表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/132

041 「チェスならもう詰んでると思うけど」

「なあるほどね」

わたしは、その鋏の使い方が判ってきた。

切断するためには、鋏本体に触れる必要はない。

そのブレードの延長線上に空間の亀裂みたいなものを、発生させる仕組みのようだ。

鋏を使って対象をロックオンして。

切断する。

これなら、黄金の騎士の首を撥ねることだって可能だ。

わたしはにっこり微笑む。

赤の女王は傲慢なまでに美しい顔に笑みを浮かべ、鋏を構えた。

鞭を失った黄金騎士は腰に吊した剣を抜く。

しかし。

近づけばわたしの鋏に切断される危険が高まる。

切り掛かるのを躊躇しているようだ。


一方。

エリカのほうも、形勢を逆転させつつあるようだ。

空気を粘塊として重さを増した森の王に対峙した黒の剣士は、距離を詰めつつある。

至近距離であれば、得意の速度を活かしたヒットエンドアウェイの戦法を取ることも可能だ。

ぎりぎりの間合いで切り付け、相手の攻撃を紙一重でかわす。

致命傷を負わすことは出来ないが、森の王の命を少しずつ削っていくことはできる。


わたしは、黒い狼ににんまり笑いかけた。


「ねえ、チェスならもう詰んでると思うけど。どうかな?」


狼は面白くなさそうに、吠えた。


「フェリシアン! 撤収だ。王宮に戻るぞ」


猛禽の頭と獅子の身体を持つ魔獣グリフィン。その魔法生命体は大きく翼を広げ羽ばたいた。

円弧を描きながら、戦車とともに宙へ舞い上がる魔獣と黄金の騎士。

あっさり赤の女王が振るう鋏の圏外へと、黄金の騎士は逃れ出た。

そして、騎士は宙空を駆ける戦車に狼とフェリシアン、それに森の王をカードに納めたクレールを拾いあげる。


狼は轟くような声で叫んだ。


「また会おう、フォン・ヴェックの娘たち。再び我等が運命の輪が交わるところでな!」


そして、グリフィンと戦車は黄金の光に包まれ。

沈みゆく太陽のごとく消滅した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ