生活環境
「君…それ、どうしたんだい。まさか、人を殺して…」
動揺から責めるような口調で言葉を発してしまったことに少し後悔した。冷静に考えてみれば彼なりに何か事情があるはずだ。まずはその話を聞かないことには何も始まらない。それどころか殺したと決めつけるような真似をしてしまった。
怒っては、いないだろうか。
「…殺して、ねぇよ。ただ、この辺に死体があったから喰っただけだ。俺には他に美味いと思えるのがねぇんだよ」
耳を疑った。この少年は何と言ったか、この腐乱した死体を喰って美味いといったのか。ならば尋常ならざる味覚だ。そもそも彼の体は異常なまでにやせ細っていて身なりも綺麗と到底呼べるものではない。
「いいだろ、別に俺が何喰おうたって勝手じゃねえか。見逃してくれよ、城主さん。一週間ぶりの食事なんだからよ」
「一週間ぶりって…親御さんはどうしたんだい!?僕が統治している地域の民には最低限度の生活は保証しているはずじゃ…」
「母さんなら、一か月前に死んだ。父さんはもっと前に死んでる。んで、これは母さんの腕だ。別に人殺しでもねえし、墓荒らしでもねぇ。どうせほっといても死ぬ身なんだ。見逃してくれよ、城主さんや」
見逃せだと?馬鹿なことを言うな。そう思った。本来人間がこのような食事の取り方でいい訳がない。本人は納得していたとしても王子である僕の目の前でそんな民の姿を見れば見逃すわけにはいかない。
何とかしてやらないと。王子ならばそう思うのが当然だ。そうでなくちゃいけない。
「ちょっと城に来なさい…!そんな民の姿があってはならない。僕が君の生活を見逃すわけにはいかないんだ。君が一人で生活できるように手配する。それまでは僕の部屋を貸してやってもいい。だから来なさい」
有無を言わさぬ凄みをもって僕が告げると彼は渋々といった様子で重い足取りで僕に歩み寄った。




