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070 「プログラムの実行を、自分の身体に指示した」

ラインハルトの抜いた剣は、薄闇を貫くように高々と掲げられた。

その美貌には、酔ったがごとき表情が、よぎる。

あなたは。

プログラムの実行を、自分の身体に指示した。

あなたの身体は、モーツァルトの旋律に刻まれた時間の中で、マシニックな動作を開始する。


ラインハルトが剣を振り降ろすのにあわせ、あなたは彼の膝めがけてそれを抱き込むように、飛び込んだ。

予想外のあなたの動きに、ラインハルトはあっさり尻餅をついたが、その顔は笑みを浮かべたままであった。

苦笑の混じったものにも、見える。

あなたは、ラインハルトの剣を持った腕を抑え、その胴に馬乗りになった。

ラインハルトは、笑いながらあなたに声をかけようとしたが、その顔へあなたはバッテリーを握り込んだ拳を叩き込む。

正確で、コンパクトな打撃だ。

しかも予備バッテリーを握り込んだ拳は、ラインハルトの鼻骨を砕くほどの威力がある。

ラインハルトは、怒りよりも驚愕で、動きが止まり二撃目を受けてしまう。

それは耳にあたり、鼓膜を破っていた。

ラインハルトは、ようやく怒声をあげるが、立て続けの打撃で感覚を狂わされたため、あなたの手を払い除け繰り出した剣は宙を裂く。

あなたは、ラインハルトの胴から降りて、その足を抱え込んでいた。


ラインハルトは、あなたが何をしようとしているか理解しないまま、立ち上がろうと身を捩る。

あなたはその動きにあわせ、ホールドした踵を捻りあげた。

膝の靭帯が切れる、いやな音がする。

ラインハルトは、苦痛の絶叫をあげた。


あなたの頭の中では、グールドが演奏するモーツァルトが鳴り響き続けている。

あなたは、まるで遠くから見るように、自分の身体に組み込んだプログラムが実行されるのを、感じていた。

アリス・クォータームーンがあなたに刻み込んだプログラム。

あなたの腕は、背後からラインハルトの首に回され、気道を押し潰す。

ラインハルトは、ほとんど何が起こったか理解できないまま、気を失った。


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