同窓会の案内状
僕たちの高校の同窓会は、結構、おおがかりだ。
クラス会ではなく、一学年全体で行なうのだ。
10クラスあるから、全員が参加すると400人。
開催場所は、どの学年も東京。
なんで地元じゃなくて東京かというと、それなりの進学校なので地元に残る連中より、東京にでる連中のほうが多い。
まあ、上野から特急に乗れば、最寄り駅までは1時間あればつく、普通に乗っても1時間20分ほどだ。
東京で飲んでも十分帰ることができる。
同窓会の開催頻度は学年によって異なる。
学年によってというか幹事によって異なる。
1回目は、皆が社会人になった5年目くらいに行なうのが一般的って聞いてはいたのだが。
ある日、同窓会の案内状が届いた。
大学3年の5月の終わりのことだ。
なんでこんな時に同窓会かというと、小五郎の結婚披露をかねているそうだ。
小五郎は、数学の先生。
僕の高校1年の時の担任。
もちろん、小五郎っていうのは愛称。
明智が名字なんだけど、まあ、、高校生なんて明智っていうだけで小五郎になってしまう。
本人も“小五郎”と呼び捨てだと怒るのだが、“小五郎先生”だと普通に応じてくれた。
しかし、“光秀”ではいけないらしい。
案内状によると、小五郎の相手は僕たちの同級生だと書いてある。
「誰だろう?」
高校時代から、この手の話には疎かった。
高校時代の同級生とも疎遠になりつつあって、小五郎の相手が全くわからなかった。
相手の名前くらい、案内状に書けよな。
そんなふうに思っていると、脇坂から電話があった。
脇坂がこの同窓会の幹事だ。
「拓、久しぶり。元気か?」
「ワキ、久しぶり。」
「案内状、届いたか。」
「なんだ、あの案内状は。相手の名前、書いてないじゃん。で、誰?」
「佐藤久美。」
「佐藤久美って?」
「知らないか?3年9組。小五郎のクラスの子。」
「う~ん。思いだせないなあ。」
「彼女、理系クラスだしな。もちろん、出席するよな?」
「ああ。」
「出席でハガキだしといてくれ。悪いけど、また。他の連中にも連絡しなきゃいけないんで。」
「たいへんそうだな。」
「幹事は、たいへんだよ。じゃあ、また。」
「じゃあ、また。」
僕じゃあ、幹事は務まらないな。
脇坂だから、務まるんだな。
同窓会の案内状、出席にマルをつけた。