表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/132

085 「ひとにこれを造るのは無理」

アリスの目の色に、疑いはないように見える。

しかし、信じているようにも見えない。

彼女は、そのアリスの表情に気を止めることもなく、言葉を重ねてゆく。


「この本は紙でできているようで、そうではないの。表面の素材は有機LSIと同じものだわ」

「それは、つまり」

彼女は、頷く。

「この本は、有機素材から作られた、コンピューターであると言ってもいい」


彼女は、ページをぱらぱらと捲ってゆく。


「この本くらいのページ数があれば、かなり大規模なコンピューターであると思う」

「それは」

アリスは、彼女の興奮と対称的に落ち着いた口調で、問うた。

「一体、どのくらいの規模なのだろうか」

「多分」

彼女は、少し途方にくれたような笑みを見せる。

「現在地球上に存在するどのコンピューターより、大きいものだと思う」


アリスは、肩を竦めた。

理解をこえていると、暗に言っているようだ。

「ひとつ聞きたいのだが」

アリスの言葉は、相変わらず冷静である。

「これは、ひとが造ったものではない。そういうことなのか?」

「ええ。ひとにこれを造るのは無理だわ」

「では、これを造ったのは、何者だ。そして、なんの為に造ったんだ」

彼女は、少しひきつった笑みをみせる。

「これを造れる者がいたとしたら、わたしはそのひとを神と呼ぶことに躊躇いを感じないでしょうね。でも、この本がひ

とと同じように、なんらかの進化のプロセスの結果だと言われても、否定はできないと思うわ」

彼女は、途方にくれたように、肩を竦める。

「でもこの本がもし造られたものであったとして、そうならば目的は、はっきりしてる」

「ほう」

アリスの目に、驚きの色が浮かぶ。

彼女は、確信をもった口調で言った。


「この本は、記録するために造られたものね。それこそ通常の本と、同じように」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ