表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/132

055 「憎しみはウィルスのように」

「いいだろう。これ以上きみが何者であるかを問うのはやめることにするよ、お嬢ちゃん」


ドクター・ディーは。

わたしを、真っ直ぐ見つめている。

まるで。

わたしの心を全て見抜いているようだ。


「たただね、ひとつだけ、言っておこう」


ドクター・ディーは、静かに言った。


「たとえ憎悪が心を塗り潰すときがあっても、怖れる必要はない」


わたしは。

思わずドクターの顔を見つめる。

そこには、不思議な笑みが浮かんでいた。


「憎しみはウィルスのように、ひとが思考すると同時にその心を犯し始める。誰もそこから逃れることができるものは、いない。けれどね、嬢ちゃん」


ドクター・ディーは、奇妙な確信を持って言い切った。


「本当に自身の欲望に忠実であるならば。そこに指し示されるのは憎しみではなく、喜びだよ」


わたしは。

無理矢理笑みを浮かべることに、成功した。


「何言ってるのよ。わたしには憎しみに汚されない愛があるわ」

「ふむ。それが真実であればいうことはないが。憎しみは猛禽が兎を狙うように、愛を見つめているものだ。常にな」

「なにがいいたいのよ」

「いや。これ以上時間を無為に費やすのはやめよう」


ドクター・ディーは、わたしたちの後ろで話を黙って聞いていたキャプテン・ドラゴンに、目を向ける。


「エル・ドレイク、船を出そう。メジャーアルカナを2枚使えるのなら、一応は互角といえる。王宮へ向かおう」


キャプテン・ドラゴンは、精悍な顔に苦笑を浮かべた。


「一応な。賭ける価値はあるということだな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ