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プロローグ

 長らくお待たせしてしまいましたが、本作の執筆を再開させていただきます。

執筆再開に当たり「視点視点」や「プロット構成」等が大幅に変更になりますが、改めてお楽しみいただけると幸いです。

 「ナミ、魔王様は本当に降臨されたんだろうな?」


 知的な容貌を備える隣の少女に、ショートカットの少女は訝しそうに問いかける。


 「ナツキ、これまでの霊的マナの変動値や集中度合から見ても、降臨されたのは間違いないわ。ただし、『降臨』と『覚醒』は全くの別物、いくら降臨されていたとしても、魔王陛下が覚醒されなければ私たちの悲願は決して果たされることは無いわ」


 ナミは粗野でいかにも短絡そうなショートカットの少女、ナツキにそう静かに応え、ほぅっ、と一息ついた。


 ・・・あれからどれだけの月日が過ぎ去ったのだろう。

彼女たち「魔族」は常に人類の敵と見做され、事あるごとに迫害され続けてきたのだ。

「魔女狩り」「魔女裁判」「異端尋問」などと尤もらしい言い訳を並べ、ただ静かに、平和に暮らしたかっただけの仲間たちがいったいどれだけ悲惨な最期を迎えてきたことか。

 彼女たち自身の記憶、とは言い難いが、それでも転生の度に受け継がれてきたつらい過去は決して癒えることは無い。

 ただただ安住の地を求める種族としての悲願として、延々と受け継がれていくだけだ。


 「うーん、でも、その魔王様の覚醒は近いみたいだよ? 最近すごいマナの動きをひしひしと感じるもん。

次の魔王様は必ず私たちの近くにいる、もしかしたら私たちの今いる学生寮にひっそり暮らしてるかもしれないよ?」


 どことなくぼーっとした表情の少女は二人をにこやかに見つめながら、あっけらかんとした口調で宣言してみせる。


 ここで彼女たち三人のことをおさらいしておこう。

 最初に声を発したショートカットの少女は、豪鬼ナツキ、という15歳の逞しい容姿を持つ。

ピンクのショートボブにTシャツ、デニムスカートというラフな身なりで、それはそのまま彼女の剛健な性格を表しているかのよう。

 声をかけられた知的な少女は、志波ナミ。

同じく15歳だが端正なブラウスとプリーツスカートの着こなしが、彼女の几帳面な性格を伺わせる。

白に近い長い銀髪をポニーテールに結い上げ、凛とした容貌をさらに引き立てている。

 最後のぼーっとした容貌の少女も同じ15歳で、名を、魔道カナ、という。

終始にこやかさを絶やさない彼女はさしずめムードメーカーといったところで、長く青い髪をラフなサイドテールで纏め、如何にも適当、という指摘が似合いそうな着こなしでパーカーを羽織っている。

 彼女たちの今いる学生寮は「霧音荘」、少し古いが綺麗に手入れの行き届いた小さめの隣接高校生向けのもの。

寮の経営者にして寮母を務める「霧音レモネ」の美しさが近所でも評判で、入ってくる寮生たちが周囲から羨望の目で見られるのも今では学生寮の伝統となっている。

ただ高校の入学式まで少し間があるので、その辺りの事情を彼女たちはまだ知らないのだが。


挿絵(By みてみん)


 「どちらにせよ、私たちは今は魔王様の覚醒を待つくらいしか打つ手がないわ。

それ以外に魔王様を特定する方法も無いのですもの。」

 「だけどナミちゃん、新しい魔王様も先代魔王様の特徴は受け継いでると思うんだよねー。

近くにいるのは確実なんだから、例え今は断定は出来なくても予測は出来ると思うんだよねー。」

 「予測、か・・・カナの言うようにまぁ不可能じゃないけどさ。

先代魔王様の特徴といえば・・・?」

 「・・・鮮やかな緑色の長い髪・・・

男性と女性、両方の特徴を持つ・・・

外見は女神もかくやという程の美少女・・・というところかしら?」

 「そういう子、なんか見たことあるんだよねー。

それもここ2~3日の間に。」

 「カナ、お前の言ってるのって、ここの寮母さんの連れていた女の子のことか? いや、寮母さんはあの子のことを息子って言ってたはず・・・それって、一体どっちなんだよっ!?」

 「ナツキ、それよ! 『男性と女性、両方の特性』ってまさにそのものズバリじゃないかしら?」

 「「「・・・」」」

 「「「つまり、寮母さんの息子が新しい魔王様ってこと!?」」」


 学生寮の一角、ナミの部屋に集まった三人の声が見事に重なり、慌てて三人は声を殺して周囲の気配を窺う。


 「絶対とは言えないけど、当てはまる点の多さから見てもその可能性は高いでしょうね。

でも私の見る限りあの子にそんな芯の強さは見られない。

あの性格で魔王様として、私達魔族を導く救世主としての責務を果たせるとは到底思えないわ。

魔王として覚醒することでその強さが備わるものなのか、そもそもあの子は元々そんな器じゃないのか、これからじっくり見定める必要はありそうね」

 「ナミの言うことももっともだなぁ。

うちらはつかず離れずであの子をマークし、真の魔王様として覚醒するのを見守るしかないってわけか・・・」

 「ナツキちゃん、そうは言ってもいつ覚醒するかもわからない魔王様を待つのって大変だよぉ?

ここは魔法の一発でも浴びせてみて、無理やり覚醒を促しちゃった方がよくないかなぁ?」

 「カナ! そんなことしてもしあの子が本物の魔王様だったりしたらどうなると思うの?

よく考えてみてごらんなさい!」

 「ナミちゃんそんな怒らなくたってぇ・・・」

 「ナミじゃなくたって怒るぜ! 私だって突っ込もうとしてたくらいだし!」

 「・・・えへ♪」

 「「えへ♪ じゃないぃっ!!」」


 ドンドンドン!!


 「うるせぇ今何時だと思ってんだっ! 魔王だなんだと中二病臭いことばかりわぁわぁ叫びやがって、ガキはとっとと寝やがれ!!」

 「すみません、私たち中学を卒業したばっかりなんです。

もうみんな静かにしますからここは一つ、穏便にお願いします」


 窓越しに怒鳴りつける若い隣人男性、向きになって怒鳴り返したくなる気持ちを抑えながら応じたナミの一言で落ち着いたのか、男性の足音は遠のいていく。


 「ここでグダグダ言っても埒が明かないな、春休みはまだあるんだから今日はひとまず部屋に戻って、明日また話そうぜ」

 「そうだねぇ、明日どんな魔法で魔王様を覚醒させるか、また話し合おうねぇ」

 「だからそれをやめなさい!」


 それから小声で二言三言やり取りしあった後、三人はそれぞれの部屋に分かれていった。

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