お化けの正体は女の子だったら、どうします?
昨日、大男の冒険者から依頼をもらい。
今、俺達は問題の屋敷の前にいる。
「意外と大きい屋敷だね。 しかも外見は綺麗」
元の貴族は相当、力を持っていたと分かる。
中に入ってみると、二つに別れた階段があり、階段を上ったところの中央に肖像画が飾ってある。
少し古くなっているせいか、埃や蜘蛛の巣などが見当たる。
如何にも、ザ・屋敷って感じだ。
「まず、一階の探索でもするか。 《ライト》」
「《ライト》」
屋内が暗いので、魔法で小さい光の玉を発生させ照らす。
アメリアも続けて魔法を発動する。
真正面にある階段の横には、左右に廊下がある。
「じゃあ、先に右側に行こうか」
右側に行くと、左右に二つずつ部屋があった。
どの部屋も保管室みたいな感じだった。
食糧庫や武器庫などなど……。
左側へ行くと、右側と同じように二つずつ部屋があり、奥には両手開きのドアがある。
そこに入ると、よくアニメやドラマで見るような長い机に、並ぶ椅子。
つまり、食事場だ。
まぁ、探索しても何もなかった。
この場から出ようとすると、パリーンっと皿が割れた音が静寂の部屋に一気に響き渡る。
後ろを振り向くと誰もいない。
音がした方向へ行くと、この場に先ほどなかったところに、割れた皿が落ちていた。
テーブルの上に何もなかったのに、床に皿が落ちている。
「これっ、どこから皿を持ってきたんだ……?」
「さぁ……?」と、首を傾げる神様に、ルナとアメリアは青ざめている。
リルの表情は平気そうだが、ペタンと耳を閉じていた。
さっきの物音で閉じたんだろう。
「まぁ、ゴースト系モンスターに気を付けようか」
次に階段を上り、2階へと行く。
2階には、本棚から本が抜かれてて面白そうなものがなかった。
ポルターガイストというイベントは頻繁に起きたが、物が落ちるだけで
何回か起きたことにより、ルナとアメリアは慣れたらしい。
「幽霊さんどこにいるんでしょうかね……」
「臭いがしない……」
「幽霊って臭いがあるのか?」
「ちょくちょく気配は感じますけどね…」
「現れたり、消えたりか……」
「だったら、お兄さんのお得意の《サーチ》で探して見たら?」
「えっ? 《サーチ》で幽霊を探せんの?」
「たぶん、幽霊とかって魔力生命体みたいなものだから、感じ取れると思うよ」
「なんだよ、魔力生命体って……」
「そのことは置いといて、ささ、《サーチ》で探そうか♪」
「《サーチ》」
俺の魔力を屋敷全体に放つ。
魔力で各部屋の隅々まで探るが、全く感じないというわけではないが、出所が分からないのだ。
あらゆる所に魔力を感じるが、非常に弱い。
もう少し探ってると、微かに魔力が濃いところを見つける。
一階の床にある、地下室に繋がりそうな扉だ。
「この屋敷に地下室っぽいのがありそうだ。 みんなはどうする?」
「わたしは外で待っててもいいですか?」
「あぁ。 ルナとエシュテルは外で待機だな」
「はーい♪」
「リルはどうする?」
「幽霊って物理攻撃って効くの?」
「まだ、幽霊だと断定してないけど、効かないと思うぞ」
「んー、じゃあ、私も外で待ってる」
「最後にアメリアは――「私はいきますよ!」 わ、分かった」
「こういう相手は光属性魔法が有利ですから、私お役に立ちたいです!」
「あぁ、期待してるよ」
ルナ、神様とリルは外で待機して、俺達は地下室へ向かった。
◇
下に降りると、一気に寒気を感じた。
長い通路で石レンガで構成され、壁には蠟燭まで飾られてる。
インテリアのせいで、少し不気味さも感じる。
「……如何にも幽霊が出そうな雰囲気ですね」
「まぁ、何が出ても吃驚はしないと思うけど」
「ユウスケ様は頼もしいです……!」
奥に進んでいくと、広い部屋にたどり着く。
中央に椅子が置いてあり、椅子の上にフランス人形のようなドールが座って置いてある。
ドールを眺めていると、ピクリと動いたと思ったら、ゆっくりと立ち上がり、こちらをジッと見つめてくる。
「「ぴゃぁああーー!!!!」」
俺とアメリアは同時に抱き合いこの場で勢いよく跳び上がり、悲鳴を上げる。
ポルターガイストより比較にならないほどに怖いのだ。
ドールはまだこっちを見つめている。
そして、ゆっくりと口を開ける。
『我の名は、プラム。 元大魔法使いで今は幽霊――つまり、魔力生命体だ。 我は元々この地に住んでいたわけじゃないが――』
アメリアはがくぶると震えており、涙目になっている。
俺はうろ覚えのお経を唱える。
『おい、我の話を聞けっ!』
ドールから青白い魔力を放ち、その魔力を俺達は浴びた。
すると、不思議と落ち着き始めた。
この瞬間《精神操作》のスキルを獲得した。
『今発動した魔法は、《精神操作》だ。 これで落ち着いただろう?』
「あ、あぁ」
『話を戻すぞ。 我は元々この地に住まう者じゃなく、ある依頼でこの屋敷にやってきたのだ。
その依頼とは、簡単に言うと悪魔退治だ』
「……悪魔退治?」
悪魔はモンスターというイメージだが、魔国にいる魔人族を人種と認めない別の種族たちが悪魔と名付けたらしい。
王都にある国営してる図書館にあった古い書物に書かれたような……。
『そうだ。 その悪魔はな、魔国の貴族で名はデビニル=アクス。 その強さは絶大さ故に、我が命懸けで封印した奴よ』
だが、近々この封印が解かれる。 床に掠れている魔法陣が見えるだろう?』
「このことか?」
さっきまで見えなかったのに、人形が座ってる椅子を中心に半径1mほどの大きい魔法陣がある。
『そうだ。 それでお前たちに協力してもらいたいことがある』
「協力だと?」
『あぁ、この封印を解いて今度こそ悪魔を倒すのだ。 名案だろ?』
「分かった。 だが、その前に聞きたいことがある」
『ん、なんだ?』
「俺達が来る前、聖職者がこの屋敷に来たらしいんだが、そいつらはどうしたんだ? 帰ってこなかったと報告があるらしい」
『そいつらは、もういないぞ?』
「……どういうことだ? 悪魔にでもやられたのか?」
『いや、私が殺した』
「……どうして」
『お前たちみたいな、悪魔を倒せる可能性を持つ者なら、こうやって協力をお願いするが、彼らは弱すぎた。
だから、悪魔の封印を維持するのに必要な、私の魔力回復ために殺した』
「プラムっ……!」
罪もない人間が理不尽に殺されたと分かれば、少し怒りが込み上がる反面、こいつに喧嘩でも売ったら勝てるのだろうかと思ってしまう。
いくら人形だからといって、魔力を発している以上、俺の《サーチ》によって放っている魔力と干渉しあって、相手がどのくらいの力量か感覚で分かってしまう。
実際にプラムは、俺より強いだろう。
『彼らには悪いと思っている。 ……だがっ!! 彼らのお蔭でこの封印を二週間、維持がすることができた。 だから、彼らのためにも協力してくないか……?』
「……はぁ。 さっき承諾したからな、手伝うよ」
『ありがとう』
と、プラムがお礼を言った時、人形の頭が俯く。
まるで、魂が抜かれたように。
それと同時に、人形の上に靄のようなのが現れたと思ったら徐々に人型の形に変形する。
その容姿は、整った顔立ちに耳が少し長く尖がっている。髪型はストレートロング。
神様ぐらいの身長のエルフの幽霊がいた。
幽霊だからといって、裸ではない。
生前に着てたであろうローブを身にまとっている。
「名は何という?」
「俺はユウスケ」
「私はアメリアです」
「…そうか、よろしく頼む、ユウスケとアメリアよ。 さてユウスケよ、少し魔力を貰うぞ」
「な、なんで……!?」
「そりゃあ、何十年もこの部屋で封印してたから魔力がなくなるに決まっておる。 だから、観るに二番目に魔力が濃いユウスケのを貰うぞ」
「それって、俺死なない!?」
「安心せい、これから悪魔を討伐するんだ。 殺しはしない」
プラムは飴玉サイズの球体となり、俺の体の中へと入っていった。
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