表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/132

096 「カワイコちゃんのいるほう」

四輪駆動車は、森をこじ開けるように走ってゆく。

彼女は、車の中でさらに激しくなる爆音や、リズミカルな銃声を聞いていた。

それは、彼女の全身を総毛立たすような、ぞっとする音である。

「あれが、戦場音楽ってやつなのね」

彼女は、そう呟く。

悪路を巧みに四輪駆動車を操って進むアリスは、少し笑みを浮かべた。

やがて、森が終わり、道は小高い丘の頂にさしかかる。

アリスは、車を止めた。

多分、身を隠すものがなくなると、判断したようだ。

ロケットランチャーを背中に担ぎ、アサルトライフルを構えたアリスが車から降りる。

彼女も、その後に続く。

彼女たちが身を隠した茂みの向こう、丘の斜面を下ったずっと向こうに海岸が見える。

多分、その海岸までの距離は、1キロもないだろうと思う。

ほとんど目と鼻の先、といってもいい距離だ。

海の上には、随分と古めかしい戦艦がとまっており、海岸へ向かって砲撃を繰り返している。

そして、海岸には。

とても、奇妙なものがいた。

巨人、としかいいようのない。

西洋の甲冑を纏った、大きなひと型のもの。

それは、戦闘ヘリが装備するようなミサイルランチャーを肩に担ぎ、手に大きな機関銃を持って攻撃している。

その攻撃している相手は。

さらに、奇妙な存在であった。

赤いドレスを着た、どうみてもおんなの子にしかみえない人影と。

もうひとり、女子高の制服らしいものを着た、やはりおんなの子にしかみえない人影。

そのおんなの子たちは、いったいどうやっているのか見当もつかないが、ミサイルと機関銃を装備した巨人たちと、互角に渡り合っているようだ。


「で、どっちにつく?」


アリスはロケットランチャーを肩に担いで、彼女に問いを投げる。

ちょっと、なんでわたしに選ばせるのよ、と彼女は思ったのだが。

でも、彼女のこころの中には奇妙な確信めいたものが、芽生えていた。

あの、女子高生は、理図にそっくりだ。

判別のできるような距離ではないはずなのだが、彼女にはどうしてもそのおんなの子が理図に見えてしまう。

彼女は、アリスに答える。


「もちろん、カワイコちゃんのいるほうよ」


アリスは頷く。

「なるほど、あんたにもそう見えるんだな」

彼女は、はっとなってアリスを見る。

アリスは、ロケットランチャーを構えて、笑みを浮かべる。

「じゃあ、決まりだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ