097 「チートキャラ」
考えてみれば、赤の女王の戦闘力は桁外れといってもいい。
もしもこれがゲームだったら、とんだチートキャラということになる。
だって。
防御力無限大、攻撃力無限大っていってもいいようなもんだし。
まあ、エリカがわたしひとり残したのも、しかたないことでしょうね。
多分、わたし以外に誰かいても、足手まといになるだけだと思う。
わたしは、わたしと赤の女王のまわりに、空間断層の盾を出現させる。
目には見えないけれど、無限大の硬度を持つシールド。
ポーンたちは、重機関銃をわたしに向かって撃ってくるけれど、銃弾は全て空中で跳ね飛ばされてしまう。
それでも、ポーンたちはわたしに向かって歩いてくる。
わたしを、囲むつもりらしい。
わたしは、さっき覚えたばかりの技を、攻撃に使うことにした。
赤の女王は、戦場に咲き誇る可憐な薔薇のように、真っ直ぐポーンたちに向かって立つと。
怜悧な美貌に、嘲るような笑みを浮かべ、残酷なギロチンのような鋏を三度振るう。
不可視の刃が、空中へと解き放たれた。
それは、絶対硬度を持つ空間断層の刃であり、回転しながら宙を旋回してポーンへと向かう。
ポーンのうち一体に、三方から襲いかかる。
ポーンには、その刃は見えないでしょうから、避けようがない。
わたしは、ポーンが切り裂かれるのを見るはずだったのだけれど。
そのかわりに、わたしは頭上に金色の輝きを見る。
夜を切り裂く朝日のようなその黄金の輝きに、見覚えがあった。
グリフィンが牽く金色の戦車。
フェリシアン・シャルルが操る、ナイト・オブ・ゴールドだった。
黄金の戦車より振るわれた鞭は、赤の女王の標的となったポーンに触れる。
その瞬間、ポーンの姿が消えた。
空気がごう、と音をたてて突然出現した真空へ、雪崩れ込む。
ああ、なんてこと。
チートなのは、こっちだけじゃあないってことね。