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CCB~11人の異端児が奏でる協奏曲~  作者: ニコニコ大元帥
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第1楽章 第11話~異端児達の実力~ 

『これより奏楽学園対私立柏習高校のCCB戦を開戦します』

「「「いよっしゃあああああ!!!」」」


 アナウンスが流れたと同時にクラスメイト達が叫ぶ。ついに始まった!


 今回行われるCCB戦について細かく説明しよう。


 今回のCCB戦はフラッグ戦形式だ。フラッグ戦形式とは『互いのチームから一人フラッグ役を決め、そのフラッグ役の人物を撃破した学校の勝ち』というものだ。だからどんなに人が残っていてもフラッグ役の人がやられたら負けだし、どんなに人が減っていてもフラッグ役の人が残っていれば負けじゃないから僕らみたいな人数の少ない学校にはありがたい。逆に敵全員を倒さなければならない殲滅戦ルールというものもあるがそっちでなくてよかった。

 次にフィールドだけど、今回はこの学園全体すべてが戦場だ。どの学科棟、体育館、校庭と、どこで戦っても良い。勿論奇襲の為に隠れるもよし、校庭のど真ん中で決闘をするもよしだ。

 それと今回のこの戦いはネット中継と入学式が始まるまで学園に設置されたモニターで放送される。スポンサーがどうとか、新入生へのアピール、全国のCCBを行う学校へのアピールなど様々な目論見がある。


「みんな~! オイラが作ったこれをかけて~!」


 技工君が一人一人に何かを渡す。


「片目グラス型のディスプレイ式無線機だよ~。互いの連絡は勿論の事、味方がどこにいるかとか、楽譜を映し出したりとか色々できるよ~」

『すげぇ!』

『カッコいい!』


 随分ハイテクなものを渡されたけど何とも高そうなものだ。壊したら大変だ。僕は慎重に頭に装着して電源を入れる。すると右目のディスプレイには「技工エンタープライズ」のマークが映し出され、機械が起動した。


「それじゃ行ってこいお前ら!」

「「「いよっしゃあ!!」」」


 全員片目グラスを装着し終えたのを確認した棒導君が声を張る。それと同時に楽器とブラティーノを抱え込んだクラス待機の5人以外の生徒が教室を勢いよく飛び出しいき、僕もみんなに遅れまいと駆け足で廊下を駆け出す。


「相手のスタート位置は体育館! 体育館からこのCCB学科棟へ侵入するには昇降口の一か所しかない!」

「ええっと……相手の作戦はこっちがCCB戦が初めてだから慎重になると予想して、数も少ないし教室で籠城戦をすると思っているから総攻撃を仕掛けてくるから……」

「早い話昇降口、またはその周辺の外、校庭って事やな!」


 僕らの教室から体育館までは距離にして400m程。お互い全力で走ったとしてその中間200m付近で敵と出会うはず。だとしたら荒表の言った通り昇降口と校庭を使った戦いになるだろう。


『「「………………!!」」』

「聞こえたみんな!? 敵の声だ!」

「ああ! 聞こえたで! 思ったより敵さん足が遅いな!」

「初めて来る学校だからな。こっちが速くて当然か。ってことは決戦場所は校庭で決まりだな」


 そして僕らは素早く靴に履き替え校庭へと飛び出す。すると前方には楽器とブラティーノを抱えた50人ほどの柏習高校の姿があった。やっぱり全軍突撃か。


『おい見ろ!? あいつら、全力でこっちに突っ込んでくるぞ!?』

『予定と違う! あいつらは数が少ないから籠城戦をするはずだったんじゃ!?』

『くそ! やるっきゃないって事か!』

『想定の裏でくるとは中々やるわね! 相当できる人達みたいね!』


 予想に反して僕らが全軍総突撃をしてきた事にかなり混乱するかと思ったけどあまり動揺が見られない。二軍とは言えやはり全国大会常連校。中々やるね。こっちのメンバーの様子はどうかな?


「いたぞぉ! いたぞぉおおおおおお!! 野郎ぶっ殺してやるああああああ!!」

「よくも私をバカにしたわね! 口を縫い合わせてやる!」

「キエエエエエエ!! うおおおおおおおおおお!!!」

『な、なんだあいつらは!?』

『この学園には頭の可笑しい人しかいないのね!』

『に、逃げろお!!』

「か、彼らが特殊なだけですからね!?」


 チーム「ワラワラ」の3人が先頭に立ってそんなセリフを発しているんだから勘違いされてもしょうがないけど、彼らのノリと勢いが僕らの全員の性格だと思われるのは心外だ。だけど彼らのおかげで動揺が広がり相手側の勢いがなくなる。


「今だみんな! 憑依を開始しろぉ!」

「「「憑依!!」」」


 顔性良の指示で全員が憑依を始めると楽器から飛び出た霊がブラティーノ中に入っていき、ブラティーノの姿が変わっていく。


『こっちも負けてられるか! 憑依を開始しろ!』

『了解! 憑依!』

『憑依!』


 負けじと向こうも憑依を開始し、これでお互いの憑依が完了する。そしてついに……


「「「開戦じゃああああ!!!」」」

「「「うおおおおおお!!」」」


 戦いが始まった。とここでイヤホンにノイズが走り、棒導君から無線が聴こえてきた。


『いいかお前達。いくらこちらの勢いが良くて、それぞれの個々の能力があっても「数の差」はどうにもならん。2対1の状況を作ってしまうとどうしようもなくなるぞ』


 棒導君の言う通り向こうの人数はこっちの約2倍。こればっかりはどうやったって覆せない戦力差だ。2対1になったらきっと捌ききれない可能性だって出てくる。


『そこで少しでも生存率を上げるために必ず2人~3人1組のチームを作り戦え。検討を祈る』

「「「了解!」」」


 棒導君の指示で素早く2人1組、または3人1組を作り戦闘を開始する。僕の相手は……おお! 元クラシック学科の倉田先輩じゃないか!


「倉田先輩! よろしくお願いします!」

「火鳥君が一緒なら心配ないわね! 行きましょう!」


 僕と倉田さんは目の前にいる敵2人にロックオンし交戦となる。



倉田喪部  &  火鳥無技   VS 佐々木詩織   & 吉田勘助  

音   108点 音    43点  音    106点 音   110点

技   130点 技   580点  技    120点 技   120点

状   100% 状   100%  状    100% 状   100%

楽 クラリネット 楽 トランペット  楽    オーボエ 楽    ホルン

曲  魔弾の射手 曲  熊蜂の飛行  曲 白鳥の湖・情景 曲  アルルの女



 敵の点数はやはり全国平均レベルでバランスがいい。攻守ともに隙も無いし、中々強そうだ。


『くらえ!』


 吉田という人は点数を見て防御力が低い僕を真っ先にターゲットにしたようで、手にした棍棒を僕めがけて振り下ろす。


「おっとっと!」

『は、速い!?』

「そっちは遅いです……ねっと!」

『ぐわぁ!』


 だけど今の僕には遅すぎる。ここ数日僕は何も荒表や笑奏とゲームをしていただけじゃない。ブラティーノを使って連携確認や2人と練習試合をしたりしていたため、120点そこらのスピードでは遅く感じる。


「ほいほいほい!!」

『いたたたたっ!』


 油断して棒立ちになっている佐々木さんの背後に回り込み、がら空きで無防備な背中にマチェットナイフを叩きこむ。


『大丈夫か佐々木!?』

「よそ見しないでよねっと!」

『ぐはぁ!』


 佐々木さんを心配しよそ見をした瞬間を倉田先輩は見逃さなかった。曲を運命に変えて渾身の力で後頭部に攻撃を決める。



倉田喪部  &  火鳥無技   VS 佐々木詩織   & 吉田勘助  

音   108点 音    43点  音    106点 音   110点

技   130点 技   580点  技    120点 技   120点

状   100% 状   100%  状     88% 状    39%

楽 クラリネット 楽 トランペット  楽    オーボエ 楽    ホルン

曲    運命  曲  熊蜂の飛行  曲 白鳥の湖・情景 曲  アルルの女



 よし! 僕はともかく倉田先輩の攻撃がきれいに入ったおかげで吉田さんに大ダメージを負わせることに成功した。しかも倉田専先輩渾身の攻撃が後頭部に直撃したもんだから本人に返ってくるダメージもこれまた甚大で目の焦点が合っておらず足元もおぼついていない。これはチャンスと判断した僕は曲を運命にシフト。ちょっと気の毒な気もするけど吉田さんのブラティーノにとどめを刺す。



倉田喪部  &  火鳥無技   VS 佐々木詩織   & 吉田勘助  

音   108点 音    43点  音    106点 音   110点

技   130点 技   580点  技    120点 技   120点

状   100% 状   100%  状     88% 状     0%

楽 クラリネット 楽 トランペット  楽    オーボエ 楽    ホルン

曲    運命  曲  熊蜂の飛行  曲 白鳥の湖・情景 曲  アルルの女



「やったぁ! 撃破したわ!」

「はい! でもまだ一人残っています! 仕留めましょう!」


 まだ佐々木さんが残っている。折角2対1の状況になっているし、合流されてもリペアされても後々面倒くさいのでここで確実に撃破してしまおう!


『ま、まずい! 一旦交代!』


 しかしそこは経験豊富なようで、吉田さんが撃破され孤立したと分かった瞬間には既に撤退行動に移っていた。


「おおっと! 撤退はさせねぇぜ!」

『な、なにこのイケメン……!? じゃなかった! なんでもう回り込んでいるの!?』

「この学園にいるのは何も猪突猛進しか頭にない奴ばっかりじゃねぇんだぜ? いざ!」

「わたしも行くわよ!」


 だが体育館に撤退しようとする佐々木さんを回り込むように顔性良と歩那を始めとした5人程度のクラスメイトが待ち構えていた。流石顔性良だ。体育館に撤退されないように仲間達と共に先回りしているとは……。そして顔性良と歩那の点数が表示される。



薬座顔性良        黒木歩那   VS   佐々木詩織   

音      197点  音    105点   音    106点

技      195点  技    110点   技    120点

状      100%  状    100%   状      0%

楽      フルート  楽  クラリネット   楽    オーボエ

曲 ハンガリー田園幻想曲 曲 星条旗よ永遠なれ  曲  



 あっという間に撃破。それにしても顔性良はなんて高水準な点数だ。確かに笛木先輩や弱優さん程ではないにしても全国平均点である100点の2倍近い点数だから十分高い。できればお相手したくない点数だが全国常連校の生徒達はこの点数の人が主のようだし、これは僕ももっと頑張らないと大変そうだ。


『くそっ! 囲まれたぞ!』

『落ち着け! 点数も人数もこっちが上だ!』

『広い校庭をうまく使いましょう! そのためにもこの包囲網を突破するわよ!』


 再び素早い判断により強行手段へと移行する柏習高校の生徒達。くっ! よりにもよって僕のところか! 僕の弱点はぶっちゃけ一撃の破壊力の無さで突破目的の行動が一番嫌な作戦だ。けどここで僕が突破されたら包囲網が崩れてしまう。相手の攻撃をいなすしかない……! 僕はブラティーノにマチェットナイフを眼前に構え肩、腰、足の力を抜くよう操作するため、やさしくピアニッシモでシェヘラザードの第三楽章を吹く。相手の突進スピードに合わせて……素早く……でも丁寧に……


「ここだ!」


 敵の得物がマチェットに触れて、ブラティーノがその勢いに押され始めたと同時にやんわりと受け止めるように後ろに引きながらも押し切られないように踏ん張るという脳みそが沸騰しそうな難題行動をとる。それと共に腹にデカいハンマーで叩かれたような痛みとべコッという何ともトラウマになりそうな音がファイヤーバードから聞こえた。て、点数は?



火鳥無技     VS  遠藤彩音    

音    43点     音   115点

技   580点     技   105点

状    20%     状   100%

楽 トランペット     楽 トロンボーン

曲 シェヘラザード    曲   テキーラ



「耐えきった……!」


 かなり状態を持っていかれたが突破されることなく耐えきった。けど……


『邪魔よ! どきなさい!』


 間髪入れずに振り下ろされる得物……ここまでか……


「おっと! ん? 今何かしたかぁ?」

『誰!?』

「俺の名前は江川幹久だ! 覚えとけぇ! キエエエエエエ!」


 僕の前に壁となって遠藤さんの攻撃を防いでくれたのはチーム「ワラワラ」のエガちゃんこと江川君だだ。ブラティーノの容姿は「攻撃」「スピード」というものを一切取っ払ったようなやたらと頑丈そうなパワードスーツに身を包んでおり、手には武器がない代わりに厚さ30㎝はありそうな機械盾を装備している。


「へっへっへっ! 無技は技工のところへ行って修理してもらえ!」

「ここは私達チーム「ワラワラ」が引き受ける!」

「いよぉおおし! いくぞぉおおお!」


 僕を撃破されまいと3人が壁になってくれたおかげで安全にその場を離脱することができた。そして3人の点数が表示される。



三上咲       &  江川幹久      &  豊音笑奏

音    159点    音    402点    音     28点

技    155点    技     35点    技    630点  

状    100%    状     99%    状    100%

楽  トロンボーン    楽    テューバ    楽 ユーフォニアム

曲             曲            曲  



 薄々感じてはこの人達は一芸に秀でた3人組だ。だから装備もどこか偏ったものになっている。

 頑丈そうなパワードフレームだけど動きが鈍く攻撃手段がない江川君。

 日本の鎧で身を包み、長刀を携え、攻撃にも防御にも回れそうな装備の三上さん。

 そしてボロボロの鎧に刃こぼれしているけど、とんでもなく素早い笑奏か。

 なるほど、やっぱりブラティーノはそういう点数的な事を考慮した見た目になっていたんだね。


『凄い点数……! あの一番おかしそうな人、音楽知識が400点越えよ!』

『でもいくら点数が高いと言っても偏りすぎだね』

『そうだぜ! 攻撃力が高くても技術が低いし、技術は高いけど攻撃力がないときたら、恐れるものは三上とかいう女だけだ! 恐れるものは何もない!』


 彼らの言う通りだ。やっぱり平均的に高水準だからこそ強いのであって偏った点数では何も怖くない。


『ここは僕に任せろ!』

『私も援護するわ!』

『ありがとう遠藤! まずは豊音って人を狙おう!』

『了解!』


 相手は笑奏をターゲットとしたようだ。江川君は滅茶苦茶硬いし、三上さんはバランスが高く高水準。となれば動きは速いが、防御力の低い笑奏を狙うのは定石か。



三村隆     &   遠藤彩音      VS  豊音笑奏

音    132点   音   115点      音     28点

技    125点   技   105点      技    630点

状    100%   状   100%      状    100%

楽  クラリネット   楽 トロンボーン      楽 ユーフォニアム

曲      運命   曲     運命      曲  



 ここは速攻で行く。そう判断した2人は一発系の曲である「運命」をチョイスした。そしてもう一つ。同じ曲を2人や3人で同時にハモリやトゥッティで演奏した場合、合っていれば合っているほど攻撃力が増して、逆に合わなければ合わないほど攻撃力は落ちるんだけど向こうは完璧に合わせてきている。これは表示されている点数の2倍近い攻撃力になるかもしれない。


「させるかぁ!」


 そこに笑奏を守るように巨大な盾を構えながら江川君が2人の前に立ちはだかる。


『構うことはない遠藤! このまま攻撃だ』

『うん!』


 2人は攻撃目標を笑奏から江川君に切り替えてそのまま攻撃する。



三村隆     &   遠藤彩音      VS  江川幹久

音    132点   音   115点      音   402点

技    125点   技   105点      技    35点

状     99%   状    99%      状    94%

楽  クラリネット   楽 トロンボーン      楽   テューバ

曲      運命   曲     運命      曲 檄!帝国劇場団



「「硬ったぁ!?」」


 盾に当たったとはいえ2倍効果の運命を喰らって5%しかも減ることなく、逆に攻撃した相手の点数が少し減っている。これが400オーバーの点数のブラティーノの硬さか……。ブラティーノの見た目は伊達じゃない。


『くそっ! 遠藤! 曲チェンジだ! 素早くすり抜けて三上を倒すぞ!』

『うん!』



三上咲       VS 三村隆       &  遠藤彩音      

音   159点     音    132点    音   115点        

技   155点     技    125点    技   105点

状   100%     状     99%    状    99%      

楽 トロンボーン     楽  クラリネット    楽 トロンボーン

曲    万本桜     曲 クラリネットポルカ  曲     宝島



 2人は曲を素早い曲に切り替えた。確かに江川君は攻撃力と防御力は凄いが技術力は低いから、すり抜けることに重点を置いた120点の速度は江川君にはキツイ。2人はそのスピードとフェイントを駆使してあっさりと江川君をかわし三上さんへと接近する。

 が、三上さんの背後から笑奏が現れる。


「へっへっへっ! どいつもこいつも考えることは一緒だな!」

「ふふふっ! 必勝パターンいただきましたぁ!」



豊音笑奏      VS 三村隆    &  遠藤彩音

音     28点    音   132点  音  115点

技    630点    技   125点  技  105点

状    100%    状    98%  状   98%

楽 ユーフォニアム    楽 クラリネット  楽 トロンボーン

曲  おジャ魔女祭    曲         曲  

 


 600点越えのなかなかお目にかかれないスピード。どっちにしろ攻撃というよりはただ動きを止めるという意味に近い余分な力を込めないその爆発的瞬発力は、真正面からぶつかっても反応しづらい速度だ。


「そら三上! 動きが止まったぜ!}

「了解! そりゃ!」



三上咲       VS 三村隆       &  遠藤彩音      

音   159点     音    132点    音   115点        

技   155点     技    125点    技   105点

状   100%     状     88%    状    84%      

楽 トロンボーン     楽  クラリネット    楽 トロンボーン

曲    万本桜     曲 クラリネットポルカ  曲     宝島



 動きが止まった2人のブラティーノの足をを三上さんが薙刀で斬り付けてその場にしゃがみこませ、2人は身動き1つとれないまま無防備な状態になる。


「いけぇエガちゃん!」

「決めてぇ!」

「いよぉおおおおし! いくぞぉおおおおおお!」


 待ってましたと言わんばかりに江川君が演奏を開始。動きは鈍く大振りだったが攻撃を当てられ動けないでいる2人は回避できない!



三村隆      &  遠藤彩音      VS  江川幹久

音    132点   音   115点      音   402点

技    125点   技   105点      技    35点

状      0%   状     0%      状   100%

楽  クラリネット   楽 トロンボーン      楽   テューバ

曲           曲             曲 檄!帝国劇場団



『「うわああああ!?」』

「お前ら床にキスしてな! ひょおおおお!!」


 2人は江川君の巨大な盾に押しつぶされ撃破される。あまりの痛みに2人は気を失い地面に倒れこんでしまう。なんて破壊力だ。それにしても……


「凄い連携攻撃だ……」


 防御に徹して2人を守り、凄まじい一撃を持っている江川君。

 サポートに徹して、笑奏と江川君の援護に回る三上さん。

 そして単騎でも強く遊撃する笑奏。

 彼らは自分達の長所と短所を互いに尊重、カバーし合い1+1+1を3以上の力にしている。この連携攻撃に吹奏楽学科は20名も撃破されたのか……。改めて思い知ったがCCBは個人戦ではなくチーム戦だ。一人で黙々と吹くソロだけではなく、合わせるのが大変だがデュエットやトリオ、アンサンブル連携で戦った方が良いということか。


『気をつけろ! あいつらにもう7人もやられているぞ!』

『くそっ! 全然弱くないじゃないかこいつら!?』


 よし! 情報と実際の戦力の差に混乱している。これも身を挺して突破を阻止したかがあるってものだ。


『お前のせいで7人も倒されちまった……! 突破さえできていればこんな事には……! お前だけは許さねぇ!』


 そんな中、突破できなかった原因である僕に狙いを定めてきた生徒が一人。


「気をつけろ無技! そいつは中々できるぞ!」

「大丈夫! 一人なら何とか……ってしまった! まだリペアが済んでないんだけど!?」


 チーム「ワラワラに」気を取られリペアをせずに戦闘が始まってしまう。



火鳥無技     VS  有田学  

音    43点     音   148点

技   580点     技   160点

状   100%     状   100%

楽 トランペット     楽 トランペット

曲            曲  


「ってあれ!? リペア完了してる!?」


 よく見ると楽器の凹みは無くなって新品同様になっている。いつの間に?


「火鳥がワラワラに気をとられているうちに直したんだよ~。楽器をとっても気が付かなかったしさ~」

「技工君! 確かに気をとられていたのは認めるけどリペアするの速すぎない!?」

「理修でいいよ~。オイラからすれば大したことない凹みだったからちょちょいとね~」


 手にした見たこともないリペア道具を地面に置いてある工具箱に入れる技工君。


『ん? お前フラッグの人間か! ならここで倒せば俺らの勝ちだ!』


 フラッグを現す右腕上腕に巻かれた布を発見した有田君は技工君に攻撃するが……



技工理修     VS  有田学  

音   380点     音   148点

技    40点     技   160点

状    99%     状   100%

楽   テューバ     楽 トランペット

曲            曲     運命



『くっ! 硬いな……!』

「あ! 凹んじゃった! リペアリペア~」



技工理修     VS  有田学  

音   380点     音   148点

技    40点     技   160点

状   100%     状   100%

楽   テューバ     楽 トランペット

曲            曲     運命



 ただでさえ堅くダメージが与えにくい上にもうすでにリペアを完了している。これは精神的にくるし何より撃破が難しい。フラッグ役としては適任だし、最前線でリペアできるとなると安心してガンガン行ける。


「火鳥~オイラは戦闘できないから戦いは頼んだよ~」

「無技で良いよ技工君!」

「だから~理修で良いってば~」



火鳥無技     VS  有田学  

音    43点     音    148点

技   580点     技    160点

状   100%     状    100%

楽 トランペット     楽  トランペット

曲  熊蜂の飛行     曲 チャルダッシュ



 僕は素早く有田さんに肉薄。マチェットナイフを畳み込む……はずが、先読みされたか読まれたか交わされる。偶然か? 今度は体をひねりながら攻撃を繰り返すがこれも避けられる。う~ん……これは完全に読まれてるな。


「気を付けて無技くん! その人、族に言う吹奏楽オタクの人で色んなジャンルの曲に精通しているから動きを読まれるわよ!」


 遠くの方で歩那がアドバイスをくれる。吹奏楽オタク……成程。どおりで曲を知っているからこそ僕がどう動くか予測されたってわけか。となると僕の持ち曲であるチャルダッシュもヴェニスの謝肉祭もダメか……厄介だな。その時耳につけた無線機からノイズが流れ、黒兎さんから連絡が入る。


『お困りみたいだね無技君?』

「黒兎さん? どうしたんですか?」

『力添えしてあげよう無技君……でも条件がある』

「条件? 言っていください」


 無線機の奥で何やら言いどもってる黒兎さん。なんだ? 僕に何をさせる気だ?


『無技君は、その……理修君同様、私好みショタ顔をしている。だから、私の事お姉ちゃんって呼んでくれないかね?』

「…………はい?」


 ちょっと黒兎さんが何を言っているかわからない。ショタ? ショタってなんだ? 単語の意味が分からないけど顔が好みって言われたから告白されてるのかな? でも何でだろう。背中に寒気が……。でもお姉ちゃんと呼ぶだけで苦戦しているこの状況に力添えしてくれるなら安いか。


「お願いお姉ちゃん! サポートして!」

『ゲボオオオオ!!』

「……『げぼおおおお??』」


 向こうで何が起きているかさっぱりわからないが、その声が終わったと同時に右目のディスプレイに黒兎さんから送られてきた楽譜が映し出される。ええっと何々?


『ええい! さっきから独り言しゃべりやがって! 行くぞ!』

「うわああああ!?」


 じっくり譜読みしている時間はない! こうなったら初見で吹くしかない! 僕は演奏を開始し、有田さんと戦う。


『はっ! さっきと同じ熊蜂の飛行か! 俺には通じないぞ!』


 出だしを聴いた有田さんは先程演奏した熊蜂の飛行と判断した途端に強気に前に出てくる。くそっ! 完全に動きを読まれている! 僕の移動する先に有田さんは得物を先読みし置いている。これは被弾する……と思った矢先。


「あれ?」

『あ!?』


 かわした? 正確には僕の思った動きとは全く違う動きをした。僕は走って有田さんお背後に回り込むように演奏したはずなんだけど、実際には有田さんの上空をジャンプして背後に着地するような動きだ。っていうか何かいつの間にか曲調が変わってない!?


『なんだお前!? さっきまで熊蜂の飛行だったじゃないか!? いつの間に曲を変えたんだ!?』


 耳にする初めて聴く曲調。有田さんも驚いているが、演奏している僕自身が一番驚いている。何が起きているんだ?


「おお! 映画「グリーン・ホーネット」じゃねぇか! 俺好きなんだよ!」


 江川君が目を輝かせながら僕に教えてくれた。グリーン・ホーネット? これって映画音楽なのか? あ、熊蜂の飛行に戻った。しかしほんの数小節吹いた後には再びグリーン・ホーネットに変わる。もしかして、熊蜂の飛行とグリーン・ホーネットを合体した編曲なのか? だとしたらこれは凄い。吹き手にも聴き手にも何の違和感なく曲を変えたりくっつけたりするこの編曲スキル。ただ事じゃない。それともう一つ。


「っ!? むずっ!?」


 何とか吹いてはいるが一瞬でも油断したら落ちるよこの楽譜!? 成程……評判通りだ。編曲の腕は凄いが演奏者に極限の難易度を要求してくるこの感じ……これが黒兎さんの編曲か。



火鳥無技     VS  有田学  

音    43点     音    148点

技   580点     技    160点

状    80%     状      0%

楽 トランペット     楽  トランペット

曲  熊蜂の飛行     曲 チャルダッシュ



『ぐわぁ!』


 とはいえ曲を理解している人に対して完勝を収めることができた。正直これ程の威力を発揮するとは想像以上だった。


『やべぇぞこいつら……!』

『一軍と渡り合うんじゃないか……?』


 口々に聞こえるのは相手側のそんな感想ばかり。どうやら僕らの力は全国レベルにも通用するもののようだ。これは自信が着いたぞ! 


 だけど調子が良かったのはここまでだった。次第に冷静さを取り戻していき、どんどん適応されてしまい味方が撃破されていく。やはりここはCCBを長くやっている経験か。


「くっ! お互いに撃破した数は同じくらいなのに向こうは残り30人弱、こっちは15人弱。厳しくなってきた!」


 理修がくれたディスプレイには細かい人数が表示されており、こちらの戦力は残り18名に対して向こうは32名。これはそろそろまずいか?


「どうするみんな!?」

「そうね……そろそろノリと勢いでは通用しなくなってきたわね……」

「ここは教室にいる笛木先輩達を援軍に呼んだ方が良いんちゃう!?」


 確かに荒表の言う通りかもしれない。このまま戦って敵の数は減らせても結局は数の差で負けてしまうだろうし、何よりフラッグである理修が撃破されるのはまずい。いくら頑丈ですぐにリペアできるとはいえ、10人くらいに袋叩きにされては負けてしまう。ここは作戦通りに棒導君に連絡して笛木先輩、黒木先輩、弱優さんの誰か一人に来てもらおう。そう思い棒導君に連絡を入れる。数秒立った後、棒導君が応答する。


『火鳥か!?』

「もしもし棒導君? 申し訳ないんだけどこっちは結構押され始めてきたから援軍を……」

『話はあとだ! 誰かこっちに援軍に来てくれ!』


 なんだか棒導君の様子がおかしい。逆に援軍を求められている?


「どうしたの!? 今どこにいるの!?」

『敵の本部、体育館だ!』

「はぁ!? なんでそんなとこにいるんや!? あんたらは教室に待機だったんじゃ!?」

「そうだぜ! っていうか後ろで聴こえる耳に付く音はなんだ!?」

『すまんが後で話す! ちっ! 角貝がやられそうだ!』


 その瞬間僕の中で何以下が吹き飛んだ。何も考えられなくなり、気が付けば体育館へと走り出していた。 


「おい無技!? しょうがないやっちゃな! ワイも行ったるで!」

「おい笑ちゃん! お前も行け!」

「いいのかエガちゃん!?」

「ここは私とエガちゃんの2人連携でどうにかするわ! それよりも向こうが気になるから行って!」

「すまねぇ!」

「フラッグがここにいるわけにもいかねぇな。技工! オメェも行け!」

「了解!」


 僕、荒表、笑奏、理修は体育館へと急行した。弱優さん! どうか無事でいてくれ!


 


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