040 「黄金の騎士」
黄金の騎士が振るう鞭。それは音速を超える衝撃音を放ち、空気を引き裂きわたしに襲い掛かる。
赤の女王。
深紅のドレスを纏った守護生命体。わたしは、その眼差しを通じて金色の騎士を見ることができた。
おそらくひとの肉眼では捕らえることのできない鞭の先端に付けられた短剣を、わたしは見る。
あたかも、夜空を貫く流星がごとく。
その剣はわたし目指して飛来する。
わたしは、赤の女王を動かした。彼女の手足はあたかもわたし自身の手足のように、動かすことができる。
赤の女王はわたしを抱き抱え、跳躍した。
その身は高く舞、部屋の天井をかすめ。
着地する。
わたしたちを追って、黄金の騎士が振るう鞭が音を切り裂いて襲い掛かった。赤の女王は、軽やかなステップでそれをかわす。
でも。
たまらず、わたしは叫ぶ。
「武器は? 武器はないの?」
「背中に背負ってるでしょう」
エリカが叫ぶ。黒の剣士を操り森の王と対峙する彼女には、多くを説明する余裕はない。
赤の女王はわたしを降ろすと、背中に手をのばす。
何かに触れた。
それを、一気に引き抜く。
視界に現れたそれを見て、思わず叫ぶ。
「なんで鋏なのよう!」
わたしは。
ひとつのブレードが1メートルくらいはある巨大な鋏を、手にしていた。
エリカが叫ぶ。
「全てを切断する無敵の鋏よ。切り裂きなさい」
わたしはその鋏を理解した。
捕らえた対象を、空間ごと切断する。
わたしは飛来する鞭の軌道を把握し。
鋏を振るった。
黄金騎士の鞭は、鋏の切り裂いた空間の中で両断される。