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第五話

 「ルルル ランラ~ン♪」


 寮母の朝は早い。

誰よりも早く起きて朝食の支度を始めないといけないものね。

でも今日はメインディッシュのポテトサラダが思った以上にいい仕上がりになったので、私はちょっとご機嫌な気分。

きっと寮生のみんなも喜んで平らげてくれると思うわ♪


 「さて次はハムエッグに取り掛からないとねー」


 もうすぐみんなが起きてダイニングルームに集まってくる頃だから、ちょうどいいタイミングで熱々のハムエッグを用意しなきゃ。

ええと、卵とハムは・・・よし、足りるわ!


 バタバタバタ・・・


 朝食の時間にはまだ早いのに、慌ただしい足取りでこちらに近づく足音が一つ。

また寮生の誰かが「お隣のお茶目なお兄さん」とひと悶着起こしたのかしら? だとしたらまた「ガツンっ!」と叱りつけておかないといけないわね。


 「ママーっ!!」


 私の予想に反し、慌ただしく厨房に駆け込んできたのは私のかわいい一人息子のライム。完全に気が動転してるのかその顔はやや青ざめていて、まるでこの世の終わりみたいな顔しちゃってるわ。


 「どうしたのライム、朝っぱらから騒々しい・・・」

 「ママっ、ボクの、ボクの胸が変だよっ!!」


挿絵(By みてみん)


 落ち着かせようとたしなめる私の言葉を無視し、ライムはセーターの下に隠れた自分の胸を指し示す。

あら? 男の子のはずのライムにしては、ちょっとふっくらしているように見えるのは気のせいかしら?

恥ずかしそうにおずおずと裾をまくり上げた下からは、それはもうかわいらしい女の子の・・・女の子の、胸?

もしらして私のライム、真の姿は女の子だったんじゃないかしら?


 「あら・・・これは間違いなく女の子の胸ねぇ。下の方はどうなの?」

 「え? し、下!?」


 私の問いかけにぎょっとしつつも、やはり「怖いもの見たさ」が勝ったらしいライムはもぞもぞと穿いていたGパンをずらしていく。

細かった腰のラインも心なしかふんわりしていていかにも女の子ってラインを描いているし、次第に露わになっていく下半身には今まであったモノが影も形も無くなっていて・・・


 「ボクの、ボクのツクシ、なくなっちゃってるぅっ!!」

 「しっ、静かになさいっ! みんなに聞こえるでしょっ!?」


 完全にパニックを起こしたライムを制し、私はひとまずライムを厨房の奥へ連れていく。

やったっ! これでこの子を思う存分着せ替え人形にして楽しめるわ♪ などと考えながら。


 「おめでとうライム、とうとう魔王の第一関門、突破したのね♪」

 「第一関門って何? ボクのツクシ、どこ行っちゃったのっ!?」

 「あなたは自ら女の子になることを選んだの、ツクシのことはもう諦めなさいな」

 「うそっ、ボク、女の子になっちゃった・・・!!」


 半べそになりながら私に目線で助けを求めてくるライム、その表情は紛れもなくあどけない女の子のそれ。

そのあまりのかわいらしさに私ったら、ついついライムが愛おしくなってぎゅうっと抱きしめちゃってたり。


 「・・・ママ苦しいよぉ・・・」


 私の大きな兩の胸に挟まれて苦しそうにしているライムに気付いて、私は慌ててライムを開放する。

少しは落ち着いたのか、青ざめていた顔にも少し生気が戻ってきて・・・


 「ねぇママ、ボク、これからずっと女の子のままなの? 男の子には戻れないの?」

 「それは今後のあなたの選択次第よ? あなたが魔王としての自覚をしっかり持ち、魔王になるための鍛錬を欠かさなければ、いつか男に戻る方法を見つけられるかも知れない。でもね、これからも今までのように逃げたり、甘えたりしていると、男に戻ることは決して出来ないでしょうね」

 「ううう・・・」


 私が女手一つだったとはいえ、今までライムをひたすら甘やかして育ててきたことは事実だもの。

ここは私も反省しなきゃならないし、これを機会にライムにも一人の大人としての自立は果たしてほしい所ね。

とはいえ魔王道は私にとっても未知の学問だし、むしろそんな明確な「道」そのものがあるのかどうかすらわからない。

これからはライムが自分の手で、自分の力でその「道」を見つけ出さなくてはならないというのはある意味残酷な話でもあるのよね。


 「これから先のことは私にもわからないわ。あなたは自分の力で魔王道を究めなきゃならない、それが今のあなたに課せられた現実よ。

これから先はあなた自身の努力と選択、そして決断があなたの人生を大きく変えていくことになる、私が出来るのは少しの後押しと助言だけ、それだけは忘れないでね」

 「うう、分かった。ボク、何していいかわかんないけどとりあえずガンバル」

 「ひとまず服を整えて、朝食の時間になったらみんなと一緒にここにいらっしゃい。そんな恰好でみんなの前に出るわけにもいかないでしょ?」


 いそいそと着衣を整えながら部屋に戻るライムを見送りながら、私は心の中でこっそりガッツポーズをしてたのよね。

母親としてはちょっと不謹慎かもしれないけど、見た目は女の子そのものでしかないライムにとってはこの姿の方がより自然でいられるし、何よりも本人が思う存分おしゃれを楽しむことが出来るもの。もちろん私も、その恩恵にあずかることが出来るんですけどね♪

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