051 「わたしって、何者なんでしょう?」
わたしは、むうとなる。
「だから、あんたたちこそなんなのよ。わたしはただの女子高生なのに。あんたたちなんてドクターやらキャプテンやらへんな肩書つけてるじゃない」
ドクター・ディーは。
不思議そうにわたしを見る。
「われらは単に、本の中の住人だ。お嬢ちゃん、あんたは外の世界の人間だね」
「そうよ」
「初代フォン・ヴェックが造りあげた守護生命体。その中でも特に強力な力、アビリティーを持つ黒の剣士や赤の女王、緑の王や金の乗り手をわれらは、メジャーアルカナと呼ぶ」
ドクター・ディーはわたしを力強い眼差しで見つめながら、言葉を続ける。
「メジャーアルカナはね、お嬢ちゃん。フォン・ヴェックの一族しか使えないのだよ」
え? とわたしはなる。でも。
「お嬢ちゃんのいいたいことは、判るよ」
ドクター・ディーは、静かに頷く。
「フェリシアンやクレールがメジャーアルカナを使っているのを見たのだろう」
わたしは、大きく頷く。
「クレールについては、単純だ。彼女はエリカ・フォン・ヴェックの肉体を複製した幻体を手に入れた。肉体がフォン・ヴェックのものであれば、メジャーアルカナは使える」
「じゃあ、フェリシアンは?」
「そこはな」
ドクター・ディーは咳ばらいした。
「そこの、フォン・ヴェックの娘に説明してもらおうか」
エリカは。
不機嫌な顔になった。
「わたしは、そのお」
歯切れの悪いエリカにわたしはいらっとなる。
「なによ、はっきり言えば?」
「フェリシアンに抱かれたのよ」
「はあ?」
ドクター・ディーは、もう一度咳ばらいする。
「フォン・ヴェックの一族の親となったものは、フォン・ヴェックの一族とみなされる」
ええええ!
「あんた、妊娠してたの! エリカ」
「妊娠してたのは、リズあなたが焼いてくれた前の肉体」
ああ、なるほど。
「でも、それだと子供は死んでしまった、てことだよね。もうフェリシアンは親じゃあないよ」
ドクター・ディーは、首をふる。
「必要なのは、契約するときだけだ。一度呼び出しに成功すれば、後は関係ない」
うーん。
わたしはあえて考えないようにしていた問題に、直面する。
わたしはエリカと、似すぎていた。
それこそ双子のように。
偶然で済ませるのは少し。
安易な気がしていた。
「えーと」
わたしはくらくらしてきた。
「わたしって、何者なんでしょう?」
「だから、それを聞いている」