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047 「戦闘が終ってみると、とても静かだ」

わたしは、ポーンの消えた海岸にひざまづく。

赤の女王をカードの中へと呼び戻す。

戦闘が終ってみると、とても静かだ。


波の音と、風の音が交錯する。

わたしは、急に気分が悪くなった。

両手をつき、激しく嘔吐する。

身体にドライアイスでも詰め込まれたように、重たさを感じた。

吐瀉したものは、ほとんど胃液だ。

苦しくて、涙と鼻水が垂れる。

わたしは、いよいよ狂っていく。

もう、戻れないところへ来てしまったのか。

あなたが。

酷く。

遠くに感じた。


背中に気配を感じて、わたしは振り向く。

日出男がわたしを見下ろしていた。

「大丈夫なのか」

日出男の言葉にわたしは、あははと笑って応える。

「昨日の夜食べたラーメンのチャーシューが、妙に脂っこい味だったから。今頃気分が悪くなっちゃった」

日出男は少し冷たい目で、わたしを見ている。

「きみは帰れと言われると、怒るみたいだが。その有様で戦いつづけることができるというのかい?」

わたしは、苦笑しながら立ち上がった。

少し眩暈がするけれど。

かろうじて不敵な笑みを、浮かべてみせた。

「もちのろんだわ。おかわり持って来てよ」

日出男は表情を変えずに言った。

「無理するな。まあ、歩けるならついてきなさい」

日出男はドックに向かって歩きだす。

「エリカ様が、きみが陽動している間に入り込んでいる」

わたしは、日出男の横に並んで歩いた。

「エリカ様はひとりであそこを、征圧するつもりだ」

「わたしはいらないの?」

「いや。ひとつ教えておこう」

日出男は、厳粛な顔付きでいった。

「ポーンと契約している人間は、ポーンが死んでも死なない。そのあたりはきみたちの守護生命体とは違う」

ふん、とわたしは鼻をならしたが。

安堵の涙を止めることはできなかった。

「よくやったよ。リズ」

日出男の予想外に優しい言葉に。

わたしは、笑いながら泣いてしまう。


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