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007 「わたしは足元の死体を、見つめていた」

昼下がりの森。

わたしは足元の死体を、見つめていた。


(なるほどね)


意味のない呟きを心のなかでもらす。

その死体は、実はわたしのものであると言われたとしても何の違和感もない。それほどわたしに、よく似ている。

少女の死体に触れてみた。

外傷はない。

顔に表情は残っておらず、人形のようだ。

死因の見当もつかない。

白いワンピースを着ているが、綻びや汚れも見当たらない。


本だけなら、わたしの妄想で済ませることもできただろう。

でも、この死体は説明のつけようがない。


わたしは思っているより狂っているの?

でも、森で見つけたこの死体は妄想の産物とは思えないし、しかもわたしに似過ぎている。


わたしは、自分の着ている学校の制服を脱ぐ。

そして死体の服を脱がすと、わたしの服を着せる。わたしは、死体が着けていたものを身にまとう。

わたしは、とんでもなく狂ったことをしている気がした。少し怖くなる。体が震えた。

わたしは少し震える手で、携帯電話をとりだす。

コールをかけた相手は、思ったより早くでた。仕事中のはずなんだけど。

『つきかげさん?』

わたしの問いに、中年男性の声が答える。

『やあ、リズ。電話くれてうれしいな。ひさしぶりに会ってくれるの?』

その声がわたしを狂った状況から現実につれもどしてくれるようで、少し気持ちが落ち着いた。

『まさか。アリスに連絡をとりたいの』

『そうかい、残念だね。じゃあ彼女に電話してもらうよう伝えるね。少し待ってて』

電話が切れてから、5分後に番号非通知の電話がはいる。アリスだ。

『アリス、お願いがあるの』

『それは、ビジネスの依頼なのか?』

落ち着いた大人の、女性の声。

感情を感じさせない、でも冷たいのとは違う不思議と心地よい声。

『そうよ、1時間後に指定口座へ入金する』

『内容を教えて』

わたしは、覚悟を決める。戻れない道に踏み込む。なぜって、多分。もとからわたしには、行く先がなかった。

だから。

狂った世界であっても、道があるのなら踏み込んでみようと思った。

『わたしは、この世から消えることにしたの』

『それは、死ぬということ?』

『そのとうりでもあるし、そのとうりではない』

わたしの奇妙な言葉に、アリスは何も返してこない。

『頼みたいことは二つ。まずわたしの死体を処理してほしい。合法的に灰にして』

『判った』

『それとも一つ。里沙のことをお願い』

『守れ、と思えばいいの?』

『ええ。わたしがこれからすることで、トラブルが起きると思う。それから守ってほしい』

『判った』


アリスとつきかげ。

この二人については、説明がいるのだけれど。

今は話を進めるね。


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