VS デビニル=アクス
「いくら封印を解いた直後で大幅な弱体化状態だからといって、油断するなよ」
プラムが忠告をする。
「分かった」
「準備します! 《下位・防御上昇》《下位・魔法威力上昇》」
《下位・防御上昇》。
これは、《対物盾》や《対魔盾》といった対実戦魔法――即時魔法とは違い、
この魔法は一時的にVITを上げる能力向上魔法だ。
《下位・魔法威力上昇》。
《下位・防御上昇》と同様に能力向上魔法である。
一時的にINTを上昇させる。
アメリアはVITバフとINTバフを自分、ユウスケとプラムにかける。
「うむ。 助かる」
「ありがとう。 助かるよ、アメリア」
「はいっ!!」
俺は《格納》から魔法断切剣を手にする。
「ほう、立派な剣だな。 ちょっと触れてもいいか?」
「あぁ」
「ふむ……、魔法を任意のタイミングで無効化できるのか。 素晴らしい剣だな」
「プラムは杖とかないのか?」
「杖の代わりにこれがある」
プラムはローブの袖を捲り右手を見せる。
手首に腕輪をつけている。
「《鑑定》」
「そろそろ封印を解く……」
俺が鑑定している間、プラムは手を掠れた魔法陣に触れる。
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豊穣の腕輪
・レア度 ★★★★★★☆☆☆☆
・INT+500
・土属性魔法性能向上(土属性魔法攻撃力、発動時INT+300)
・武器を持つと、腕輪の能力上昇値がなくなる。
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実質INT+800!?
強すぎない!?
デメリットも緩い。
「すごい腕輪だな。 国宝級じゃないか!」
「そうだな。 これ一つで一国を争うレベルだな」
「どうしてそんなものが……」
「ダンジョンで入手したんだ。 古のダンジョン ヘルバドゥ」
「なんだそれは……」
「帝国にある、神が創ったと言い伝えられてるダンジョンだ。 我はそこで入手したのだ」
「それって攻略したのか?」
「いいや……、攻略できなかった。……ふぅ、話は終わりだ。 そろそろ解けるから構えて」
魔法陣から光が溢れ、一気に視界が奪われる。
光の中からシルエットが現れ、徐々に姿が見えてくる。
それは、体長は2mぐらいの巨体で背には、鳥のような漆黒の翼。
翼以外は人間のような肉体。
「ウガァアアアアアアアアアアアアアッ!!」
翼で羽ばたき、獣のような咆哮をあげる。
「封印が解けたか……。 あの忌々しいエルフの魔術師めっ……!!」
その憤怒は凄まじく、周りに赤黒いオーラが出始めたと思ったら、先ほどよりも図体が大きくなっている。
「お前が…デビニルか?」
俺はプラムとアメリアを庇い立てるように一歩前に出て剣を構える。
「いたのか、ニンゲン。 ……失礼、余りにもちっぽけな存在な故に気が付かなかった、ハハッ。 ニンゲンの言う通りワタシはデビニル=アクスだ」
「今度こそお前を倒してやる、デビニルっ……!」
俺よりも前に出て、デビニルを怨が混じった瞳で睨む。
「お前は、あのクソエルフか。 これは傑作だ。 まさか俺を倒しきれずに自分の命を代償にして封印したエルフが魔物堕ちなっているとは。 そんなに俺を倒せなくて悔しかったのか?」
「あの屈辱は忘れないっ! 無様になって負けようが絶対に倒す!」
「以前は、手足切られ蹂躙してやったのに、今の姿は手足が戻っているではないかっ! もう一度切ってやるよぉ!!」
プラムに向かって、デビニルのナイフのような鋭利の爪が襲う。
「い、いやぁ……!」
プラムは自分の体を包むように手を回し、一歩下がる。
きっと、以前の戦いで受けたトラウマがフラッシュバックしたのだろう。
それを見たデビニルは、プラムの前で寸止めをして、ニヤっと笑みをこぼす。
俺はあいつの攻撃に反応ができなかった。
なぜ、反応できなかった。
スピードだと、ガルドの剣技より遅かった。
この剣と今のSTRなら受け流すことはできると思う。
「さっきまでの威勢はどうした? 乙女になってるぞぉ? ……チッ、つまらん。 次にそこのニンゲンにも恐怖と絶望与えてる!」
デビニルはアメリアの方に目線を移す。
「……っ!? 《照光弾》!」
《照光弾》。
光属性魔法。 眩い光の弾で攻撃をする。
攻撃しながら視界を奪える強い魔法。
これに似た魔法、《閃光爆弾》はあるが、あれは視界と聴覚を奪う魔法だ。
「ぐ、眩しっ!? ドハァっ……!」
アメリア攻撃が顔面を防御してた腕に直撃した。
腕に攻撃された傷が残る。
ナイス攻撃だ、アメリア!
今だ……!
俺は魔人に向かって斬りかかる。
「《弱体化する霧》! おらぁああ!」
刃に魔法で生み出した黒い霧を魔力操作によって纏わせる。
《弱体化する霧》は、霧を触れたり、吸うとランダムでステータスを下げる。
本来は単数 対 複数で戦うときに使われ、霧を自分の周りに発生させて戦う。
視界が奪われて怯んでいる状態で、攻撃は簡単だった。
だが、ダメージが入ったと言われると分からない。
硬い肉体で刃を通すことができずに表面の皮膚によって剣を受ける。
「ぐっ……!? 体が急に重くっ!?」
どうやら、下がったステータスはAGIらしい。
まだ、怯んでる!
俺は次々と連撃で攻める。
「《光槍》っ!」
「あがぁあああっ!」
アメリアは、デビニルの横腹が見える位置に回り込み、追撃をする。
いくつかのステータスを弱体化させ、アメリアが放つ光槍で横腹を貫く。
「今だ、プラム! 攻撃だ!」
「あ、あぁ、……すまない。 《岩槍》」
プラムもアメリアと同じように回り込み、岩でできた槍を飛ばす。
《岩槍》が直撃しよろめく。
《炎槍》や《光槍》と違って実態と質量がある攻撃の場合、物理攻撃かと思うが、何故か威力はINT依存らしい。
『実はね、実態があるように見えるけど、魔力によって岩を再現してるからINT依存なんだよ。
つまり、凄く美少女に見えるけど男の娘だから、性別は男……みたいな感じ』
急に神様が脳内にテレパシーを送り、解説し始める。
うん、意味わからん。
というか、戦闘中に声が入ってきて吃驚したわ!
『ご、ごめんね、お兄さん。 戦闘頑張って♪』
魔人はやっと元に戻ったのか、今度は俺を鋭い眼で睨む。
体中から寒気を感じる。
これが格上からの威圧……さっき俺が動けなかった正体…。
「ニンゲンがぁあああ! 《暗黒弾》!」
黒い靄の球体を連発し、俺の方に飛んでくる。
至近距離のせいで避けれない。
「《対魔盾》。 何とか防いでくれぇ……!」
「その防御魔法が壊れるまで、攻撃するわっ!」
「ぐはぁ……っ!」
4発までなら耐えられたが、計3発を直撃してしまった。
《暗黒弾》の攻撃の衝撃により後ろに飛ばされたせいで、アメリアとプラムの間に入れなくなる。
「次は、金髪の女だ! 《影矢シャドーアロー》」
「《対魔盾》! 間に合って!」
矢の形をした黒い靄がアメリアに向かって飛んでくる。
威力はまあまあだが、着弾するのが速い。
その速さに追いつけず、《対魔盾》が展開し終わる前に矢が着弾する。
「きゃあっ! くぅっ……。 《治癒》」
途中まで展開してたお蔭で、急所を外し最小のダメージで抑えた。
擦り傷を回復魔法で治す。
「傷を癒す余裕なんてあるのかよぉ!」
アメリアに向かって拳が殴りかかる。
「させるか! 《パペット》っ!」
俺はアメリアの前にある石レンガを俺の形へと変形させ、アメリアの盾となる。
「チッ、ゴーレムか!」
拳によって《パペット》で変形した石レンガが一瞬で砕ける。
「《アクセル》!」
多少の時間が作れたので、AGIを10倍にして一瞬で魔人との距離を詰める。
まだ《弱体化する霧》発動させていたので、剣に黒い靄を纏っている。
再びその剣で魔人の隙を突きながら斬りつける。
《アクセル》の効力も合わさっているので、残像が見えるほどの連撃になる。
それにより、各ステータスを大幅に減少させた。
「な、なんだこれは……!? 体が上手く動かせねぇ…。 ニンゲンがぁ、何をしたぁああああっ!!!!」
何をされてたのか分からないが、ニンゲンの攻撃の効果だと疑い、嚇怒する。
「ふざけるな、ふざけるなぁっ!! 俺が、この俺が、ニンゲン如きに……負けるのかっ!?」
「今がチャンスだ! 出し惜しみはなしだっ!《虐殺の針》」
細かくて鋭い針を3本を出し、投げる。
「降り注いで! 《光線が降り注ぐ雨》っ!」
魔人の頭上に黒い雨雲が出現し、無数の光り輝く光線が魔人に向かって降りかかる。
「我に強靭な力を! 《岩巨人の破壊拳》」
虚空から5mほどの岩で形成された拳が魔人に襲い掛かる。
「ぐぁああああああああああああああああああああああああ!!!!」
《虐殺の針》により太腿を貫き、魔人は立てなくなり、片膝をつく。
その状態で無数の光線の雨により、体の至る所に風穴が空き皮膚は焼ける。
その直後に止めを刺すように拳により殴り飛ばす。
「ごぉれで…おわ゛…るど…思うなよ゛……っ!!」
まだ意識があるのか……。
どんだけ耐久力あるんだよ。
評価、感想お待ちしております(*´▽`*)




