表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/132

081 「招かれているようだな、わたしたちは」

彼女は驚く。

その学校には、森がある。

娘が通う学校なので、幾度か校内に入ったことはあったけれど、敷地の奥にこんな森があることに気がつくことは無かった。


けれど、今。

彼女は、突然出現した異空間のような、その森奥深くへ踏み込みつつある。

アリスは、この場所のことをよく把握しているようだ。

夜の闇より尚暗いこの森を、月明かりだけを頼りに歩いて行く。

彼女は、アリスの後を歩くだけで精一杯であるが、アリスは確信を持って歩いているようだ。


突然、その建物が姿を現す。

何か、森の奥深くに隠遁した老賢者がごとき佇まいを持つその建物は、皓々と輝く月明かりの下で夢の中の景色のように闇から浮かび上がっている。

彼女は訊ねる。


「これが図書館なの?」

「そうだ」


アリスはそう答えると、正面玄関に立つ。

その古く重々しい木の扉を、アリスはそっと押した。

あたかも万人を拒絶しているかのように見えたその扉は、あっさりと開く。

彼女は、息をのんだ。

これでは、まるで。


「招かれているようだな、わたしたちは」


アリスは、彼女が思ったことをそのまま口にした。

皮肉っぽい笑みを彼女に投げかけるのに、頷いて返す。


扉の奥は、闇である。

森の中よりさらに深い、液体化して流れ出しそうな、濃厚な闇。


アリスと彼女は、その闇の中へと踏み込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ