077 「おんなの子の三つ子」
彼女はその島に梟鏡が持っている、大きな屋敷に滞在することとなった。
そこで彼女は、まるで姫君のように扱われることになる。
梟鏡は、その島の王であった。
皆、恭しく敬意を持って、接している。
対する梟鏡も、王族がごとき鷹揚な態度であった。
彼は、彼女を抱く前に、こう言った。
きみは、子供を三人生むことになる。
おんなの子を、三人だ。
うちひとりは、僕自身なので、僕がもらう。
残りの二人は、時が来るまで君に預けることになる。
彼女は、全く意味が判らなかったが、気にしなかった。
梟鏡は、きっと少し頭のおかしいひとだと、思うようになっていたからだ。
この浮き世離れした島国で過ごす間に、ひととしての理性を失ってしまたのだろう。
けれど、彼がおそらく父母から引き継いだ巨額の遺産が、かれにファンタジーの世界で生きること許している。
彼女は、そう思っていた。
実際に、おんなの子の三つ子が生まれるまでは。
彼女はその偶然に、少しそら恐ろしいものを感じたのだけれど、それを偶然ではないとする根拠もなかった。
けれど、梟鏡には何かがあると、感じるようになる。
常軌を逸した、何かが。
沙羅は、梟鏡から三人の娘に名前をつけるよう、言われる。
彼女は、こう名付けた。
恵理香、理沙、理図と。
彼は、恵理香をもらうと言った。
沙羅は、理沙と理図を島から連れて帰り、双子として育てることになる。
彼は、二人の娘を育てるための、十分な支援をしてくれた。
理沙と理図が幼い頃、梟鏡は定期的に彼女らのもとへ訪れたのだが。
その間隔は次第に長くなってゆき。
理沙に、重度の障害が発症した以降は、全くこなくなり連絡も途絶える。
そして、あっという間に時がたち、理図は死に、彼女のもとには理沙だけが残ることになった。




