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005 「わたしは、その本に魅了された」

わたしは、その本に魅了された。

理由はよく判らないのだけれど、その本から目をはなせなくなり近づいていく。

気難しい老人がソファーに腰を降ろしているような風情が、その本にはあった。

重々しく近寄りがたい雰囲気。

でも、そこにあることが当然であり、あるべき場所にあるべきものがおさまっているような。

そんな雰囲気。

革でできた頑丈そうな表紙に守られた、重厚そうな本。

わたしは胸が高鳴るのを感じる。

恋人と口づけするときみたいに。

どきどきしながら、わたしは本をひらく。

すっと風がふいたような気がする。

真っ白なページが目に飛び込んできた。

そこには、一行だけ。こう書かれている。


「そこに誰かいるの」


わたしは、眩暈のようなものを感じた。

本に呼び掛けられた、そんな思いにとらわれる。

わたしは、ポケットからシャープペンを取り出す。そして、その本へこう書き込んだ。


「いるよ」


そして、ページをめくる。

次のページにはこう書かれていた。


「いるんだ、そこに。外の世界のひとだね」


わたしは、自分の胸がはりさけるんじゃあないかと思う。それほどわたしの心臓はどきどきしている。

わたし本と会話しているの?

これはなに、どういうこと?

わたしは、さらに書き込む。


「あなたは誰、本のなかのひと?」


そしてページをめくる。

答えが、そこにあった。


「わたしはエリカ・フォン・ヴェック。ねえ聞いて。わたしは死んでしまったの。助けて欲しい。助けてくれるのなら名前を教えて」


驚いたことに本のなかのひとは、どうやら幽霊らしい。

わたしは答えた。


「わたしは別宮理図。リズとよんで。助けるってどうすればいいの。本の中へはいるってこと?」


次のページをめくると、エリカの答えがあった。


「そうよ、リズ。こちらへ。本のなかへ来てほしい」


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