いよぉ!!》

「痛ったぁ!!」


 完璧なカウンターとなってしまった。直後、鼻頭に硬く尖ったものが叩きつけられる痛みがして目の前がチカチカする。突進の勢いを利用されてカウンターで釘バットを叩きつけられたんだ。いくら中策さんの音楽知識の点数が低いとはいえこれは効く……! これは僕の作戦ミス……いや、僕の選曲ミスだった。熊蜂の飛行のままフェイントを入れ、中策さんをかく乱しながら手数重視で攻撃するべきだった……! 中策さんもCCB戦は不慣れなんだから、そっちの方が成功率が高かったはず。CCB戦はただの演奏会じゃない。様々な状況判断や曲選、戦法が問われる戦いだという事を今改めて思い知った。そして点数が改めて表示される。



火鳥無技         VS 中策荒表      

音    42点        音    48点

技   510点        技   500点

状    88%        状   100%

楽 トランペット        楽  A・サックス

曲  熊蜂の飛行        曲  テイク・ファイブ



「くそっ! 楽器が凹んだ……!」


 そして楽器を見てみるとベルのところが凹んでいた。ファイヤーバードは昔から使っていて一度も凹ませたことがなかったのが自慢だったのだが、まさかこんな形で記念すべき初凹みを作ってしまうとは……! これは精神的に来る……。いや、この前虎獣先生に凹まされたから初めてじゃないか……


「ふう。しっかし大したスピードやな! ワイより速く動ける奴なんてジャズ学科にはおらんかったで!」


 中策さんは額に浮いた汗をぬぐいながら笑顔で再び楽器を構える。くっ……! やっぱり僕の作戦ミスだった。


「ほな次はこっちからいくでぇ!!」


 中策さんは演奏を開始。僕にブラティーノを突っ込ませてくる。速い! この曲調、一気に仕掛けてきたな。さっきの僕と同じ戦法じゃないか。きっと僕が動揺していていると思って畳みかけようとしているな? ふふん! 残念、僕は冷静だ。このまま中策さんに仕返しのカウンターを見舞ってやる! 僕は突っ込んでくる中策さんにカウンターを合わせるべくリズム・テンポ・呼吸を合わせ前に出る。


「はっ! 真面目でケンカもしたことのなさそうなクラシック学科の連中は、この手のフェイントに面白いように引っかかる!」

「っ!?」


 中策さんのブラティーノの動きが僕の攻撃が当たる直前でピタリと止まり、僕の繰りだした攻撃はむなしく空を斬った。演奏をやめたのか!? いや、アドリブ特有の『間』を入れる奏法だ。僕の動きが読まれていた!?


「くらえや!」


 飛び出て体が流れている僕のブラティーノに中策さんは再び釘バットを振り下ろす。ガードするか? いや、中途半端にガードをしても相手が調子に乗るだけだ! 相打ちでもいい! 相手に攻撃を当ててこの流れを一旦止めなければ! 僕はファイヤーバードの勢いを緩めずに中策さんのブラティーノに突っ込ませるべく、音量をffにしファイヤーバードの体をジャイロ回転させる。


「ぐお!?」

《痛いでぇ!》

「うわあ!」

《目が……回る……!》


 技術力が高いことが幸いして突進スピードとジャイロ回転の速度が中策さんの想定よりも強力なものとなり、釘バットの振り下ろしをはじき返すことに成功した。そのまま中策さんのブラティーノの腹部にマチェットで斬り付けることができ、多少僕にもダメージが入ったがおそらく中策さんの方がダメージが大きい。そして点数が再表示される。



火鳥無技         VS 中策荒表       

音    42点        音    48点

技   510点        技   500点

状    84%        状    87%

楽 トランペット        楽 A・サックス

曲  熊蜂の飛行        曲  テイク・ファイブ



 よし! これで状態はほぼ同じになった!


「んの野郎……! よくもワイの相棒を傷つけてくれたな……!」


 中策さんは自分の楽器にできた擦り傷を優しくさすりながら僕を睨みつけてくる。うんうん。擦り傷が出来た時って治るわけないのにさすったり、こすったりしたくなるよね。しかもそれが自分の大切な相棒ときたら通常以上に優しく丁寧に撫でてあげたくなる。現に僕も凹んだところを撫でてあげているから。だがこれでおあいこだ。状態もお互いほぼ同じになったし、ふりだしに戻った感じだ。


「行くぞ! 中策さん!」

「おう! かかってこいや!」 


 僕は先程の攻撃を反省し、今度は慎重に、左右にフェイントを織り交ぜながらファイヤーバードを突っ込ませる。これで先程のようには行かないはず!


「おお! やっぱり速いな! でも……」

「!?」


 だがファイヤーバードの動きが読まれていた。丁度右から左にフェイントを行おうとした瞬間の動きに合わされ攻撃をもらってしまう。バカな!? 何でこうも完璧にタイミングを合わされる!?


「くそっ!」


 今度は窓枠に足をかけ天井にジャンプ。素早く体を回転させ、天井を蹴って地面に急着地、そして再び反対の壁を蹴って天井にジャンプ……といった左右だけでなく上下にも動きを入れて接近する。これならどうだ!?


「おお速い速い! でもイケてへんなぁ!」

「!?」


 しかしこれも動きを読まれカウンターを取られてしまう。


「なんで……! なんで届かないんだ……!」


 そんな僕の言葉をきいて中策さんは言葉を発する。


「確かにあんたは上手い。それも飛び切り上手い。技術力に関していえば高校トップクラスと言っていい。クラシック学科の連中はきっとあんたの音を聴いて大層凄いやつやと思って、誰もあんたを注意したりするやつもおらんやろ? 基礎力も高いし、教本も沢山さらったような音しとる。けどそれがイケてへんのや」

「……?」


 僕は中策さんの言葉が気になる。イケてない? なんでだ? 何回も音階を繰り返して、メトロノームに一切ずれないようにタンギング練習をして、リップスラーも欠かさずやって、教本もさらって、ミスをしないように丁寧に吹いていて……一体何がイケてないというんだ?


「大方テンポ通りにさらって毎日毎日同じことの繰り返ししかしてへんのやろ? 決められたテンポでしか吹かず、特に考えながら吹くこともせず、周りの人間と音楽を語ったり一緒に練習することもせず、まるでオルゴールのように……いや、打ち込みソフトのようにただそこにある音を楽器で「鳴らす」だけの演奏しかしてへんのやろ!?」

「う……」

「毎日基礎を繰り返すのを悪いとはいわへん。けどな!」


 中策さんは大きく息を吸ってはっきりと僕に向かって告げる。


「そんなんやからあんたは「機械的無機質演奏」と呼ばれるんや! いくら動きが速くてもワイくらいのもんから見たら単調で一定のリズムでしか動かんから動きを合わせるのは簡単や!」

「!!!」


 絶句した。なんか反論してやろうかと思っていたが言葉が出てこない。脳が機能を停止したと言っていいほど何も考えられない。心音は速くなり、汗が噴き出てくる。完全に見抜かれた。それも僕の欠点を完璧に理解した上での言葉だ。いつものなんとなく抽象的に注意されている「機械的演奏」の本当の理由はこれだったのか……


「さてと! それじゃあ準備運動はこれくらいにしといてそろそろ本気でいくで! アドリブの力見せてやるわ!」


 中策さんは首にかかっているストラップを軽く緩め再び締める。さっきまでのは準備運動だったのか……本気とは一体どんな攻撃をしてくるんだ?


「いくでぇ!」


 スピードはあるがなんの変哲もない突進攻撃を仕掛けてきた。ん? また何か奇襲かな? いや、曲調ははっきりと力強いから本当にただの突進攻撃だ。だったらカウンターを取るまで! 僕はマチェットナイフを振りかぶってタイミングを合わせる。1・2・3・4……ここだ!


「そりゃ!」


 タイミングは完璧……


「!?」


 しかしマチェットナイフは空を斬る。ばかな!?


「曲調が……変わった……!」


 たった今まではっきりと力強い曲調だったのにも関わらず次の瞬間曲調が一変。素早い指回しとタンギングをメインとした曲調にへと変化した。それに伴い中策さんのブラティーノはマチェットナイフを躱すようにファイヤーバードの頭上を一回転しながらジャンプし背後に着地。そのままE♭から始まる半音階を一オクターブ上がり再び戻るように吹く。その動きに連動して中策さんのブラティーノはその場で回転しファイヤーバードの背中に釘バットを叩きこんでくる。


「まずい!」


 僕は直撃する寸前で、ヒットするであろう箇所にマチェットナイフを回しこんでガードし、自ら前に飛んでダメージを軽減させる。



火鳥無技         VS 中策荒表      

音    42点        音    48点

技   510点        技   500点

状    80%        状    87%

楽 トランペット        楽 A・サックス

曲  熊蜂の飛行       曲  テイク・ファイブ



 咄嗟の判断が功を奏して対してダメージを受けることなくやり過ごせた。けど……


「これがアドリブの力か……!」


 次の瞬間には曲調が変わるのは厄介だ。かといって棒立ちでいるとそのままの曲調で攻撃してくる。パンチかと思えばキック、キックかと思えばパンチ、突進かと思えばジャンプ、攻撃かと思えば回避、全く予測不能だ。これは……中策さんは……


「CCB向きの人だ……!」


 中策さんはCCB学科に所属すればきっと猛威を振るうだろう。虎獣先生が言っていたけど、基本的にCCB戦で演奏される曲はクラシックがメインらしく、中策さんのようなジャズを演奏する人は全体の一割にも満たないらしい。ただでさえ普通の技術力の人がジャズを演奏するだけで大分相手は困惑するらしいのに、日本トップクラスの中策さんが演奏するとなるとその脅威は……今身をもって味わっている最中だけど絶大だ。


「はあ……」


 そんな中、演奏を中断して中策さんはため息をつく。


「一体どうしたの? 中策さん?」

「ちょっとがっかりしたんや」

「え? それは一体……?」

「実のところワイは来年度にCCB学科に行こうか迷ってたんや。んで今回あんたと戦ってみて考えようと思って楽しみにしとったんやけど……こんなもんかいな」


 中策さんのその言葉を聞き、心臓を握られたような感情が込み上げてくる。


「楽しい戦いも無ければ、この戦いで得るものもなさそうやし、正直期待外れや。来年度もこのままジャズ学科に在籍しようか」


 期待外れ。この言葉が深く、重く僕の体に圧し掛かってくる。今まで音楽をやっている上で自慢じゃないが期待外れなんて言葉一回も言われたことがなかったから、こんなにも精神的に来る言葉だとは思わなかった。それに今のセリフ……中策さんはCCB学科に行こうか迷っていたみたいだけど、僕のせいで行かない方向で考えが決まりかけているみたいだ。けどそれ以上に僕が思っていることは中策さんの期待に応えられなかったという事だ。ならば今僕がやるべき事はただ一つ。


「……だ……よ……」

「ん? なんか言ったか?」

「そう思うのはまだだよ。まだ戦いは終わっていない」


 期待してくれた中策さんのために力の限り戦うのみ! 再び楽器を構える僕を見て中策さんは一瞬キョトンとした顔をしたが再び目を輝かせながら自らの楽器を構える。


「はっ! 良いね! 前言撤回や! 確かにさっきまで戦っとったクラシック学科の連中とは違うわ! ワイと戦った奴は途中で戦意喪失しておったけど、あんたはまだ勝負をあきらめておらん! いくでぇ!」


 とは言ったものの……苦戦しているのはこっちだ。一体どうしたら良いだろうか……? 相手に合わせてジャズの曲を吹くか? 一応レパートリーがないわけでもないが、付け焼刃のジャズでは本職の中策さんにはとても敵わないだろう。だとしたらやはり中策さんに欠陥を指摘されたけど、僕の得意分野で戦うしかない。


「いくでぇ!」


 先に動いてきたのは中策さんだ。先程同様突っ込んでくる。


「くっ!!」


 ここでマチェットナイフを振ってもさっきと同じく背後に回られて……ん?


「くらえや!」


 さっきと同じってことは逆にそれを利用できるんじゃないか? いや、そんなに単純なものか? また裏をかいて……とか?


「え~い! 南無三!!」


 僕はさっきと同じ要領でマチェットナイフを振る。そして先程同様に中策さんが曲調を変えマチェットナイフが当たるギリギリのところでジャンプ、空中で一回転して僕の背後に回り込む。


「ここだぁ!!」


 マチェットナイフの斬撃攻撃をタイミング合わせて中策さんのブラティーノの着地地点に置いておく。結果は……



火鳥無技       VS 中策荒表       

音    42点      音    48点

技   510点      技   500点

状    80%      状    76%

楽 トランペット      楽 A・サックス

曲  熊蜂の飛行     曲  テイク・ファイブ



「やったぁ!」

「ぐおおお!?」


 結果は大成功だった。防御態勢が整う前に完璧に入ったので奇襲効果も相まってかなりの大ダメージを与えることに成功した。


「やってくれるやん……!」


 中策さんは僕と一旦距離を置いて体制を整え楽器を構えなおす。でも僕は一つの疑問で頭がいっぱいだった。今の中策さんの一連の動き……音こそ違ったがタイミング・ジャンプの距離・高さ・着地位置、全てが一緒だったような……気のせいか?


「試してみるか……」


 今度は僕から仕掛ける。マチェットナイフを頭上から縦に振り下ろす。


「へっ! そんな攻撃当たるかい!」


 今度は横払い。


「おっと! 危ない危ない!」


 次は……掠る。


「うおっち! かすったか!」

「………………」


 確信に変わった。中策さんの動きは急に変化するけど、その動きはどれも一定の速さに距離、タイミングと決まっている。そして今わかったことがもう一つ。


「中策さん? ひとつ聞きたいことがあるんだけど」

「なんや戦闘中に? いいやろ! 言ってみ!」

「アドリブ……好きなんですよね?」

「おう! 大好きや!」

「一体どれくらいの曲を聴いているんですか?」

「何曲も聴いてるで! ま、でも殆どキャノンボール・アダレイさんが演奏しているやつやけどな!」

「……他のプレイヤーの奏法は聴かないんですか?」

「ああ! ワイの尊敬しているのはキャノンボールさんやからな! キャノンボールさん中心に聴くのは当たり前やろ!」

「………………そっか」


 彼女の動きの理由はこれか……どおりで……


「ほないくで!」


 中策さんは演奏を開始。左右にフェイントを入れながら攻めてくる。けど……


「あと3歩……」


 1、2、3! 僕の読み通りそこで曲調が変わる。一瞬、間を入れた後、僕の頭上を飛び越えようとジャンプする。けど!


「痛ったぁ!」


 僕の頭上を丁度通り過ぎるタイミングで先に置いておいた右拳を叩きこむ。どんぴしゃり! 地面に叩きつけられた中策さんは素早く起き上がりそのまま突っ込んでくる。その動きは……


「くっ!」


 今の動きは予想外だった。というより初めて聴いたフレーズだ。まだ「引き出し」があったとは……


「でも、もう観て聴かせてもらったよ……」

「くそっ! なんでや! さっきまで当たっとったのに! さっきまでこっちが押しとったのに! なんで急にこっちの動きが読まれ始めたんや!?」


 中策さんは驚きと困惑の顔を浮かべながら僕を睨みつける。何故かって? だったら教えてあげよう。……きっとこの子は僕と同じ状況に置かれているみたいだから。


「中策さんさっき言ったよね? キャノンボールさんのアドリブばっかり聴いているって」

「ああ……言ったけどなんなん?」

「多少音は違うけどきっとアドリブもその人を参考に……真似て吹いているんでしょう?」

「ああ! ワイはキャノンボールさんの演奏を最も尊敬しているからな!」

「それが問題なんだよ」

「あ?」

「確かに君は上手いよ。それもかなりね。技術力にアドリブ奏法もここら辺の高校レベルでは頭一つ以上。ジャズ学科の人達もきっとあなたの音を聴いて凄い人と思って誰もあなたを注意する人なんていないんでしょう? 表現力も高いしアドリブも沢山さらっただろうスムーズさ。けどそれが問題なんですよ」

「……?」


 中策さんは疑問符を浮かべながらも僕の次の言葉は? という表情をしながらこちらの顔を凝視する。


「大方、毎日CDのカラオケを聴きながら、キャノンボールさんの動きを真似ながら毎日毎日同じようなアドリブを繰り返していたんでしょう? キャノンボールさんのフレーズっぽく吹き、他の奏者のフレーズやジャズ以外の曲、奏者の奏法を聴くこともなく、周りの人間とフレージングや奏法を語ったり一緒に練習することもせず、まるでレコード盤の演奏のように……いや、コピーバンドのように『キャノンボールさんのような』アドリブしかしてないんでしょ!?」

「うう……!」

「好きな奏者の真似をするのは決して悪くないし、上達への第一歩だ。だからそれを悪いとはいわない。けどね!」


 僕は大きく息を吸ってはっきりと中策さんに向かって告げる。


「表現力があるのはキャノンボールさんの演奏を真似ているから! でも何回も繰り返しているうちに頭にある『フレーズの引き出し』がなくなって同じ動きしかできなくなる! いくら動きが速くてもプロのフレーズを真似ても、急に行動を変えることができても、結局は同じフレーズしかできないからブラティーノは一定の速さ・距離・タイミングでしか動かないから動きを合わせるのは簡単さ!」

「!!!」

「本当にアドリブをやるんだったら他の奏者の演奏や違うジャンルの曲や奏法を学ぶべきだ!」

「………………」


 中策さんは絶句していた。なんか反論してやろうかと思っていたが言葉が出てこないのだろう。いや、脳が機能停止した言っていいほど何も考えられていないのだろう。僕が欠点を完璧についたからだ。というのもこれは先程中策さんに言われた時の僕の心情なのだが、彼女も僕と全く同じ反応を……


「それ……さっきワイが言ったセリフと似てる」


 ちょっと違ったようだ。


「ぐぬぬ……! でもあんたの言っていることは正しい……!」

「それともう一ついいかな?」


 僕は歯ぎしりしながら睨めつけてくる中策さんに向かって言葉を続けた。


「君にお礼が言いたい。ありがとう」

「は?」


 表情が一変し、こいつ頭がどうかしたのかと言わんばかりの表情になる。いや、だって……


「クラシック学科では誰も言ってくれなかった指摘をしてくれたおかげで僕は上達できそうだからお礼を言いたくてね。本当にありがとう」

「………………」


 中策さんに会わなければ……CCBに出会わなければ……いや、その両方が重ならなければ僕は進歩の兆しが見られなかったかもしれないし、一生機械的無機質演奏が治らなっかったかもしれない。だからこそお礼が言いたくなったというわけだ。


「…………ならワイも言わせてもらうで」

「…………?」


 中策さんは少しもじもじと体をくねらせながら言葉を続ける。


「……ワイの方こそ指摘してくれて……ありがとよ……」


 凄く小声で思わず聞き返したくなるほど本当に……本当に小さい声だった。でもその言葉は何回も僕の頭の中でリピートし続け、僕の中で何ともむず痒い感覚になっていった。正直言うと『え? なんか言った?』と聞き返したいところだったがそれは野暮だろう。ここは恥ずかしさをしのんで言った一回だけで十分だと自分に言い聞かせよう。


「さてそれじゃあ……」

「うん」


 中策さんは首を一回転ぐるりと回し軽くストレッチをし、僕もそれにつられるようにバルブの動き具合の確認と軽いバジングをする。これが意味するもの、それはすなわち……


「お互い欠点がある未熟者同士の演奏勝負だけど……」

「おう! この勝負決着つけようや!」


 僕と中策さんは最後の決着をつけるべく戦いを……


「あのう……」

「あ!? なんやねん!? なんか用かいな!?」


 いざ決戦! というところで不意に背後から女の子の声がする。この鈴のような可愛らしい、少し子供っぽさが残っている声は……


「角貝さん……?」


 声の主はクラスメイトの角貝さんだ。あれ……?


「角貝さん……? 確か本部待機だったはずじゃ……?」


 CCB戦開始前の作戦会議では虎獣先生に本部待機を言い渡されていたはずなのに?


「それはね火鳥君。クラシック学科が私達4人以外全滅しちゃったからよ」

「虎獣学科長から出撃命令が出た……」


 気が付けばその後ろにはブラティーノを抱えた笛木先輩と黒木先輩も立っていた。


「ちっ! 外野がワラワラと!」


 すっかり蚊帳の外の中策さんが地団駄を踏むにながらこちらを怒鳴り散らす。


「火鳥君!? こいつら誰や!?」

「ええっと……こちらのホルンの人が角貝弱優さん。学科4位の女性で僕らと同じ1年生だよ」

「よろしくお願いします!」

「そしてこちらのクラリネットの方が黒木刹那先輩。こちらのフルートの方が笛木美完先輩。順に学科3位と2位で、このお2人は2年生です」

「よろしくお願いします!」

「よろしくね」

「よろしく……」

「あ、ご丁寧にどうも。ワイはジャズ学科の中策荒表……ってちゃうわ!」


 おお! ノリツッコミ!


「ワイと火鳥君の戦いに水を差しおってからに!」


 どうやら中策さんは僕との一騎打ちに水を差されてご立腹のようだ。ま、そういう僕もなんだか3人の顔を見て気が抜けてしまって戦意喪失してしまった。


「ええい! あったまきたでぇ!」


 僕とは逆に戦意が先程よりも増している中策さんは楽器を構える。


「あんたら勝負や!」


 怒りの矛先をとにかく3人にぶつけたい中策さんのボルテージは最高潮のようで、楽器を構えていっぺんに相手をするようだ。


「誰が行く……?」

「う~ん……どうしよっか?」

「わ、私が行きます!」

「ええい! ワイはおっぱいでかい女は嫌いや!」

「ええ……」


 中策さんはまるで親の仇のように角貝さんの胸を睨みつける。まぁその……僕が見た感じ彼女は成長が見られない胸をしている。サイズは……Aくらいかな……?


「……火鳥ぃ……あんた目は口ほどにものを言うってことわざ知っとるかぁ……?」

「………………」

「あんたは後で殺す……」

「お三方助けてぇ!」


 僕は急いで中策さんから距離を置き、3人にその場を譲る。


『じゃあ私か美完ね』

『私はC……』

『……私は……Bよ……ちなみに弱優ちゃんは?』

『ええっと私は……』

『………………………』

『私と弱優は残りのジャズ学科の人と戦う……』

『が、頑張ります!』


 黒木先輩は目の光を失いながら前に出る。僕は必死に後ずさりしていたので3人の会話は聞こえなかったが、話の流れ的に3人の中で一番胸が小さいのは黒木先輩か……


「……火鳥君……あなた目は口ほどにものを言うってことわざ知ってるぅ……?」

「………………」

「あなたは後で殺す……」

「もう誰でもいいから助けてぇ!」


 中策さんと黒木先輩はお互いに楽器を構えて戦闘態勢になる。


「中策さん……って言ったっけ?」

「はい」

「勝った方が火鳥君を殺すってことでいいわよね?」

「ええですよ」

「もう今すぐ誰か助けてぇえええ!!」


 2人は憑依を開始。ブラティーノに霊が憑依して起き上がる。黒木先輩のブラティーノは漆黒の甲冑に重々しい盾。それに身の丈3倍程のランスを持っており、滅茶苦茶強そうだ。でも……


「黒木先輩……あんた確かクラシック学科3位って言いはりましたよね?」

「ええ」

「ワイはジャズ学科第1位なんですわ」

「それは凄いわね」

「火鳥君が学科1位って聞きましたけど、その1位の彼がワイに大接戦してたんですわ。なのに第3位の黒木先輩が勝てるとは思えんのですが……?」

「そう。私も舐められたものね」


 黒木先輩は特に焦りも見せずに冷静だ。とは言え僕も中策さんと同じ意見で、第1位の僕ですら接戦、いや苦戦を強いられていたのに第3位の黒木先輩があのアドリブに対抗できるとは失礼かもしれないが思えない。


「確かに私の順位は火鳥君よりも、美完よりも下の第3位。でもね?」


 二人の点数が表示される。


「それは技術力の話ね?」



黒木刹那        VS   中策荒表          

音    281点        音     48点  

技    410点        技    500点

状    100%        状     68%

楽  クラリネット        楽  A・サックス

曲  ヴェニスの謝肉祭      曲  テイク・ファイブ



「「…………は…………??」」


 表示された黒木先輩の点数を見て愕然とする僕と中策さん。ごめんちょっとよくわからない。


「黒木先輩? その点数はなんですか?」

「何って……見ての通りだけど?」


 特に自慢することもなく淡々と話す黒木先輩。だがそれが逆に妙な威圧感を放っている。


「私の家は両親はこういうことに結構うるさくてね。楽器の演奏技術だけじゃなくて音楽知識もなきゃ良い演奏ができないと言われて勉強させられたし、当然一般学問も出来なきゃ怒られるし……。姉妹揃って文武両道になるよう教育されているのよね」

「な、成程……」


 それにしてもこの点数はちょっと異常じゃない? なんだか存在自体がCCBをするためにいるような感じなんだけど……?


「だ、誰か共闘して……!」


 黒木先輩の点数に驚愕し、一人では分が悪すぎると判断した中策さんは残っているジャズ学科の人に援軍を求めるが……



笛木美完             VS     坂本圭太          

音    301点               音     98点  

技    450点               技    130点

状    100%               状      0%

楽    フルート               楽  T・サックス

曲 無伴奏フルートのための12のファンタジー   曲  ――――――




「何……? 私と戦いたいの……?」

「中策……! こいつはダメだ……! 早く逃げ……!」

「ほ、他の人は! だ、誰かワイに加勢を……!」



角貝弱優         VS      吉本亜紀         

音    272点            音     88点  

技    390点            技    110点

状    100%            状      0%

楽     ホルン            楽  トロンボーン

曲  モーツァルト ホルン協奏曲第一番  曲  ――――――



「ええっと……これであなただけになりましたよ中策さん?」

「そ、そんな馬鹿な!?」


 気が付けばジャズ学科は残り中策さんだけとなっていた。うわぁ……これは何というか……


「中策さん……」

「ひ、火鳥君!? ワ、ワイと決着つけようや!? なあ!?」

「頑張ってください……」

「ひ、火鳥ぃ! 目をそらすなぁ!」


 虎獣先生が開始前に言っていた『お前ら3人が出たら他の者が何もできなくなる』ってこういう事だったのか……。


「畜生ぉおおお!! ワイは最後まで諦めないでぇえええええええ!!!」


 中策さんは3人に攻撃を仕掛ける。その攻撃は3人のブラティーノの顔面や胸部など急所となりそうな場所を正確にとらえてヒットした。が……



黒木刹那   & 角貝弱優  & 笛木美完   VS 中策荒表 

音  281点  音  272点 音  301点   音     48点

技  410点  技  390点 技  450点   技    500点

状   99%  状   99% 状   99%   状     87%

楽 クラリネット 楽   ホルン 楽  フルート   楽  A・サックス

曲 ――――   曲 ―――― 曲  ――――     曲  テイクファイブ



「今何かした……?」

「痛くもかゆくもないわね」

「速いですね中策さん!」


 微塵も効いている感じがしない。そりゃ平均の2倍以上……いや3倍近い音楽知識を誇っているんだから当たり前か。


「それじゃ……」

「バイバイ!」

「終わりです!」

「ひぎゃあああああああああ!!」



黒木刹那   &  角貝弱優    & 笛木美完 VS 中策荒表 

音  281点  音  272点  音  301点   音   48点

技  410点  技  390点  技  450点   技  500点

状   99%  状   99%  状   99%   状    0%

楽 クラリネット 楽    ホルン 楽  フルート   楽 A・サックス

曲   運命   曲   運命   曲  運命     曲  ―――――



 こうしてクラシック学科VSジャズ学科の模擬CCB戦は……クラシック学科の勝利で幕を閉じた。


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