エピソード 桔梗
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これは異世界に転移する前の話。
◇
親同士が仲がいいので、物心がついた時から田中 雄介という少年と家族のように一緒に過ごしてきた。
小学校の高学年あたりから雄介より背が高くなり精神も成長していきしっかりとするようになり、お義母さんから雄介を頼まれてから弟のように接するように変わっていった。
周りからは「本当の姉弟みたい」と、からかわれる様になっていった。
中学生になると雄介は背がどんどん大きくなり、私を追い越すぐらい成長していき、相変わらず仲がいいので周りからは弟からジョブチェンジし公認カップルとからかわれるようになった。
実際には付き合っていないし、恋心もなかった。
でも家族愛はあった。
このころから男性に毎日、告白されるようになった。
放課後に呼び出されては毎回同じような言葉で告白された。
「一目見た時から好きでした。 付き合ってください」という容姿だけしか見ないやつ
「オレと付き合わねぇか?」とかいうオレ様系のナルシスト
こんな2パターンが多くて呆れていた。
「私は雄介と見たいアニメやラノベがあるから無理です」と、いつも断っている。
雄介には悪いと思っているが彼の名前を出すと高確率で諦めてくる。
これ以上しつこいと帰ったりしてる。
高校生だと、過激になってきて……。もう思い出したくないから、この話は終わりにする。
高校に入ってからは、男女の友達付き合いが大変で話ができる機会が少なくなっていった。
でも、昼休みは友達との誘いを断り、雄介と一緒にご飯を食べるようにしていた。
放課後では、料理研究部に所属していて、機材やレシピ本が結構そろっているので、料理の腕を磨きやすかった。
雄介に手作り弁当を作ってあげると凄く喜んで食べてくれるのでそれが、私も嬉しくなりつい遅くまでお料理の勉強をしてしまう。
放課後、遅くまで残っていた自分に後悔するとその時は思っていなかった。
雄介が事故に遭う日の昼休みは、いつものように最近読み始めたラノベのことで盛り上がったり、雄介が変なことをしているのを笑ったりして楽しく過ごす。
「なぁ、桔梗はバブみって知ってるか?」
「どうしたの、急に。全然、知らないけど……」
「今SNSで流行ってるんだけどさ、やってみたい!!」
「…別にいいけど、何をすればいいの?」
すると、雄介が自分のスマホを取り出しさっき見ていたサイトを私に見せてくる。
「へ、へぇ~……。 赤ちゃんのように年下の子に甘えるんだ……」
「うむ、そうだ。 疲れてるときにやるとリラックス効果が凄いんだって、俺も高校生なってから辛いことが増えてきたから……」
「雄介は学校が終わったらさっさと家に帰ってゲームしてるじゃん」
「教室にいるのが辛いんだよ」
「そうなんだぁ~…」
正直、こんな恥ずかしいことをしたくない。
いつもこんな欲望に忠実で真っ直ぐな瞳で見られると断りづらい。
仕様がないなぁ~……。
雄介に私の膝にポンポンと手を軽くたたいて誘い、膝枕を提供させる。
この程度は私たちの間柄じゃよくやることだ。
ほとんどは私が雄介の太腿を枕にしてるんだけどね。
「では、いくぞ」
「オ、オーケー…」
「マンマ、マンマ、オギャー、オギャー」
「はぁ~いママですよぉ~、どうしたんでちゅか~、辛くないでしゅよぉ~、ほらぁ~♪」
どういうシチュエーションか分からないが適当にサイトに載ってるセリフを言いながら、オギャってる雄介の頭を撫でる。
なんだろう、これ……。
いつもの雄介とのギャップで可愛く見えたんだけど。
ちょっと癒されそうでハマりそう……。
「オギャー、オギャー」
「よしよぉ~し、いい子でちゅね~」
「オギャー。 ……やべぇ、何か変な扉が開きそうになるからもうやめよ……」
「私も何かに目覚めそうになったよ……、はぁはぁ……」
傍から見ればやばい光景だが、もし見られても「この二人だからと」学校中に認知されてるのできっと大丈夫であろう。
まさかこれが私たちの最後の会話になると思わなかった。
もし叶うなら、前みたいに雄介とバガをやって楽しく過ごしたいという願望と最後にお礼でも言いたかったなぁ~と強く思っていた。
放課後、部活が終わり帰宅してるとパトカーが止まってのを見た。
近所で事件が起きると、帰宅中は少し警戒してしまう。
家に帰ると、玄関前でお母さんが深刻な表情をして私の帰りを待っていたことを鮮明に記憶が残っている。
その後、お母さんから告げられている最中に喪失感により視界が暗転して意識が途切れた。
一か月後。
それからは記憶に残っていない、親や皆から元気づけようとしているが廃人のように常に上の空状態だったらしい。
いつも通りに人造人間のような無表情、無感情で過ごしていると、周りが騒ぎ始めた。
地震かと思うほどの揺れが発生し、床には巨大な魔法陣が展開していた。
◇
いつの間にか体育館ほどの大きな広間にクラス全員がいた。
周りの壁際の柱と柱の間に5mほどの少女の姿を象った、フィギュアのような可愛らしいポーズをとった像がある。
「よくぞ、召喚の儀に応じてくれたことを感謝する」
声を発した人物を見ると仙人のような白い髭が床まで伸びきっていて、純白のローブを着ている老人が玉座に座っていた。
その老人の前には、6人の変な格好をした老爺、老婆がいた。
左から、ワンピース姿の老爺、ゴスロリの老爺、スクミズの老爺、ミニスカメイド服の老婆、体操服の老爺、ナースの老婆といった全て少女ものの
服を着ている痛々しい変態たちだ。
だが、状況でツッコミをいれるやつは誰一人いなかった。 いや、言えないだろう。
この光景を一目見て、チャラそうな男子(名前は憶えていない)が口からリバースをした瞬間、首が跳ねられた。
その光景を見たクラスメイトはざわつき始めた。
「静粛に!」
ワンピース姿の老爺が魔道具を使って声を増幅し、広間に響き渡る。
「この広間は最も神聖な場所であり、汚したら死罪であると言おうとしたが、遅かったな……すまぬ。
でだ、今から教皇様のお話がある。 心して聞くように」
「先ほどの罪は彼個人として処理し、連帯責任としないことにする。 と、まぁこんなことしないと下のものに示しがつかないのでな
まずこの国は――」
この国は、ロリータ神国でこの世界の創造主であるエシュテルの宗教国家である。
みんなが気になっている変態の老人どもは、六つの派閥の最高司祭である。
エシュテル様を崇拝することにより、どの服装が至高なのかという揉め事によって生まれた派閥である。
それぞれの派閥に属するものは、その服装が正装である。
例えば、ワンピース派閥では、老若男女問わずワンピースの姿で過ごしている。
この国にある法は意外と緩い。
死罪は、この広間を汚すこと。
重罪はエシュテル様を侮辱にあたる行為やほかの幼女を崇拝してはいけない、などなど。
何のコントを見せられているのか分からないが、彼らにとっては真面目であると分かる。
何故、私たちが召喚されたのかというと、もうじき邪の神が復活するという信託を受け、およそ50年前から勇者召喚の儀の準備を進めてきたらしい。
それから、私たちは何をすべきなのか、スキルといった能力面の説明を受けた。
そのとき鑑定の宝玉という至宝のアイテムを使い、私たち勇者のステータスを確認していくことになった。
一人ひとり固有スキルというものが備わっている聞いて、いかにもオタクみたいな奴ら喜んでいる。
周りのやつらが、どんどんとステータスを確認していき確認し終わったやつらが燥いでいる。
ついに私の番がきた。
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名前: ハナサキ キキョウ Lv 1
種族:人間
HP 1300/1300
MP 300/300
素のステータス 装備
STR 120
VIT 70
INT 120
MEN 70
AGI 70
TEC 100
LUK 100
装備品
頭:なし
胴:制服
腕:なし
足:上靴
武器:なし
アクセサリー:なし
<スキル>
<固有スキル>
《言語理解 Lv:―》《聖域 Lv:1》
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鑑定の宝玉を使って、自分の固有スキルを調べられるが、興味がなかった。
だけど、念のために確認してみる。
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固有スキル 《聖域》
・術者を中心に空間が広がる。
・スキルレベルに応じて空間の範囲が変わる。(Lv×5倍)
・空間内では術者とその味方には自己強化し、敵対する者は弱体化する
・スキルレベルに応じて効果が上昇する。
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いくら異世界だろうが、ラノベみたいな世界だろうが雄介がいないこの世界は私にとっては、どうでもよかった。
この講義が終わり、明日からはLvを上げるためにほぼ強制で古のダンジョンに行くことになった。
この強制っていうのは、行きたくないければ別に行かなくてはいいのだが、ここでの生活が不自由になるまでグレードが下がる。
もちろん、私は参加しない。
翌日。
私含めた女子や男子が10人参加しなかった。
不参加の理由は様々だ。
戦闘したくないとか、スキルが戦闘に役に立たないとかが主な理由だった。
私は与えられた部屋で窓からずっと空を見ていると、突如脳内から声が響いてきた。
『ぱんぱかぱーん☆ 君は、いまこの私に選ばれましたぁ! ふゅ~、おめでとう!!』
何?この幼い声。
『う~ん。 反応がないな……。 そうだ、君にいい情報を教えてあげれば食いついてくるかも♪』
聞こえている……。
『……ユウスケ』
……っ!?
この名前を聞こえた瞬間、雷に撃たれたような衝撃が身体中に染み渡る。
『今、反応したね? イシシ♪』
「あなたは何故、彼の名を知ってる?」
『まずは自己紹介から……。 私の名はイビル。 イビルちゃんと呼んでいいよ☆』
「そんなことはどうでもいい、何故彼の名前を知っている?」
『えー、名前って大事だよ? 全く……。 何故知ってるっかといと、私の思い人だからさ!」
「はぁ?」
『ちょ、ちょっと怖いって……。 落ち着いて!? その黒いオーラしまって!』
「……」
『ひ、ひぃっ!? わ、私の話を聞いて、ねっ?』
「分かった」
『ユウスケは一か月前、突然この世界に転生したの。 ……エシュテルと一緒に』
イビルは最後のところを聞こえるか聞こえないかの声量で呟いた。
『その時ビビッときたんだよ、たぶん一目惚れだろうね。 あの体中から溢れているオーラ……。 美味しそうだよね♪』
「雄介はどこにいるの?」
『ここだよ』
と、言って私の目の前に半透明なモニターが現れた。
そこに映っているのは紛れもない私が生きる理由である雄介の姿だった。
今は私の体中の細胞が活性化した瞬間だった。
「本当に雄介だぁ……♪」
森の中で必死に戦闘をしている雄介の姿に少し興奮してしまった自分がいる。
抑えなきゃ……!
でも、本当に生きててよかったぁ……。
『それで、本題に入りたいけどいいかな?』
「あっ、どうぞ」
『私にはどうしても手に入れたいものがあるの。 それを入手するために手伝ってくれないかな?』
「何を入手したいの?」
『まだそれは教えられない。 でも、協力してくれるなら、私の力の一部とユウスケに会わしてあげる』
「分かった、協力する」
雄介にまた会えるなら、どんなものでも犠牲にしてやる。
例え、悪魔に魂を売ってでも……。
◇
そして現在。
それから、イビルちゃんの命によりこのデビニルを回収した。
本来なら、私が封印を解いて回収する予定だったが嬉しい誤算に雄介に会えたのは幸運だった。
「あぁ……。 もっと、雄介とおしゃべりしたい、もっと匂いを感じていたい……♪」
今の私は最高にふにゃけているだろう、ニヤニヤが治まらない。
神様は世界創造後、生物を生み出した後、この世界を全て原住民たちに任してるので、ほぼほぼ干渉していないので神国がやべぇ国ってことは知らない。
一応、こういう国がある、程度しか頭にいれていない。




