006 「本の中へ」
わたしは、溜息をつく。
ここまでくると偶然とか妄想だけでは済まされない。
間違いなくなにかが、この本にはある。
わたしの頭のなかでは、赤い信号が激しく点滅していた。
このまま進めば確実に一線を越えそうだ。つまり気がつけば拘束衣を着て隔離病棟に居るようなはめに。
いっぽうで、まあいいかと思う自分がいる。
あなたと。
あなたともういちど一つになることができないのであれば、あとの全てはどうでもいいような気がする。
わたしは、決断した。
全てにさよならをいうことにする。
「判ったわ、エリカ。どうすればいいか教えて」
わたしは本に書き込むと、ページをめくる。
「そうね、今はまだ準備ができていないの。時間をちょうだい。長く待たせるつもりはない。今日の夜までまって。それとね、もうひとつお願いがあるの」
むう、と思う。
見ず知らずのひとにこう立てつづけに頼み事ができるとは、こいつお姫様かなにかなんだろうか。
でも、まあ、いいか。と、思う。
「いいよ。何かな」
ページをめくる。
「わたしの死体、外に送るから。できればきれいに焼いて始末して」
ああそうかと思う。
エリカは死んだっていってたものね。
なるほど。
「いいよ。どこに送ってくるの?」
「森の中」